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7 魔法は天才気質?

 ……うん?ここは……あ、そうか。疲れて寝たんだった。

 僕はそのクソデカボディを持ち上げた。

 あれからどれくらい経ったんだろう?時計がなければ、日光も差し込まないから全くわからない。


 「マシロっぽいヘビさん~?どこ行きました?」

 「ここに居る。あとその名前なんなの?」


 「あぁ。前世で、君にそっくりな見た目のヘビっていう生き物をペットとして飼っていたんだ。マシロっていうのはその子の名前。大きさは人間の手のひらに乗るくらいだけどね。」

 「……私も名前欲しい。」


 「そういえばなかったのか。前の主さんはつけてくれなかった?」

 「うん。ずっと”グレーターマナペント”って呼ばれてた。」

 うーん…、名前くらいつけてあげなかったの?前の主さんよ。可愛そうじゃないか。


 「そうだなぁ……。こっちも真っ白で赤い瞳のヘビだけど、マシロとは別の名前にしないとな……。」

 グレーターマナペントっていう名前から取るのは難しいし、そうしたくはない。種族名から取るのって、テンプレだよね?そういう僕は見た目で付けたが。


 「シロリ…シロリル…シラシル……うーん、特に深い意味はないけど、”シラフィル”なんてどうかな?白っていう意味は入ってそうな感じがするからさ。」

 「良い響き。それがいい!」

 彼女は首を縦に振りながら答えてくれた。


 「よかった。じゃあシラフィル、これからよろしくな!」

 「うん、よろしく!えっと……そういえば、あなたの名前ってまだ聞いてなかった。」

 「あ、そっか。そうだったな……。僕の名前は……」

 一瞬言葉を飲み込み、僕は少しだけ考えてから言った。


 「――そうだ。シラフィルがつけてくれないか?僕の名前を。」

 「いいの?私なんかが?」

 「もちろん。さぁ、どんな名前でもかかってこい!――ナガスギナイモノデ。」

 「……それじゃあ、”ヴァルシリィ”はどうかな…。聞いたことのある名前の組み合わせなんだけど……。」

 「ヴァルシリィ……!普通にかっこいい名前じゃん!僕なんかよりずっとセンスあるよ!」

 「ほんと?よかった…!」

 ヘビだから見た目で表情は判断できないが、念話の声には確かな安堵が感じられた。


 「改めてよろしく。ヴァルシリィ。」

 「うん。こちらこそ!」


 「グゥウ~~~」

 おい、タイミング考えろ!僕の胃袋!


 「お腹空いた?」

 「ハハハ…そうだね。あの戦いから随分時間も経ったと思うし…。」

 今度はなに食べる?さっき倒したゴブリンしか思い浮かばないが……。でもちょっと臭かったから、焼けば食べれる……あ、ワンチャン焼けるのでは?


 「ねぇねぇ、火を出す魔法とか使える?」

 「ごめん。それは使えない。でも、この本になら書いているかも。」


 「そうか。ならちょっとこの本を最初からペラペラめくって見せてくれる?僕には小さすぎて無理だからさ。」

 体がデカいとこう不便だなぁ…。体を縮める魔法とかあればいいんだけども。

 シラフィルがめくってくれている中、気になる魔法はあったが、10ページくらいめくったところでそれらしき魔法が見つかった。


 ローファイア

 属性:火

 階級:初級

 呪文:火の粉よ、顕現せよ

 効果:小さな炎を生成。生活魔法としては優秀だが、戦闘には向いていない。


 そうそう。こういうのだよ!

 魔法陣は、円を描いて、そこに三角形をいくつか組み合わせるだけの簡単なものだったから、すぐに描けた。

 「描いたのはいいけど、これってどう使うの?ここに書いてる”火の粉よ、今我の前に顕現せよ、ローファイア”って念じれば……」


 「ブワッ」

 いきなり何も無い僕の目の前に、とても小さな炎が出現した。

 しかし、その炎はすぐに消えた。


 「おぉ!?炎だ!これだよこれ!この感じ!今日から僕も魔法使いだ!……でもこれは小さすぎるなぁ――とは言っても僕がデカすぎるだけなのかも?……あ、シラフィル!これであってた!?」

 「……ヴァルシリィ、今なにした?」

 「魔法陣に向かって、”火の粉よ、顕現せよ、ローファイア”って……」


 「ブワッ」

 突然もう一つ出現した。うっかり使ってしまうこともあるのか。


 「魔法陣って結構繊細なんだね。今詠唱を念じたら2つ目出しちゃったけど……」

 「ワタシハソレヲムエイショウトイウノダケド……」

 「ん?今なんて?」

 「だからそれ、無詠唱だよ!!!」

 「……え?じゃあこの魔法陣は……」

 「あとは魔力を流すだけでよかったの!!!」

 怒鳴られました。


 「……”火の粉よ、顕現せよ、ローファイア”、”火の粉よ、顕現せよ、ローファイア”、”火の粉よ、顕現せよ、ローファイア”、”火の粉よ、顕現せよ、ローファイア”」


 「ブワッ、ブワッ、ブワッ、ブワッ」

 連続で念じると、その数だけ炎が現れた。それもすぐ消えてしまったが。


 「なんだ、無詠唱って念じるだけでいいのか。」

 「……呪文、もう一回教えて。」

 「”火の粉よ、顕現せよ、ローファイア”だよ。」


 「ブワッ」

 おい今は出てくるな。


 「”火の粉よ、顕現せよ、ローファイア”」


 「・・・・・・」

 しかしなにもおこらなかった。


 「こういうことだよ…。私は”ローファイア”を一度も使ったことないから、当然出ない。」

 「そうっすか……。」

 「魔法陣一度も使ってないよね。一回使っただけで完全修得(マスター)なんてありえない。昔聞いた。」

 「ところで完全修得(マスター)って、どうしたらできるものなの?」

 「さっきも言ったけど、詳しいことは知らない。ただ、私が完全修得(マスター)のためにしたことは、一週間ひたすら魔法陣を通し、その魔法を使い続けてようやく身に付いた。他の魔法はもっと掛かったよ。」

 「……翻訳能力に続いての転生特典かな?」

 「なにそれ?」

 「あ、まぁその……才能ってやつ?」

 なにを言っているのやら僕は…。


 「才能……そもそも出現したときからあれだけの力を持っていたみたいだから、不思議じゃないかも。」

 なるほど。たしかに、それも一理あるね。

 この世界で魔物が魔法を使うことは案外普通のことで、僕はその中でも稀な才能を持って生まれた。そういうことなんだろう。


 「他の魔法も試したいところだけど……まずは腹ごしらえの方が先っすね。」

 僕はゴブリンの死骸を前にして、

 これでこの洞窟内でも調理ができるぞ!あ、でも言うて焼くだけか。調味料もあれば完璧だった…。


 「火の粉よ、顕現せよ、ローファイア!!!」

 「ブワッ!!!」

 わっ!?さっきより火が強い!そのせいでゴブリンの死体は激しく燃えてしまっている。

 「シラフィル!これどうやって止めればいいの!?焦げちゃう!」

 「魔力込め過ぎ。……”コールド”。」

 シラフィルがそう呟いたと思った直後、燃えたゴブリンの死骸の火が収まり、逆に青白く凍り始めた。


 「ご、ごめん。助かった…!」

 「別に大丈夫。でも次は気をつけてね。魔力量の調整は気持ちの問題。」

 「はい…。」

 なんで威力が突然上がったんだろう。ちょっと気合入れたからかな?それなら今度は落ち着いて……


 「火の粉よ、顕現せよ、ローファイア」

 「ブワッ」

 なるほど。魔力の調整ってこうすればいいのか。


 「もしかして、もう感覚掴めたの……?やっぱりヴァルシリィはすごい!」

 「うん。そうみたいだよ。ほら見て。」

 今度は何も無いところに向かって気合を込めて……!


 「火の粉よ、顕現せよ!!!!!」

 「ブワァア!!!」

 その炎は一瞬だったが、僕の顔くらい大きなものだった。

 おぉ、ここまで威力上がるのか。生活魔法と書いてあったけど、こりゃあ普通に戦闘で使えるじゃないか。

 「い、今のが同じ魔法だっていうの……!?」

 「ありゃ、シラフィルさん。固まってらっしゃいますよ~。」

 っていう僕のセリフは冗談で、僕の魔法の才能がかなりすごいかもしれないと、僕自身が思わされた反応だった。

 元使い魔視点だからなのか、それとも特別すごい魔法を見ることがこれまでなかったのか…。

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