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短編 勇者の1日

掲載日:2024/04/11

いひひ 

 不気味な笑い声が聞こえる。

 それはだんだんと大きくなり近づいてくる。

 来たんだ。あのときが。


 だが、それは私が思っていたのとははるかに違かった。

 彼らは、スパイ。そして私は、さらわれた人。

 だったはずなのだが……


「助けに来たよ!」


 そこにいたのは、アイドル、であった。


「キラキラマジカルビーーム!!!!」


 その一言で彼女の変わった杖からきれいな黄色の閃光が放たれた。

 だがそのレーザーは避けられ、隙を突かれてナイフをもった男に接近されていた。


「おらぁぁあぁあぁぁああ!!!」


 あり得ない量の魔力を感じて恐ろしく感じながらも、その男は突っ走っていった。

 けれど、それをもろともしない様子で、女の人はマイクから出る光の剣でナイフを切った。そのまま、彼の首は吹き飛ばされていた。

 

「とぉーっ!!」

「な、なぬ」


 だが、その血は青かった。青い血は弾け壁に放射状にちらばった。

 私は驚きで腰が抜けて動けなくなってしまい、その様子をただただ沈黙しながら見ていた。

 だがそのきられたの首は魔物となっていた。

それは「カモフラージュコボルト」変身能力が高く逃げ足が早いのが特徴だ。噂だと変身薬の材料となる鱗が高く売れるらしい。


 男たち、いや、トカゲたちは一気に逃げ惑った。

 

「あいつ!突っ込みやがって!逃げるぞ!」

 

 逃げ惑う途中で姿を解いてトカゲとなっていた。すると彼らの足はそれまでとは圧倒的にはやくなり、森の中に逃げてしまった。

 女の人はすぐに走りだし、魔術を使い、あのトカゲと同等の早さで走っていく。

 私はここで、今いるここが山小屋であることがわかった。もう外も暗く、お母さんたちも心配をしているのだろう。と思った。

 この瞬間に逃げなくては。と焦りの気持ちが体を震え動かし、やっと立つことが出来た。私はトカゲたちが走っていった方向とは逆に走る。


「まてー!」

「ぐえぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!」


 一方女の人は光の剣をふりまわしながら無邪気な子供のように剣を振り回していた。

 恐怖で叫んでいたトカゲたちの速度に追い付くと、きれいな剣裁きが叫ぶトカゲたちの首を撥ね飛ばしていく。

 外にいた私は、まるで痛いと思う瞬間の隙も与えないようなほど早いペースで倒し、血しぶきの音や骨が砕けるおとがして、また腰を抜かしていた。

 

 なんて強い力なんだって。

 直接は見ていないが、その骨を折る早さからそれを感じた。

 思わず口から叫び声が出そうになったが、言ってはダメな気がして口を押さえてしまった。


「遅いねぇ!まだまだいくよ!」

「ぎゃ」「ぐべ」「う」


 より速くなったのか叫び声が一瞬だけに聞こえる。

 近くにあった低木に寄りかかり、体の恐怖がなくなるのを待っていた。

 だが周りに仲間がいたのか、私はそいつらにまた捕まってしまった。魔術で手足を固定され、空中に浮かせられる。

 トカゲどもは舌をだしニヤケながら刃物を出した。

 その刃物は私の頬に擦られ、頬が一部切れる。


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

 私はあり得る力で声を出し助けを呼んだ。頬の傷が叫び声で震えて痛いが、叫ぶしか選択肢はなかった。

 だが女の人は戦闘中。

 きっと助けに来る暇はないだろう。そう思って目をつぶっていた。



「そこにもいたかぁぁああああああああああ!!!!!!」

「な」「ぎゃ」「くs」「やべ」


 叫び声が聞こえたすぐあとに、あっという間に私を取り囲んでいたトカゲたちを殺していき、私の方を向いた。


「あれ……さっきまで腰を抜かして座ってた子…………まさか恐怖でここまで逃げたか?」

「ご、ごめんなさい!あのまま座っていれば安心でしたよね!なのにあなたを信用せず逃げてしまって」

「しーーーーー。」


 女の人は謝っている私の口を二本の指で塞ぎ、ただ静かにするように指示を出した。


「今ほっぺを直してあげるから喋らないで。」


 そう言うと私の顔を魔法で固定した。そして私の頬に触れると傷口をみどりの光がなぞった。細胞の情報を読み取って皮膚を再生した。

 すると痛みはなくなり、元通りになっていた。


「よし、これでおk!」

「あ、ありがとうございます!!あの」

「いいよ、それ以上言わないで。恥ずかしいから。」


 女の人は頬をさわり傷口が完全になおったことを確信すると、お礼を言おうとする私の頬を真ん中に潰した。

 そして私を静かに下ろし、低木に寄りかからせた。

 すると私はいつの間に腰が戻っていて、立ち上がることが出来た。

 

 その時は、ただお礼をして帰ろうとしたのだけど、少しあるいたとき、

「あ、ね!君!」

 って声をかけられて振り向いた。

 

 そのあと、私のことを

「君に才能を感じるよ!剣術の才能がね!」

 と称賛されてしまった。

 そうして女の人はかえってしまった。


 私はありがとうをいう暇もなく、沈黙する森の中に取り残されてしまった。

 私はその時見えた家の光を便りにして、何とかすぐ帰ることが出来た。

 

  母は玄関で待っていて、私を心配するように私の大好きなチェック柄のマフラーを編んでいた。

 そして私に気づくと、その持っている針を落とし私の元へ走ってくる。


「レイヤ!」

「ママ!」


 ママはやっと会えた息子をハグした。きつく、もう離さないと言っているかのように。

 私は家の中に入り、その晩はママと抱き合って寝た。


 翌朝、状況が頭のなかで整理され、ママにそれを伝えることにした。


「ママー。昨日ね……勇者様に助けてもらった。すんごい変な格好してたけど、とっても強かった。」

「……勇者様……に?何でこんなところに勇者様がいるのかしら……?」

「わかんない……んでね。そのあとに勇者様に声かけてもらってね。私剣術の才能があるらしい。」

「け、剣術……?勇者様が……?」

「うん。」

 

 すると母は驚いていた。

 剣術は、名前の通り剣の技術のことだ。だけど私は今、魔法の学科にいる。


 母は、勇者様になにかが得意と言われる。それがどれだけ名誉なことか後に教えてくれた。

 

 それは、かつて勇者とよばれていた、頭のおかしい魔女の話。彼女は自身のことを、「世界で最強のアイドル!」と自身で名乗っていた。

 その宣言通り、彼女は勝率92%。どんなに強い魔物でもほとんど勝つのだ。たとえそれが神獣だったとしても、勝った。

 それは驚異的な数字であり、世界中を震撼させた。彼女は見た目に反した魔神だ。と誰かが言うほどに。


 そう、彼女は勇者を超越した勇者である。


「ふっ、なにそれ……カッコつけじゃんただの。」

「勇者様だからこういうことはなんか馴染むのよ。会えただけですごいんだから。」

「ふーん。ま、帰ろ。」

 

 私は母の説明を聞いて、後々布団で女の人の姿を思い出しながら静かにはしゃいでいた。はしゃぎたい気分であったから。

ーーー

「はーい!「人に化けたゴブリン12体の討伐」の任務終わりました~!これが証拠です。」


 そう言ってわたしはアイテムボックスから出てきたウサギさんにゴブリンの角を取ってもらい、カウンターに置く。

 ついでに、何となく狩ってきた猪さんも取ってもらい置いておく。

 ウサギさんにお礼のナデナデをしてからまたかえってもらった。


「はい、依頼通りのゴブリンの角ですね。今日もお疲れ様です。……その猪は、たしか、群れからはぐれて来てしまったやつが農場を襲っている!と別で依頼があったものでしょう。」

「え!?じゃあ、報酬マシマシ!?」

「はい。報酬が150シルバー増加です!」

「いよっしゃぁ!」


 150シルバー。日本円で言うと550円くらいだ。この世界の安いマフィンが20個買えるくらい。

 少ないと思いはしたけど、お得感もあってかその感情が紛らわされた。このくらいの方が貯金には最適だ。と思ってそのお金を受けとる。


「そして、今回の報酬が15ゴールドです。助けてくれた方の親族様がお礼金として2ゴールド足してくれました。」

「わぁ!やった!」


 15ゴールド、日本円で言うと1万5千円くらいだ。ゴブリンの群れにしてはボーナスが出たような十分すぎる報酬だ。

 

 それを受けとると先ほどとは違いずっしりと重みを感じる。

 元は13ゴールドでちょうど良い値段だなと思いやったのだが、まさかの棚から牡丹餅が降ってきた。つい嬉しくなって跳ねてしまう。


「では、また次に受けたい依頼があったら言ってください。」

「はーい。」


 そう言えば、助けられた方から。と言っていたが、きっとあの剣術が得意そうなあの子だろう。

 

 パッと見魔法使いをやっているように見えたが、剣士にならなくて良いのだろうか?と考えてしまった。

 私に言われたことならみんなやるし、あの子はどうなるんだろうか、と私は大きな期待を持った。

 

「また来ますー!」

「はい。では行ってらっしゃいませ。」


 なんだかウキウキな気分でギルドを出ることができた。

 次はどんな依頼を受けようか。




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