崩
アイはあれから研究所に帰ってこない。私は探しに行こうともせず、ただ研究所の中にいた。そんな生活が1週間は続いているのではないだろうか。
腕が千切れてから、戻る気配がない。傷口が塞がる様子もない。ただ、粘液が常に流れているお陰で病気に感染する心配はしなくていいようだ。そのせいで体力は確実に消耗しているが。
最近、また頭痛が酷い。ストレスのせい……だけではなさそうだ。多分、この身体の異変と関係がある。身体の再生能力が落ちている、そしてこの頭痛。元々人間だった私がアイの身体能力の一部を手に入れる事は無理があったのだろう。そろそろ拒絶反応が出始めているのか。
私の身体はどうなるのだろう。崩壊するのだろう。いざ自分がそんな立場になると、なんとも現実味がない。
はは、死とはなんて簡単に訪れるのだろうか。
けだるい。熱があるようだ。
なあアイ、私は……こんな生物で果たしていいのだろうか。同種からは自ら隔絶し、お前とも結局は分かり合えずになっている。私は満たされないまま人生を終えるのだろうか?
満たされないのが生物の宿命なのだろうが。
でも、それでも私は満足感に浸って死にたい。彼女が完全な生物、人間みたいに弱い部分を見せない、美しい本能のままに行動する姿を見て、死にたい。
叶うのだろうか。
私の勝手なわがままは、叶うのだろうか。




