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第80話:集結する仲間たち 〜闇(停電)に潜む魔王を守れ〜

 ズガァァァァァンッ!!


 S区の境界線付近。

 一匹の巨大な『アーク・デーモン(Aランク)』が、銀色の閃光によって両断され、崩れ落ちた。


「はぁ、はぁ、はぁ……!」


 血振るいをして剣を納めたのは、銀条レイナ。

 彼女は、押し寄せる魔物の波をかき分け、ついにS区の中心部——相葉邸のフェンス前までたどり着いていた。


「師匠……! ご無事ですか!」


 レイナは、闇の中に佇む古びた一軒家を見上げた。

 家は、静まり返っていた。

 明かり一つついていない。

 周囲の避難民たちが拝んでいる通り、そこはまさに「嵐の中の静寂」だった。


(電気が消えている……。やはり、師匠は……)


 レイナは確信した。

 あの方は今、深い瞑想に入っているのだ。

 地下から迫る「終焉の王」との決戦に備え、精神を研ぎ澄まし、魔力を充填しているに違いない。


「邪魔はさせません。師匠が目覚めるその時まで、この聖域は私が——」


 レイナが剣を構え直した、その時だった。


 ヒュゴォォォォォォォッ!!


 上空から、真紅の流星が降ってきた。

 魔物の群れの中に着弾し、爆炎の花を咲かせる。


 ドゴォォォン!!


「Hahaha! Don't start the party without me!(ハハハ! 俺を置いてパーティを始めるなよ!)」


 炎の中から現れたのは、金髪の巨漢。

 アメリカ最強のSランク探索者、ジャック・バーンだ。

 彼はロケットランチャーを肩に担ぎ、ニカっと白い歯を見せた。


「ジャック氏!? なぜここに?」

「Friend in need is a friend indeed.(まさかの時の友こそ真の友、だ)」


 ジャックは親指で相葉邸を指差した。


「Master(師匠)の家がピンチなんだろ? 海の向こうで指をくわえて見てられるかよ」


 さらに。

 ズザザザザッ!!

 激しいスキール音と共に、一台のボロボロになった装甲トラックが滑り込んできた。

 車体には『YAMAZON』のロゴ。


「ヒャッハー! お届け物でーす!!」


 運転席から飛び出してきたのは、スキンヘッドの巨漢——Sランク配送員、剛田猛だ。

 彼は荷台から巨大なコンテナを降ろした。


「剛田さんまで……! それは?」

「備蓄食料と水だ! 湊様は引きこもりだからな、兵糧攻めが一番効く! だから俺が補給線を繋ぐんだよ!」


 剛田が胸を張る。

 かつて敵対したり、あるいはただの業者だった者たちが、今、一つの目的のために集結した。


 【相葉湊の安眠(引きこもり)を守る】


 ただそれだけのために。


「……ふふっ。頼もしいですね」


 レイナは微笑んだ。

 三人は背中合わせに立ち、全方位から迫りくる魔物の群れと対峙する。


「ここから先は、一歩も通さん!」

「Let's dance!(踊ろうぜ!)」

「時間指定(納期)は絶対守る!」


 人類最強の防衛線が、ここに完成した。


 ゴゴゴゴゴゴ……!!


 地面が激しく揺れる。

 魔物の群れの奥から、さらに強大な——地下からの「真の敵」の気配が近づいてくる。

 決戦の時は近い。


 ◇ ◇ ◇


 ——一方、その頃。

 守られるべき聖域の内部、二階の自室。


 そこは、外の熱気とは裏腹に、悲痛な空気に包まれていた。


「……あぁ……」


 暗闇の中、懐中電灯の明かりだけが頼りなく揺れている。

 俺、相葉湊は、テーブルの上に突っ伏していた。


 目の前にあるのは、ドロドロに溶けた液体。

 かつて『チョコミントアイス(スーパーカップ)』だったものだ。


「溶けちまった……」


 俺はスプーンですくってみた。

 液体だ。完全にスープだ。

 冷凍庫が止まってから数時間。この暑さではひとたまりもない。


「俺は……あのパリパリしたチョコの食感が好きなのに……」


 俺は涙目になった。

 セーブデータが消えたショックを癒やすために、虎の子のアイスを取り出したのに、この仕打ちだ。

 ぬるいチョコミントスープなんて、ただの甘い歯磨き粉じゃないか。


「……誰だ」


 俺はスプーンを握りしめた。

 ギリギリと音がする。


「俺の電気を止めて……アイスを溶かしたのは、どこのどいつだ……」


 怒りが、フツフツと湧いてくる。

 外から聞こえる爆発音(ジャックの攻撃)や、地響き(剛田のトラック)が、さらに俺の神経を逆撫でする。


「うるさいし、暑いし、暗いし……!!」


 俺は立ち上がった。

 もう我慢ならない。

 この怒りは、誰かにぶつけなければ収まらない。


 ドンッ!!


 俺が足を踏み鳴らすと、家全体がビクリと震えた。

 その衝撃は、外で戦うレイナたちに「神の目覚め」を予感させ、地下の怪物には「挑発」として伝わった。


 ——次話、いよいよ激突。

 地下から現れる「終焉の王」と、アイスを溶かされた「S区の魔王」。

 本当に怖いのは、どっちだ?

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