崩壊:3
「響……お前マジでどうしたんだよ……。昔は、いや、つい最近まで人類の発展とか言ってたじゃ――」
「昔? 今も昔も私は変わっていない」
私は優の手を振り払う。
「大体、人類が滅んで誰が悲しむ? 悲しむ人間なんてもういないんだぞ? 残された動物達が悲しむか? そんな訳ないだろう。人類が滅んで困るのは人類だけだ。所詮生存本能が働いてるだけさ」
何が生きて何が死のうが、宇宙からしたらどうでもいい問題だ――。私の声が研究室に響く。
そして静寂。
自分の言ってる事が少しずつおかしくなってきている事は分かっている。だが、止められないのだ。彼女を守りたいのだ。優をどうかしたいわけじゃない、ただ私と彼女のこの時間を続けたいだけなのだ。
かすかに外から聞こえる、ぱたぱたとした音。今日は雨のようだ。
「響」
優はショットガンを私に向ける。
「お前の事だ。懐にナイフぐらい仕込んでるんだろ。俺もそれぐらい分かってる」
ぐおぉぉぉぉぉぉん――
彼女が咆哮をあげた。私に銃口が向けられた瞬間だった。何重も何重も反響する。
「優」
ナイフを取り出しつつ、私は続ける。
「似た者同士だな。お互いに意見を曲げるのが嫌いで、その為なら手段を問わない。……私は彼女と一緒にいたいだけなのに」
「それが危険なんだよ。俺は人類がその怪物に殺されていく様をぼーっと眺められるほど狂ってねえんだよ。……お前がそれを断るんだったら、お前と、そいつを止めるしかない」
「彼女を、どうするつもりだ」
「生かす訳ないだろ」
私は、ナイフを投げつけた。




