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第三話

雅楽の音楽と念仏が僕の頭の中でオーバーラップする。吉田は不謹慎にも眠ろうとしているが、僕も神崎も吉田を攻めない。僕たち三人にとって友情とはドライな物。高校球児や、シンクロ青年には絶対に理解できないくらいに。

雅楽。昨日の音楽の時間に担任のポマードが僕たちにそれを聞かせたのだが、僕はそれに近い物をこんなにはやく耳にするとは思わなかった。念仏だ。


神崎は死んだ。全身打撲。あいつは校舎の屋上から、砂利の敷き詰められた地面までのわずかな距離を、あいつが望んだように鳥のように飛べたのだろうか?


僕も吉田も泣いたりはしない。僕達にとって友情とはあくまでドライな物なのだ。


神崎と一度も口を聞いたことがない学級委員長が答辞を読み上げ、神崎と一度も目を合わせたことがない女子が大泣きした。


答辞の文中では、神崎は明るく愉快で、クラスのムードメーカーとされていたが、実際は違う。あいつは躁鬱的な性質をもったバカだ。


僕は葬式が終わるまでの間、神崎と遊んだことや、話したことを一つ一つ思い出していた。いい奴なんて言葉は嫌いだが、僕とは`合う`奴、吉田とも`合う`奴。いいやつなんて死語だよ。いい奴は奪われ、殺され、死んでいく。僕の持論。


吉田が眠たそうにしている。いいねー吉田ちゃん。友達の葬式で眠る。泣くわけでなく眠る。午後の授業をうけているときのように眠る。神崎はそう言うスタンスが大好きだった。僕もそう。


でも無理はないよ。昨日神崎が死んでから、担任と、校長と、学年主任と、教育委員会役員と、警察官と、神崎のおばちゃんに、僕たちが屋上で何をしていたのかを説明したんだから。僕も吉田も家に帰るころにはくたくたにつかれていた。


 だから、僕は葬式が終わってから何をするか決めていた。コンビニでジャンプを立ち読みするわけでもなく、神崎のことを思いだして感傷に浸るわけでもなく、親のプレッシャーに耐えられず、家族に包丁を向けるでもなく、眠る。ただ眠る。ドライでしょ?僕たち。


 

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