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崩壊:1
ガラス越しに手を合わせていた彼女が突然、身体を硬直させた。小さく鳴きながら、研究室の出口を見る。
何かに反応している……?
私は日記帳から手を離し身体を翻して、息を殺し感覚を研ぎ澄ませ、扉に神経を集中させる。
……感じる。空気の振動を感じる。音はしないが、感じる。確信すらある。きっと、“人間には分からない”だろうが。
そしてその振動源は恐らく……私の知る人間だ。この島には電磁波が放たれているのだ。一般人は入ってすらこられない。
彼女の鳴き声はは威嚇のそれに変わる。危険を察知しているのだろうか。守らなければ。彼女が私の元から消えてしまうなんて、考えたくもない。もしかしたら、殺されるのかもしれない。私はともかく、彼女すらも。彼女が死ぬのを、2度も、見たくは――
ドアの開く音。
構えられたショットガン。
「……優」
「元気そうだな、響」
その男はそう言いながら、銃口を彼女に向けていた。




