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第十一話 外交政策の行方

 フィーネとの謁見から一夜が明け、朝日が城の高い塔を照らし始めた頃、クフ―リはウォーレン宰相をはじめとする高官たちと共に、大広間で外交案件に関する会議を行っていた。大広間の高い天井からは、豪華なシャンデリアが煌めき、壁には王国の栄光を象徴する絵画が飾られている。床は黒い大理石で、太陽の光が反射してまぶしく輝いていた。

 クフ―リは会議の中心に座り、冷静な目で集まったメンバーを見渡した。その顔にはわずかな疲れが見え隠れしていたが、その目にはしっかりとした決意が宿っていた。彼の前には、大きな木製のテーブルが広がり、その上には無数の書類と地図が散らばっている。

 ウォーレン宰相はテーブルの端に座り、眉をひそめながら話し始めた。「殿下、我々が狼邪国との独占的外交案を受け入れるとなると、これまでの方針が大きく変わることになります。万が一、この案が裏目に出た場合、我が国の立場が危うくなるかもしれません。」

 その言葉に、他の高官たちも一斉にうなずく。何人かは、口をひらく前に互いに視線を交わし、緊張感が漂う。会議の空気は、一触即発の雰囲気を感じさせるものだった。

 クフ―リは無言で書類を手に取ると、慎重にそれを読み進めた。各国の外交動向、過去の交渉履歴、そして狼邪国の経済状況や軍事力。すべてを総合的に見極める必要があると感じていた。その一方で、彼の心にはある確信があった。それは、国の未来を切り拓くためには、時には思い切った決断が必要であるということだ。

 しばらくして、クフ―リは深い息をつき、ゆっくりと顔を上げた。「我々の立場も理解している。しかし、狼邪国との良好な関係は、将来の平和を築くために不可欠だ。」彼は全員を見渡し、低い声で続けた。「そのためには、今回は彼らの要望を受け入れるしかない。」

 ウォーレン宰相は少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに静かな表情に戻った。「陛下がそのように決断されたのなら、我々も従いましょう。ただし、その後の交渉においては十分な監視と報告体制を整えるべきです。」

 会議室内の空気は少し和らぎ、他の高官たちもそれぞれに納得したような表情を浮かべていった。クフ―リは立ち上がり、部屋を出る準備を整える。その目の奥には、しっかりとした決意が宿っていた。

 その後、クフ―リは急ぎフィーネに伝えるべく、彼女が待つ場所へと向かった。城の広大な庭園を通り抜け、空気が少し冷たく感じる中で、彼はフィーネの姿を探す。木々の間から差し込む光の中で、彼女が静かに佇んでいるのが見えた。

 フィーネはその時、クフ―リを見つけると少し驚いたように顔を上げた。彼女の瞳は朝日を受けて輝き、髪が軽やかに風に揺れていた。彼女はクフ―リに向かって微笑みながら歩み寄る。「クフ―リ、どうなったのですか?」

 クフ―リは深く息を吸い込み、短く答える。「私たちの決定は、あなたの要望に応じる形となった。狼邪国との独占的外交案を受け入れることにした。」

 フィーネの瞳が一瞬、驚きの色を浮かべる。しかし、すぐにその表情は落ち着きを取り戻し、静かな微笑みが浮かんだ。「それは、嬉しい知らせです。」彼女の声には、どこか安心したような、また感謝の気持ちが感じられる。

「でも、少しだけ驚いています。」フィーネは少し照れくさそうに言い、目をそらす。その仕草に、クフ―リは思わず胸の奥で何かがこみ上げるのを感じた。「あなたがそのような決断をするとは、思っていませんでした。」

 クフ―リは微笑みを浮かべて答えた。「誰もが最初は予想できない選択をするものだ。だが、我が国にとっても、狼邪国との関係を築くことは、未来に繋がる重要な一歩だと感じている。」彼の言葉には強い覚悟と共に、冷静さが宿っていた。

 フィーネはその言葉をじっと聞き、少しの間黙っていた。やがて、静かに頷く。「分かりました、クフ―リ。あなたがそう決めたのなら、私もそれを受け入れます。」彼女の声には、信頼と少しの寂しさが混じっていた。

 再び二人の間に静かな空気が流れる。クフ―リは一歩後ろに下がり、深く礼をする。「フィーネ、私の国のために行動してくれたことに感謝している。そして、あなたと過ごした時間を大切に思う。」彼の声には、思わず心がこもるような温かさがあった。

 フィーネもまた静かに一礼し、微笑んだ。「ありがとう、クフ―リ。あなたの国が、平和と繁栄を手に入れることを心から願っています。」

 別れの時が訪れる。フィーネはゆっくりと歩き出し、その後ろ姿を見守るクフ―リの心には、無言の重みがあった。彼女との別れが、あまりにも静かで、しかし確かに心に残るものであることを感じながら、クフ―リは深く息を吸った。彼の目には、国の未来に向けた強い決意が、ますます深まっていく様が宿っていた。

 その後、フィーネは静かに狼邪国へと帰路につく。彼女を見送ったクフ―リは、しばらくその場に立ち尽くし、深い思索にふける。やがて、歩き始めた彼の足音は、庭園の静けさの中に響き渡り、次なる戦いの予感を胸に抱きながら、彼は新たな決断を胸に明日への希望を抱くのだった。

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