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第一章 世界樹の写し木 第十話

 目を閉じ、完全に死体になりきっているソラは降り下ろされる矛に全く反応することができなかったが、警戒を続けていたスカーが咄嗟に身を後ろに引いたことで、身体を二つに割かれる未来は防ぐことができた。

 しかし、勢いによりその身を投げ出されたソラは受け身をとる間もなく地面に叩きつけれた。衝撃で声が上がりそうになるも、状況の判断がつかなかったことから、死体のふりを続行し、なんとか声を殺すことができが、その目は涙目になっていた。


「なんのつもりだ。」


 スカーが門番である騎士級の蟻達を睨みつける。返答をしない門番としばらくの間睨み合いになるも、扉の奥から甲高い声が響いてきた。


 「妾は空腹じゃ!早う食事を持ってまいれ!」


 その声を聴いた門番たちは互いに見つめあうと、渋々ながらも構えを解き、門の取っ手に手を節くれだった指をかけて扉を開いた。顎を鳴らし威嚇しながらも先に進むよう指示する。

 視線は門番から離さず、ソラを拾いなおしたスカーは門の向こう側へと進んだ。 


「腰抜けの非常食が如きが。」


 すれ違い際に吐き捨てたように暴言を放つも、スカーは一瞥するだけで足を進めていった。中に入ると背後の扉が閉められた。

 扉の先は広い吹き抜けの間になっており、壁の周りを周回するような形で螺旋状に階段が続いている。

 また、これまでの通路とは異なり、周囲の壁から色鮮やかな花が咲いているため、どこか華やかな印象となっている。そのまま階段を上っていくとスカーが口を開く。


「先ほどはすみませぬ、もうしばらく進むと嬢王様の部屋につきます。」


「一瞬死んだかと思ったよ。けどあれはなんだったんだ?」


「たしかにな。相棒に気づいたわけでもなさそうだったし。」


二人が疑問の声を上げるとスカーが申し訳なさそうに答える。


「あれは私に対しての威嚇ですね。本来ならば私たち兵隊蟻の身分の存在は、嬢王様や騎士級には逆らうことは出来ず、もしどちらかが空腹ならば、その身を食料として差し出さなければならず、それが誉れとなっております。

 けれど私はそれに逆らい抵抗した過去があり、何度か騎士級と戦闘をしておりので、それの因縁です。ただ嬢王様への食料の献上で行動に起こすとは思っておりませんでした。危険な目に合わせて申し訳ございません。」


スカーの身に刻まれた傷は、その際の闘争の後であった。


「なるほど、相手からすると気に入らないやつだったのか。あと気になったのは、最後の奥から響いてきた声が嬢王?」


「そうですね。ただ、あの声はこちらに気づいたのではなく、空腹の際の癇癪です。門番たちも空腹時での食料の献上を阻むわけには行かず、通したわけです。正直あれには助かりました。もしあれがなければ、おそらくあの場で戦闘になってたと思います。」


「そんなギリギリの状況だったのか。ちなみに戦闘になってたらどうなってたんだ?」


「1体なら何とかなりましたが、2体同時ですと厳しいですね。おそらくソラ殿の助力がなければ敗北していたと思います。」


「えっ兵隊級なのに騎士級に勝てるもんなの? もしかしてスカー強い?」


「ふふっ。私も伊達に長生きして、同胞との争いに生き残ってきたわけではないのですよ。若い騎士級程度には負けませぬ。では、そろそろ嬢王様の間に着きますので準備をお願いします。」


「身にまとってる魔力濃いとは思ってたけど、それほどとはね」


 二人は意外な事実に驚きながら、声に従い上を見上げると螺旋階段の終わりが見えてきた。


「よし。じゃあ登ったらすぐ召喚術を展開するから、俺から離れないように。といっても俺が上に載ってるから大丈夫か。さっきみたいに振り落とさないでくれよ?」


 スカーは人間ならば苦笑いと呼べる表情を浮かべ、期待と不安を胸に秘めながら嬢王の間へと踏み入れるのだった。


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