4 実はデカかった?
さて、腹も満たせたことだし、先に進むとしよう。
また赤緑バチが出てこられるのは嫌だけど、食料はクソマズデカキノコしかないから戻っても仕方ない。誰かあれをおいしく食べる方法を教えてくれー。
動いて食べてだったからさすがに喉乾いたな。どこかに水ないかな。
そんなことを考えながら進むと、丁度良く水が溜まっている場所を見つけた。池?それとも湖って言う広さなのかな?
よかったよかった。しかも透き通っている。今後水が見つからなくてもここに戻って来れば安心!
「スー、ゴクゴク」
プハーッ!生き返るー!「プハーッ」は声に出せないけど。
「カタン!」
ヒッ!?なんだ今の音!?なにか居る!?
僕は慌てて厳重警戒体制に入ったが、その音の方に視線を下ろすと、あったのは小さな骸骨だった。
目を凝らしてみたが、どう見ても人の骸骨の形をしていた。僕の方が3倍くらいデカいけど。もっとも、それは「身長」に相当する高さで比べた場合であって、体長を基準にすれば僕の方が数倍勝っている。
流石にサイズ的に人間なわけないか。小人族的な種族かな。ヘビよりちっちゃいって相当だな。どうしてこんなところに生息しているのやら。
今の音の正体は、この外れ落ちた顎だったんだろう。
お、なんだこれ。
僕はその骸骨の懐で光るものを見つけ、砂を払い除ける。
それは銀色のコインが何枚か入った袋だった。小さくて見にくいが、表面には見慣れぬ文字と、なにかの模様が刻まれている。
だけど、なぜかその日本語でもないその文字は読めた。
「イラエルダ大銀貨」と。
イラエルダ?異世界ものでありがちな、一国家が製造する、他国でも出回るような硬貨的なやつ?
ということは国、文明がちゃんと存在しているんじゃないだろうか。
その袋には、他にも何枚かの硬貨が入っていた。銅貨は入っていたが、金貨はなかった…残念。
もしかして、これ小人とかじゃなくて人間の骸骨では……。
硬貨を導入しているなんて、人間くらい知性の高い種族しかいなさそうというのが僕の偏見だ。
知性が高い種族が人間に限った話でもないが。
もしそうだとしたら……いやそうであってほしくない!
だってこの骸骨よりバカデカくて、会話もできずこの「シュルルルルッ!」って音しか立てられない魔物なんて、どう考えても危険とみなされて即討伐だー!ってなるでしょ!
ま、まだ人間とは確定していない!小人族の国っていうことも!
あーよくよく考えなくとも小人族からしても討伐対象だね…。
前世は人間だったから、もちろん敵になるなんてまっぴらごめんだ。
フレンドリーでありたい!
けど、こんなに体格差があれば敵とみなされるのは避けられないだろう…。
そういえば、まだ自分の顔を確認してなかった。
すぐそばにある池を覗き込む。
うん。やっぱりヘビだから可愛さがあるね!……これが自分じゃなければさらによかったが。
もう一度言おう、ヘビは好きだがなりたかったわけではない!
ましては人間からしたら討伐対象になるであろうこんな巨体なんて!
この硬貨袋、洞窟の外に出たら使えるかもしれないから一応持っておこう。
出会ったときに言葉は通じなくても、これを渡せば敵対されない可能性もある!
……罠かと勘違いされる?いやいや考えすぎだと思いたい。
指とかがないから、袋の紐は歯に引っ掛けるしかなさそう。
めんどくさいけど、咥えて運ぶことにした。
そういえば外。まともな食料はやっぱりここから出ない限り手に入らないんだろうね。
前世は自炊してたから料理くらいはできる。でも、手足のない今の僕じゃ苦労するか…。
これは尻尾をもっと器用に使えるように努力すればいいかも?
というか、外に出れたら何しようか。人間に討伐されるっていう危険があるかもしれないけど、できれば自由気ままにスローライフを送りたい。そして人間とは有効的な関係を築きたい!
魔法とかあれば使ってみたいなぁ。魔物が魔法なんて使えるかわからないけどね。
そんな気楽なことを考えていたら、奥の方から魔物の気配がした。
道が曲がっているせいで、その姿はまだ見えなかった。
そうだ。まずはここから出ないと話にならないんだよ…。
腹の傷は依然として回復の兆しもなく、かなり痛々しいものだった。だが、不思議と我慢できている。
地面を引きずっているような摩擦音。さっきの赤緑バチとは全く別の種類みたいだ。
その陰が忍び寄ってきた。
あの形は……まさかヘビ?
ただ僕よりかなり小さい。さっきの骸骨より一回り大きいくらいのサイズだ。
さて、同種かはわからないけど、同じヘビ同士仲良くしてくれませんかね?
そうして僕はそいつと対面した――……は?え?まさか!?えぇえええ!?
その姿を見た瞬間、僕は思わず口を開けたまま立ち尽くした。
だって――少し形は違うけれど、前世で飼っていた赤い瞳と白い肌のアルビノのヘビ、マシロにそっくりだったのだから。