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彼女は胴体を丸め、くぅくぅと気持ち良さそうに寝息を立てて眠っている。今日も彼女の観察などであっという間に1日が過ぎた気がする。少し寂しいような、しかし充実してるような、そんな感覚。
自ら生き急いでいると感じている。
死んだはずの彼女と、生き残ったはずの私。少しずつ、立場が逆になりつつあるのが分かる。
毎回そうだ。こう望んでいるはずなのに、その現実がどこか私の心にしこりを作る。
私は彼女とどうありたいのか。彼女に唯一無二の存在になって欲しいのか、それとも、私はそんな彼女と対等な存在でありたいのか。矛盾を孕んだその2つの思いは、しかしどちらも私が望んでいる事なんだと言い聞かせ、反芻する。
既に結末は見えてきている。それは私が望んでいた結末。だが私はどうだろう、私は、彼女といつまでも、いつまでと一緒に、生きていたい。
終わりのない物語はない。
だからこそ美しい。
だからこそ、終わらせたくない。
しかし、人間が抗えるには限界がある。
なら、彼女のような存在だとしたら……?
彼女は胴体を丸め、くぅくぅと気持ち良さそうに寝息を立てて眠っている。
私は注射器を手に、彼女の傍らに近寄った。




