表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花は桜、愛でるべし〜女学生が初恋とお役目を全うするまで〜  作者: 倉桐ぱきぽ
2章 力と才能

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/34

たい焼き1万個分のキラキラ

「何?」

「やるよ」


 鼻の先に突きつけられた箱に、左久夜は数回、瞬く。

 瑠璃ルリ色のビロードで覆われた箱。

 これと同じような箱を見たことがある。母が父からの贈り物だと、大事にしているものだ。その中には、真珠の首飾りが大切にしまわれていた。


「嘘……」


 ドキドキしながら、左久夜は箱を開ける。

 光沢のある白い布地の上に、首飾りがあった。細い銀の鎖に、キラキラした宝石がついている。薄紅色の少し縦長のハートの石。


「きゃあ! 何これ! ハートの形⁉ かわいい! すごい、キラキラ! 何、これ?」

「サファイア」

「すごい! かわいいー!」


 左久夜は、ひとしきり騒いだあとで、ふと我に返った。


「これ、あたしが、もらってもいいの?」

「少し早いけど、誕生祝いだ。今日から肌身離さずつけてろ。そうすりゃ、鬼姫のエサの分も、少しは軽減される」

「でも、これ、いくらするの?」

「気にするな」

「気にするなって。魔導石の価値は値段だって、さっき自分が言ったんじゃない。つまり、いい物は値段も高いってことでしょ?」


 宗右真は中々、答えなかったが、左久夜が何度も尋ねると、渋々ながらに口を開いた。


「百(エン)ちょい」

「ヒャック、エン?」


 想像以上の値段に、思わず声が裏返る。


「え? ちょっと待って。確か、学校の先生のお給金が、五十(エン)くらいって……。え? 待って、待って……百圓でしょ? 百圓っていくら……じゃなくて、えっと……そうだ、たい焼きは、いくつ買えるの? 何個分?」

「いつもの甘味屋なら、一万個。毎日一個食べて……ざっと三十年分くらいか」

「さん、じゅう、ねん?」


 左久夜は呆然とつぶやいて、


「無理。無理無理無理無理無理!」と、両手と首を高速で振った。


「そんなの、もらえない! 重い。たい焼き一万個は、重すぎ! 首がもげる! それに、壊したり、なくしたりしたらどうすんの! 責任取れない!」


 箱をパタンと締めて、宗右真に返す。すると宗右真はすぐに、箱を押し返してきた。


「だから、やるって言ってんだろ。お前みたいなへっぽこは、こういうもんで底上げしねぇと、使いもんになんねぇんだよ」

「いくらあたしがへっぽこでも、もらえるわけないでしょ! 魔導石なんだから、ソウちゃんがつければいいでしょ!」

「こんな可愛いもん、俺がつけてたら、気持ち悪りぃだろうが」

「え? もしかして、わざわざ、可愛いの選んだの?」

「だよ! だから受け取れ!」

「無理なものは無理! 絶っ対っ、無理!」


 左久夜は返すが、再び、こちらへ押し戻された。左久夜はじぃっと、宗右真を見る。


「ソウちゃんって、お給金、いくら貰ってるの?」

「……」

「ねぇ、ねぇ」


 左久夜は、また、しつこく聞いたが、今度は「言うわけねぇだろ」と、かわされた。


「いいから、受け取れ」

「無理だって」


 二人の間を、箱が行ったり来たり。それが何度か続いたあと、宗右真の手が止まる。しかし、そこで終わったわけではなかった。


「お前が受け取らないなら、ここで燃やす」


 いきなり、宗右真が強硬手段に出た。箱の中からネックレスを掴み出すと、本当に呪文を唱え始める。


「ちょっと!」 


 左久夜は慌てて、ネックレスを持つ宗右真の手を両手で握りしめた。


「何すんの! 意味、分かんない。百圓もしたんでしょ! もったいないじゃない!」

「さっさと受け取らねぇからだろうが」

「だって……」

「何だよ」

「だって、あたし、ソウちゃんに負担ばっかりかけてるんだもん」


 左久夜はうつむいた。その手にネックレスが握らされる。


「そう思うなら、努力しろ」

「……はい。がんばります」


 しおらしく、左久夜は返事をする。


「とりあえず、お前は魔術の基礎を繰り返しやれ。分かったな? それから、甘いもんばっか食ってないで、食事はちゃんととれ。運動をして、体力をつけろ」


 言われるまま、左久夜はその全てに「はい」と、うなずいていった。


「あとは、特訓もな」

「はい」


 これまでと同じ調子で答えた左久夜は、一拍置いて、首をひねる。


「……え? 特訓? 特訓って、何?」

「特訓は特訓だ。覚悟しておけ」


 宗右真は、にっと笑った。


 その後、左久夜は昼前に家を出た。

 帰り際には、お古の魔術書を渡される。これを完璧に習得しろとのこと。

 そして、もう一つ。しし屋のようかんは、昨日の作戦でおとなしくしていた褒美だと言う。もっとも、宗右真も実家に寄った際に、押しつけられた物で持て余していたらしい。

 とはいえ、しし屋のようかんは、季節の贈答品にも使われる高級品。左久夜は、ありがたく頂戴した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ