崩壊:5
「…………」
優の返事はない。だが、確実に動揺していた。銃口が震えている。心が震えている。意志が揺らいでいる。
「優、今のお前には私を殺せない。いや、今でなくとも、優は私を殺せないだろう」
仲間なのだから、私達は。
私を殺せるような優は、優ではないのだ。そんな事はできないと知っている。
だから、私は誘う。
「優、銃を降ろしてくれ」
「響、だが、それだと、あれが、人類を」
「滅ぼさないが?」
優の声が途切れた。
「人類を滅ぼす気など、私にも彼女にもないが?」
「……嘘だ」
「嘘じゃない。誰が滅ぼすと言った? 確かに、彼女の為なら人類なんてどうでもいいとは言った。だが、わざわざ滅ぼそうなんて考えてはいない」
彼女と生きられたら、それでいい。
心からそう思うのだ。
「だから、優」
「……ダメだ」
顔を伏せながら、声を震わせながら優は呟いた。
「ダメだダメだダメだ、意思とか響の考えだとか、そんなのじゃねえ……ただの感情論だ、響の言ってる事は、確実にそうならないとは言えねえだろ、この研究自体が既にアウトなんだよ、だから俺は止めに来たんだ……人が、死ぬんだ……俺にも、守るべき家族がいるんだ、妹が待ってるんだっ……」
優は自分に言い聞かせるようにシャベリナガラ、わなわなと銃口を再び私に向ける。
それを見た彼女が吼えた。
咆哮を上げながら彼女はガラスを殴りつける。くぐもった音と共に大きなヒビが入った。その音に、優は反射的にびくりと体を震わせた。
それは優の意思ではなかったかもしれない。
だが、起こった事には変わりがない。
優は反射的に引き金にかけた指に力が入ってしまった。
轟音が、空気と私の左肩を切り裂いた。




