12 なんとか人間に変身できた……?
「来たコレだぁああああああああ!!!」
僕は喜びで叫んだ。ついでに舌も鳴った。
「な、なに!?なにを見つけたっていうの!?」
「人間そのものに変身できそうな魔法だよ!」
「そんな魔法がこの本に!?」
「これさえ使えれば僕は普通に自由に生きることができると言っても良い!……多分。ところで帝級って書いているけど、どれくらいの階級なの?」
「……帝級?そんな高位の階級があるの……?私が知っているのは上級の一つ上の賢者級まで。階級が高ければ高いほど魔力消費量が多くなるから、きっと今のアナタの魔力量では足りない……。」
「えぇ……でもやるなら絶対これがいいよ!これさえ使えたなら多分人間社会に完全に溶け込めるよ!最終的な僕の目標がそうなんだし!」
「……魔力は私がどうにかしてみる。賢者級魔法さえ使ったことがないから可能かはわからないけど、やるだけやってみていいと思う。」
「ほんとか!ありがたいよシラフィル…!」
そうと決まったら、僕はシラフィルにこの魔法について説明した。
魔法陣を使うと、シラフィルの魔力で僕に発動させることが可能らしい。魔力量は彼女の方が圧倒的に多いから、発動は任せることにした。
そして必要になる人間の一部。流石に人を襲って手に入れるなんてことはしないから、さっきのダンジョンに潜って骸骨を探すことにした。入口は埋まっていただけだったから、掘り起こせば普通に入れた。入口から近いところには無く、奥の方に潜る必要があった。もちろんダンジョン内の魔物はまだまだ残っていたから、そいつらとも戦った。腹ごしらえもまたマズ飯に逆戻り……。シルバーファングルフには出会えなかった……。今度はちゃんと調理して食いたいよ……。そして捜索開始から丸一日掛かってようやく発見。すみませんが、ありがたく使わさせていただきます…!
そしてついに準備は整った!地上では討伐クエストの心配もあるから、魔法の練習はダンジョン内の良さげな空間でやることにした。
魔法陣OK、骸骨OK、僕もスタンバイOK。
「そういうことでシラフィル、頼む!」
「わかった。」
すると、魔法陣が白く輝いた。魔力が注がれた証拠だ。
さぁ……どうか成功してくれよ……!
僕の体が白く光出す…!そして少し縮んで何かが生えてきた!
これは……腕だ!しかし……他に変化は全く感じない。どうなっているんだ……?
そして、僕の体を覆っていた光が収まった。
ん?目線が少し下がったのはわかるが、人間より一回り大きいくらいのシラフィルが入っていない。
「ヴァ、ヴァルシリィ……そ、その姿は……」
それらしい場所に生えた腕、そして五本指のついた手がある。でも爪は尖っているし、肌色も元のままだ。ドラゴンみたいな腕だな……。
「なんか変な生物爆誕したぞ。一発目で成功しないってこういうことか……。」
おかしいからちょっと笑いながらそう呟いた。
「ごめん……。変になった……。」
「いいよいいよ。もともと本にはそう書いてたし、ところで魔力は大丈夫そう?」
「かなり消費した。でもあと1回は使える。私は全然やってもいいよ。」
「いいの?無理しないでね?」
そしてもう一度魔法陣を書き直して準備を整えた。かなり複雑なせいで、書くのに30分くらいは掛かる。しかも僕のサイズに合わせるために巨大で、それゆえ僕が書いている。本に書かれた小さい魔法陣をじっくり見ながら間違えないように……。かなり疲れる作業だった……。幸い骸骨が無くならなかったが救いだ。また探しに行くのは流石に骨が折れるからほんとに助かる……。骸骨だけn
「ようやくできた……。じゃあ二回目、よろしく!」
「いくよ。」
魔法陣と僕の体が光りだす。そして今度は……
体がさらに縮んで、シラフィルの2倍くらいの高さになった。元が5倍以上はあったから相当縮んでいる!さらには人間でいう上半身を手に入れた!さっきのただ腕が付いているのとは違い、肩がある。近くにあった水たまりを除くと、ヘビ人間みたいな生き物になっていたことがわかった。変だけど、しっかり変化している。
「おぉ!?これちゃんと成功に近づいているんじゃない?二回目でこんなに変わるものなんだ!」
「これならいけそう!でもちょっとしばらく休憩する。魔力を回復させないと……。」
「うん。ゆっくり休んで!その間しっかり見張っておくから!」
そしてシラフィルは眠りについた。
さて、この状態で他の魔法は使えるのか。念話はずっと使っているから大丈夫だったけれど……。火の粉よ、顕現せよ、ローファイア。
「ブワッ」
お、ちゃんと使えるみたいだ。よかったよかった。
ところで腕が生えたわけだけど、パンチとかってどれくらいの威力かな?
とりあえずそこにあった岩を軽く殴ってみた。
「ゴシャッ!」
「……!?ヴァルシリィ!何があった!?」
あ、やらかした。
普通に砕けました。その音でシラフィル起こしちゃいました。
「ごめん……。岩殴ったら砕けて……。起こしちゃった……寝てていいよ。」
「そうなの?何もなくてよかった。」
それ以降はおとなしく魔法陣を完成させておきました……。
だが、これで変身後の能力が本人の能力に依存するということがどういうことなのかがわかった。
これなら人間としてそこそこ強い冒険者にでもなれそう!
しばらくしてからシラフィルが起きて、三回目の発動……
結果は更に体が縮んでついにシラフィルより小さくなってしまった。そして体つきの人間っぽさがさらに増した。下半身は相変わらずヘビのままなんだが……。あれ?これほんとにヘビ人間になってませんか?
そして四回目の発動、ついに劇的な変化を迎えることとなった。
「じゃあ四回目、お願いします!」
「ほんとに大丈夫なの……?私も不安……。」
「でも今のままじゃある意味化け物じゃん?ここまで来たんだから、僕はやれるだけやりたい!」
「くれぐれも消えたりしないでね……。」
ちょっと心配掛けすぎている罪悪感も出てきていた。でも実際大きさが変わってもパワーは変わっていない。これ以上小さくなるのは困るが……。
そんなことを考えている間に魔法は既に発動されていた。
僕の体が光りだす。あ、さらに縮んでる……。卵に還っちゃった!なんてごめんだぞ?
しかしそんな心配はなく、腕の鱗が減ってドラゴンみたいだったものが見覚えのある形状に変化していった。
こ、これはまさか…!ついに来たか!?
それに続くかのように、尻尾が2つに別れ始めた。感覚からわかる。足だよね!?足に決まっているそうだ!
さらには頭から生えてくるたくさんの毛。髪の毛!……なんか伸び過ぎじゃね?まぁあとで切ればいいか。
光が収まった。
まず腕を見た。それは見慣れた人間の肌……なんだけど小さい。小さすぎる。ついでに鱗が若干混ざっている。完全に人の腕になったわけではない。んなことよりなんでこんなに小さいんだよ……。
そして喉に違和感があった。おや?これは声を出せるのでは?
「……あ、あ……声帯テスト~声帯テス……えぇ……?」
声は出た。でもいくらなんでもハイトーンすぎる。まるで幼児のように高いんだが……。
「おかしい……こんなに高いのは絶対におかしい……。って……わっ!?」
僕は腰を抜かして後ろに倒れた。だって、シラフィルが僕の倍の、そのまた倍くらいの大きさに見えていたんだからさ!
『ヴァルシリィ、大丈夫?人間っぽくなっているけどかなり小さい。』
「う、うん。大丈夫。」
『え?なんて言った?』
あぁそうか。今普通に日本語で話していたからわからなかったね。念話の感覚で話してしまっていた。
『大丈夫、僕はこの通りピンピンしている!……またまた縮んだのは予想外だった…………』「ぎゃぁあああああああ!!!」
『えぇ!?ほんとに大丈夫!?』
これは予想外すぎて叫んだ。顔を下ろすと、あるはずのものが下になかったんだ……。しかも元の姿のときは気にしなかったけど、今は素っ裸なんだよ!