相田正毅3 【刻み責め】
4話目です。
「あぁ、これの事か」 俺は部屋の中央にある物を見て呟いた。 其処には『ゲームのオーナー』が言った拷問器具か幾つも有った。ナイフ、ペンチ、アイロン、木で造られた丈夫そうな棒……等が有った。 如何いう風に使用するのかは分からないが……。 その時、黒いスピーカーからあのしわがれた男性の声が流れた。 「1ゲーム目の『拷問者』は相田正毅」……っえ、いきなり俺? 男性は続けた。 「『受刑者』を指名し、拷問するまでの制限時間は1分。ルールを破れば『拷問者』は即死刑だ。それでは、スタートっ」 其処で男性の声は途切れた。 「如何しよう」 俺は9人を見回した。 誰を拷問する? 誰も拷問したくない。でもしなければ俺は死刑だ。あの荒川の様に爆発して死ぬ。それでもいいのか? いいや、嫌だ。では、やるしかないだろう? 誰かを指名し、拷問するのだ。俺が助かる為に。 俺は部屋の中央に行き、近くにあった拷問器具、ナイフを右手に取った。 「【刻み責め】っ」再びしわがれた男性の声が黒いスピーカーから流れた。「『受刑者』の身体を切り刻めっ」其処で放送は中断した。 「『受刑者』は真理子さんにする」 俺は迷い無く答えた。 「えっ」真理子さんが悲痛の叫び声を上げた。「如何してっ?」 俺は何も答えず、少しずつ真理子さんに近づいた。 「来るなっ」 真理子さんは俺に向かって叫んだ。 しかし、俺はそんなのお構いなしに真理子さんを捕まえた。 真理子さんは必死に抵抗するが女性は男性の力に勝てない。 「拷問するぞ」と俺は言うと、右手に持つナイフを真理子さんの右腕に当てた。そして、躊躇することなく一直線にナイフを縦に引いた。「拷問終了」 すると黒いスピーカーからしわがれた男性の声の「拷問終了」と言う放送が流れた。同時に、その場に静寂が訪れた。 俺は真美子さんから身体を離した。 真理子さんは恐る恐る自分の右腕を見た。しかし、右腕からは一切血が流れていなかった。ただ、少しナイフで切られた線が皮だけに残っていた。 「如何いう事?」真理子さんは呟いた。「これだけで拷問終了?」 「そうだ」俺は真理子さんに微笑んだ。「このゲームの意味が分かった。これは痛みなど関係無い。ただ、形だけ、拷問していれば拷問成功となるんだ。其処で提案が有るんだ。これからは今みたいに最低でも『少量の痛み』だけで拷問し合うというのは如何だ? これで全員嫌な思いをしなくて済む。それと1度『受刑者』になった者は2度と『受刑者』に指名しない事。2度も『受刑者』になった者は可哀想だろ?」 俺の提案に9人全員が賛同した。 「これで2度と真理子さんは『受刑者』にしては駄目だぞ?」 真理子さん以外の8人は頷いた。 真理子さんは微笑みながら俺に向かって「助けてくれて有り難う」と言った。実に嬉しかった。しかし、俺は何故真理子さんを助けたのか分からなかったが、今、礼を言われて初めて気付いた。俺は真理子さんが好きなんだ。なんか、美人だし。 「2ゲーム目の『拷問者』は石井真理子」 しわがれた男性に声に現実に引き戻された。 本当の拷問はこれからだ。
【刻み責め】……受刑者の身体を切り刻みながら死なせていく刑。ヨーロッパや中東地域、欧米などで行われていた。