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第一章 世界樹の写し木 第十五話

 衝撃に限界を迎えた床が崩れて下の階へと落ちていく。しかしライラ、ソラ、スカーの三者は重力に従わずその場に留まり続ける。目を凝らしてみると、細く透明な糸で紡がれた床が新たに形成されているのが分かる。

 その様子を見ていたアスタロトは疲労を滲ませた顔でソラを一瞥し、赤い光に包まれて姿を消した。

 アスタロトの居た場所には一冊の本が残り、青い光を宿すと次の瞬間にはソラの手元に現れた。


「おつかれさん。あーあ。ついにライラのやつを呼び出したのか。」


「……やむを得ず。」


 ソラはライラとも召喚の契約を結んでおり、召喚する際にライラに魔力を肩代わりしてもらうことで、魔力の消費をほぼ無くして術式の行使が可能となっている。ただし、それはライラの善意を元に成り立っている為、魔力以外の対価を要求される。

 

「さてと、邪魔者は消えたし、式場は何処にする?」


 これが対価である。


「ライラ、僕達は同じ探究者パーティーだ。パーティー内恋愛は味方を殺す。せめて現役引退してからはどうだろうか?」


 一般的に探求課は40歳くらいで現役を引退することが多く、現役中の死亡率も高いため引退後に結婚は珍しくはない。


「相棒は60まで現役のつもりだぞ」


 ゴエティアが密告する。


「おっ、おい! 裏切ったな!」


「お前が照れ屋なのは分かっているが、さすがに待てんな。覚悟を決めるがよいぞ。」


「……」


「だってさ。相棒」


 ゴエティアの楽しそうな声と対照的に、引き攣った表情をしたソラ。

 気まずい空気が流れる中、決心したのか覚悟を決めた顔でソラは右手を差し出す。


「! ついに決めたか! 嬉しいぞ! まあ誓いの握手ではなく、誓いのキスのほうが私好みだが、今回はお前の好みに合わせよう」


 そう言って嬉しそうなライラがソラの右手を握り返す。


「送還。」


 嬉しそうなライラに笑顔で返したソラがボソッと一言呟く。すると青い光に包まれたライラがこの場から退場した。


「……えっ?」


「うわっ……最低。」


 場の変化にスカーが戸惑った声を、ゴアティアは軽蔑するような声をあげる。


「……」


 2人の声を聞いてもソラは黙ったままである。


「さすがの俺も突然呼び出して、助けてくれた人に対してこの仕打ちはできねえなー」


「今のは何が起きたのですか?」


「召喚の魔術は相手を呼び出すことができる。けど、当然呼び出すだけではなく、送り返すこともできるんだ。つまり対応に困ったソラは、無情にもライラを元居た場所に送り返したって訳」


「なるほど。ソラ殿、さすがにそれは……。

 ちなみに何故ソラ殿は結婚を拒むのですか? 

 人間基準で考えれば美しく、しかもあの強さ。素晴らしいではないですか?」


 ドン引きしたスカーは疑問の声をあげる。


「……お前ら魔物の番い基準ならそうだろうな。だが俺ら人間の判断基準はそれだけじゃないのを覚えとけ。あいつと結婚したら最後。女王蟻なんて目じゃない、血と暴力による恐怖の独裁政治家庭が始まるんだよ。」


 この男、尻に敷かれるのが嫌なだけである。

 


 幸いにもライラの帰還後も、術式で生み出された床は健在であり、そのまま道なりに進めば三階層まで繋がってそうであった。


「過ぎたことを気にしても仕方がない! 次の階へ行こうじゃないか!」


 道が続いてるのを確認したソラは、二人から浴びせられる非難の声を無視して、先へ進むのであった。

 改めてこの男、最低である。

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