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 気が付くと、私は研究室で黙々と実験をしていた。壊れたはずなのに綺麗に戻っている研究機材。部屋。

 アイは、ガラス管の中で大人しくしている。


 気が付くと、私はアイを育てようと思っていた。私の望みはアイの望みだと信じていた。

 アイは、ガラス管の中で大人しくしている。


 気が付くと、私はアイに殺されようと思っていた。それでしか自分の生きる意味を見いだせなかった。

 アイは、ガラス管の中で大人しくしている。


 気が付くと、アイは自らガラス管を砕き、私を殺しかけていた。望んでいたはずなのに、私は死ぬ事に恐怖を感じた。自分が情けなかった。


 それでも、私はアイと共に生きようと思っていた。わがままだとは知っていた。私とアイはあまりに違うとも知っていた。だが、共に生きていきたかった。

 アイは、ガラス管の向こうで大人しくしていた。


 ガラス管の向こうで。


 気が付くと、私はガラス管の中にいた。閉じ込められていた。

 出してくれと、私は大声を上げてガラス管を叩いた。だが、割れなかった。

 彼女のようには、割る事ができなかった。

 私は泣いた。悔しくて泣いた。私とアイとの間には、こんなに分厚い壁があったのか。私は今までアイの事を何も分かっていなかったのだろうか。私はアイをただ縛り付けて、自分の物にしていただけなのだろうか。


 気が付くと、アイはガラス管の向こうで私を見ていた。私を捕えるガラス管の向こうには、広い研究室があった。

 アイは、いつでも私を見捨てる事ができる。ただ、ガラス管の中の私を見捨ててこの研究室を出れば、よかった。アイにはその権利がある、私はそう分かってる、つもりだった。

 だが、アイはそうしなかった。


 アイは、ガラス管に手をあてる。

 びしりとヒビが入ったかと思うと、ガラス管はいとも簡単に、割れた。

 私とアイを隔てる壁が、砕け散った。

 一気に広がりを見せた世界の中で私は、アイに抱かれる。

 とても暖かかった。

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