SIDE B・謹賀新年 2
二十世紀最後の日、僕はいつもと同じように六時に起きて、朝食をとって歯を磨いて、服を着替えて仕事場に出かけた。
僕は高校を卒業してすぐに就職した。本当は進学して、生物学を勉強したかったけど、僕の性格には合わないと診断されたので、仕方なく就職した。
僕の仕事はとても簡単だ。
朝九時にタイムカードを押して、自分の席につく。そしてベルトで運ばれてくる鉄のかたまりを、別のベルトから運ばれてくる鉄のかたまりにつなぎ合わせる。十二時に昼休みで、一時になれば作業に戻る。そして、五時にもう一度タイムカードを押して家に帰る。
これが僕の仕事であり、僕の人生の全てだ。
僕には、この仕事が世間にどう関わっているのかよくわからなかったし、僕の人生がこの程度でいいのかも、時々わからなくなった。
その夜、少し早くにベッドにもぐり込んで消灯時間を待っていた僕に、同居している友人が話しかけてきた。
「いよいよ、明日から二十一世紀だな」
やけに嬉しそうだったけど、僕には関係ない。
「どうせ、明日も明後日も、同じことの繰り返しさ」
そして明かりが消えたので、僕は瞳を閉じた。