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 アイに芽生えつつある、自我。

 私から消えつつある、自我。

 私の囁きに応えるように、アイは囁きのような声を出す。

 圧力が、アイからかかってくる。ぎこちなく私を抱きしめ返しながら、アイは体重を私に少しずつかけてきているのだ。

 やめてくれ、とは言わない。

 むしろ穏やかな気持ちだ。

 ガラス管に束縛してきたアイから求められて、拒否なんてできない。

 何より、愛している。


 これが、私への答えなのか?


 彼女が倒れかかってくるのに逆らわず、私はそのまま一緒に地面に倒れた。押し倒された、という感じだ。草木の香りとアイの香りが私を包む。

 何となく分かる。何となくだ。

 彼女は。

 体重を私に預けてくる。そこまで息苦しさはない。白衣越しに、アイの胸が上下するのを感じた。アイのうなじの粘液が唇を濡らす。涼やかで、ほのかに甘い。アイの粘液と、身体と、混じり合うような錯覚。

 アイはもう喋らない。

 細く高い声が、私の鼓膜を揺らす。

 私とアイを囲む、野生の世界。その中で私の上に、少し前までこの世に存在すらしていなかった、異質な存在。いびつな獣。

 言うなれば、歪獣。

 その存在が私の上で、命を主張している。命を交わしている。こっそりと、息をひそめて。それでも命は輝いている。私には、見える。


 柔らかく揺れるアイの尻尾。呼吸は穏やかだ。私は静かに目を閉じる。

 私は彼女の全てを、受け入れよう。

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