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竜皇といっしょ。  作者: 凍雅
第三部
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巫女姫シエル 1

第三部。シエルが竜皇に拾われて1年後です。

 うーん。

「どうした」

 神託の内容を書き付けた紙を見ながら考え込んでいたら、竜皇に声をかけられた。

「北神殿の神殿長、誰なんだろうなぁって」

「誰であっても勤めは変わらない。気にすることはない」

 そうなんだけどね。




 もうすぐ夏至になる。北神殿に神託を降ろしに行く日。

 私が去年、代理で巫女選びの儀式に出て、竜皇の所に連れてきてもらって一年。下働きをしていた神殿に、巫女姫として行くのは変な感じがする。

 去年の神殿長は、ちゃんと修行してる巫女じゃなくて年齢さえ満たさない下働きの子供を代理に立てたり、私が預かった竜髄石を盗ったりといろいろ問題があったから、辞めさせられたという話は聞いた。でも、ソイエさんもベルタさんも新しい神殿長が誰に決まったのかはまだ知らないって言ってたし、神殿とは普段はほとんど行き来がないから分からない。

 神殿長を決めるのは、なんだかいろいろ大変みたい。

 私を育ててくれた神殿長様が亡くなった後もしばらく次の人が決まらなくて、どういうわけか全然違う神殿から人が来たし。

 ソイエさんが言うには「オトナの事情が色々と」らしいけど。

 そして、また新しい神殿長を選ぶのにいろいろともめてるみたいで。

「神殿の内部のことについては、私も詳細がわかりかねるのですが、ことによっては神託を受けられる状態ではないかもしれません。というよりも、揉めている内容を知ったら竜皇がヘソを曲げて即座に帰りそうですわね。……竜にヘソがあるかは存じませんけれど」

 と、ソイエさんが言うくらいにはひどいことになってるみたいだし。

 下働きしてても、神殿や神官の上下関係がややこしいのはわかったてたけど、ソイエさんのお屋敷で先生に教わったら予想以上にごちゃごちゃしてた。

 当の竜皇にとってはどうでもいいみたいだけどね。

「ねー、竜皇」

「何だ?」

「なんで中央神殿には行かないの?」

 大陸の中央にあるセンテルは神官の国。そこにあるのが中央神殿。竜皇が大陸の端には行くのに、中央に行かないのは不思議。

「遥か昔、何代も前には降りていたが」

「どうして行かなくなったの?」

「当時の竜皇を怒らせた」

 ……え。

「な、何をやったの?」

 だって竜皇が怒るって。

「巫女姫を傷つけようとした」

 それだけ? それも確かによくないことだけど。

「当の巫女姫が止めなければ、大陸の中央には湖でもできていただろう」

 竜皇が怒って降りて来たフルヒリングの王都は、半壊したって聞いた。確かに怒れば大きな穴くらい空くかも。でもあれ? センテルって山だって聞いたような気がする。なんで湖?

「四方神殿に降りるのも、過去の巫女姫が望んだからだ。古い約束が生きているだけで、好きこのんでやっている訳でもない」

 竜皇はいつも通りに本を読みながら言った。

「その約束って変わるの?」

 素朴な疑問を口にすると、竜皇は本から顔を上げて真っ直ぐに私を見た。

「過去の巫女姫の想いを越える程に、今の巫女姫が望むなら」

 普段話す時とは違う。

 静かで、感情が見えない、だけど強い眼差しに射すくめられた。

 声が出なくなる。

 でも何か言わないと。

 え、えーと、えーと。

「な、何もないですっ。ただのちょっとした疑問だからっ」

 ふりしぼった声はなんだか変に上ずっていたような気がする。

 竜皇はふと目元を和らげて、いつもの優しい表情に戻った。

「もしくは、人が私を余程怒らせない限りは一応続くだろう」

 そう言って視線を本に移した。

 あー、びっくりした。

 最近あんまり慣れすぎてて、竜皇が神様だってこと忘れてたかも。

 竜皇が行かないのに、どうして中央神殿が一番格が高いのか聞こうと思ったけどなんか聞きにくい。というより、それも竜皇にとってはどうでもいいのかな。神殿って、竜皇の名前使っていばってるんだけど。


 四方神殿を含めて全ての神殿をまとめているのが中央神殿。

 ただ、四方神殿は、竜皇から神託を受けたり、巫女を教育したりと、他の神殿とは違う特別な仕事が多いから、地位も高いし中央から独立している面も多い。

 西神殿は、昔はアウテナの王様が神殿長もやっていたらしい。東神殿は、ベルタさんのアルカス公爵家の女性が神殿長になることが多いけれど、ちゃんと若いときから神殿に入って神官になる修行をするって言ってた。北と南では、若いうちに巫女として神殿に入って、巫女姫の候補になる年齢を過ぎた後は神官になるための修行をして、ずっと神官をやってる人の中から選ばれる――ことになってる。実際はそうじゃないみたいだけど。

 大きい神殿の長は中央神殿が決めるから。

 普通に考えたら、副神殿長が代わりになってもよさそうなんだけど、なんでだめなんだろう。

 新しい神殿長、誰だろうなぁ。知ってる人だといいような悪いような気がするし。




「……あれ?」

 神託の日当日。

 竜皇と一緒に神殿のテラスに降りると、意外な人が待っていた。

「確か南神殿の?」

 そこにいたのは、南神殿の神殿長。

 ここ、北神殿なのに何で?

 とりあえず今回は腰を抜かしてはいないみたいだけど、動けないところを見ると、足がすくんでいるのかも。

「御行幸、北神殿とその下に祈る者に代わりまして、南神殿神殿長トフ・ムラウがお礼申し上げます」

 ムラウさんは型通りに一礼するとちょっと困ったような顔で言った。

「北神殿長が定まらず、この度は私が代理としてお迎えにあがりました。なにとぞご容赦くださいませ」

「でも、南神殿からここまで来るのは大変ですよね。北神殿にも、女神官はたくさんいるのに」

「お気遣いなく。四方神殿と中央神殿の間は街道が整えられておりますので、旅はそれほど不自由ではございません」

 そうなんだ。それなら南神殿長に神託を伝えたらいいのかな。

 姿勢を正して、息を吸い込んだところで。


『巫女姫』


 なぜか竜皇に呼ばれた。

「なに?」

 振り返ると、なんだか機嫌が悪そう。

『帰るぞ』

 え?

「神託は?」

 まだ伝えてないのに。

『聞く気の無い者に伝える必要はない』

「そんな!」

 だって冬の初めから大雪になるんでしょ。秋までに屋根とか色々直しておかないと弱い建物潰れちゃうかも。道が通れなくなるから、食べ物とか薪とかも村ごとに小分けして用意しないといけないし。

「じゃあ、前みたいに床に書いていくの?」

『その必要もない』

 うぅ、なんでそんなに怒ってるの?

 ソイエさんが言ってた「竜皇がヘソを曲げる」ってこういうこと? 今まで神殿長が気絶してても、ちゃんと神託は降ろしてくれたのに。

 助けを求めて南神殿長を見ると、むしろ視線で私に助けを求められた。

 ああ、一緒に竜皇に反対してっていうのは無理だよね。だからってここで竜皇と普段通りにしゃべるわけにもいかないような気もするし。

 竜皇に振り向くと、カゴに乗りなさいって鼻先でうながされた。でも南神殿長の側から動かない。

 去年副神殿長に約束したもん。それに、他の神殿に行ったのに、育ててもらった北神殿にはなにもしないなんて、まるでいじめられた仕返ししてるみたいじゃない。

 ……確かにほんのちょっとだけ嫌がらせみたいなのはあったような気がしなくもないけど、あの神殿長はもういないし、巫女姫が決まったから巫女の修行してたお姉さんたちも神官になりたい人以外はもういないはず。お世話になった下働きの人たちに会う訳にはいかないのはわかるけど、表には行かないとみんなのところまで「元気だよーっ」ていう話も伝わらないし。


 それにええと、ええと。

 うう。


『……』

 しばらく黙ったまま見つめあっていると、竜皇は盛大にため息をついた。

『神殿長も選出出来ないような状態では、巫女姫を迎える用意もままならぬだろう』

「恐れながら、巫女姫の歓迎に付きましては、副神殿長シラヤを中心に通常通りに御用意を整えてございます」

 南神殿長が声を挙げる。

 あ、副神殿長は替わってないんだ。良かった。

 それでも竜皇は機嫌の悪そうなまま南神殿長に声をかけた。

『南神殿神殿長』

「はい」

『北神殿の状況の説明を』

「私の知る範囲に留まりますが、通常の儀式祭礼に付きましては副神殿長の代行により滞りなく行われております。神殿長の選出に関しましては、ノールド王国王都神殿エイフ・シリーと、センテル中央神殿ドロク・アイセの二方のいずれとするかで意見が分かれ、まとまっておりません」

 とりあえず、竜皇と南神殿長の話に耳をかたむける。

 あー、やっぱり他の所から来るんだ。前みたいに困った人じゃないといいけど。

『南神殿の者が何故此処に来ている?』

「それは……」

 竜皇に問われて南神殿長は言葉をつまらせた。

 視線を感じて顔を向けると、南神殿長は私を見ている。何か迷っているみたい。

 なんだろう?

『巫女姫がらみか』


 私?

 え、頼りないから選び直しとか?


 二人というか一人と一匹(一体?)を交互に見ると、南神殿長が言いにくそうに口を開いた。

「私だけでなく、東神殿長アルカス・ファエル、西神殿女神官長エベイン・アマリルも表に参っております」

 四方神殿の神殿長、というか竜皇の神託を受ける人全員が来てるの?

「誠に愚かしいことではあるのですが、巫女姫様の出自を巡り、流言がございまして」

 う。やっぱりどこの誰かわからないみなしごじゃ、巫女姫には認められないの?

「巫女姫様と同じ白い肌に黒髪と緑の瞳という姿は、大陸東方を中心に中部から西方まで、南と北の端を除く広い地域で多く見られます」

 そういえば北神殿は髪の色が薄い人が多い。だけど、ベルタさんやグレンさんは黒髪に緑の目だし、ソイエさんのお屋敷の人にも同じような色の人がいる。東の方では全然珍しくない。

「故に、巫女姫様と同じくらいの年頃で、行方の知れない者、生死が定かでない者、死に疑念が持たれている者などもございまして」

 南神殿長は一度言葉を切り、大きく息を吐いて続けた。

「己は巫女姫様の身内であると、名乗り出ている者が複数おります」


『下らぬな』


 竜皇は一言で切って捨てた。

 でも、私には訳がわからない。

 巫女姫の、私の身内って何?

 一応、お父さんとお母さんはどこかにいる……いたんだろうけど、私は全く覚えてない。、倒れているのを助けてもらった時も、身元がわかるような物は身に付けていなかった……ことになっている。

 それに、実際に家族がいたところで。

「巫女姫になる時に、家族と全部縁を切ることになっているのに、それが問題になるんですか?」

 巫女姫は竜皇の側にいて、神の言葉を伝える。だから、公平でないといけない。家族でも友達でも、特別扱いは出来ない。

 ソイエさんとか一部特別な人がいるようには見えるけど、例えば戦争に巻き込まれたり、誰かに殺されそうになっても、助けてあげられるとかというとそうでもない。わかっていても。

 だから巫女姫の身内でも、何か特別なことをしてあげたりはできないんだけど。

「それは十分心得ております。しかし、そうはいっても肉親の情があるはずと、何らかの恩恵を得られるはずだと考える者は少なくありません」


 でも、全然覚えてない人に家族だって言われても困るし。

 あ、向こうだって私が何も覚えてないから困ってるのかな。うーん。


 私が混乱してる間にも、竜皇と南神殿長の話は進んでいく。

『それで、巫女姫が何処の娘だと?』

「主だった所ではお三方。ノールド王国のエイフ侯爵の御子息の御息女、センテル中央神殿東方総括ドロク大神官の御息女。それに」

 南神殿長は一度言葉を切って、ふと私を見る。そして、視線を竜皇に戻して続けた。

「先のアウテナ王の王女、リュタスティア姫です」

 えぇ? 貴族のお嬢様でも、大神官の娘も無理があるのに、お姫様はもっと無理だと思う。

『……下らぬ』

 つぶやいた竜皇の言葉が、変な重圧になってのしかかる。

 私でも重く感じるくらいだから、南神殿長は……あ、顔色悪い。


「南神殿長」

「は、はいっ」

「私、今はこうして巫女姫としていますけど、一年前までは神殿の下働きだったんですよ?」

「下働き、で、ございますか?」

 南神殿長は驚いたようだった。そういえば下働きだったことまでは広まってないんだった。

 まぁいいか。

 神殿に拾われる前のことは知らないけど、牛や羊や山羊の世話をしてたり、庭の草むしりしてたり、厨房で野菜洗ったりしてたのに。前の神殿長様がいた頃は、巫女の修行のお手伝いとか手習いとかもしてたけど。

「巫女姫に選ばれる以前のことは、神殿で養育されていらしたとのみ、伺っております。ただ、事情はどうあれセンテル語のみをお話しになるということは伝わっておりますので、そこから高貴なお生まれではないかと考えるものは少なくありません」

 確かに私は大陸共通語のセンテル語しかしゃべらない。北方語もわかるけど、しゃべることはほとんどない。

 神殿ではセンテル語を使う。どこの国にも神殿はあるし、神殿が国同士のもめ事の仲裁をしたりするし、いくつもの国が話し合うときに集まる場所にもなるから、センテルの言葉が神殿と大陸中の上流階級の共通語になっている。私がソイエさんのお屋敷に行ったり、あっちこっちの神殿に行っても、ちゃんと言葉が通じるのはこのおかげ。

 神殿の下働きの人も一応センテル語を使うけど、地元の人同士は北方語を使ってた。それでもセンテル語がわかれば片言は通じるからあんまり不便はない。

 そういえば、「なまるから北方語は使わなくていい」って言われた気も。

 でも、そんなに珍しいことなのかな。だって、センテルで生まれ育ったふつうの人だって、そうなっていいはずなのに。


『巫女姫』


 竜皇にまた呼ばれた。前足が、籠を指してる。

 帰るよってことだろうけど。

「まだ帰りませんっ」

『進んで揉め事に巻き込まれにいくこともないだろう』

「だって神託が必要な人と関係ないもの。それに、違うものは違うってちゃんと言わないといけないし」

『放って置けばいい』

「誤解されたままで、勝手に家族だって名乗られてても困るもの」

 そんなの絶対嫌だし。

 竜皇はやっと、ものすごく渋りながらもあきらめてくれたみたいで、盛大にため息をついた。

『何か有れば直ぐに私を呼べ』

「はーいっ」

 と、返事はしたけどこれからどうしたらいいんだろう。

「南神殿長」

「はい」

「神託はどうしたらいいですか? あと、他に気をつけることがあったら教えてください」

 北神殿は竜皇が降りる儀式の間と、神官が集まる広間は扉一枚しかない。

 扉の近くには限られた人しか来られないけど、念のため少し離れて打ち合わせ。

「神託は広間の皆様へお願い致します。広間には、東神殿長、西神殿女神官長、北神殿の副神殿長を始め上位の神官、北神殿長の候補二人に加え、中央神殿と西神殿及びノールド王国王都神殿からも複数の神官が参上しております」

 う。なんか偉い人いっぱい。

「神託を受ける神殿長の中で、私のみが係わりの無い身ですのでお迎えにあがりましたが、広間では東神殿長が儀式の進行を勤めます」

 あれ。今、なんか引っかかることを言われた。

「南神殿長だけが係わり無い、って何のことですか?」

 北神殿のことなら、西神殿のアマリルさんも、東神殿のファエルさんも関係無いはずなのに。 

「巫女姫の出自を巡る思惑に、と申しましょうか……。西神殿女神官長はアウテナの王族です。また、東神殿長もアウテナ王家に縁のある方です」

「アウテナの王家と、フルヒリングのアルカス家に関係があるんですか?」

 大陸の西と東で遠いのに。

「四方神殿を擁する国同士は、概ね同盟関係にございます。その中でもフルヒリングとアウテナの友好関係は強く、東西の神殿を守る名家であるアウテナ王家とアルカス公爵家は、旧来より婚姻を含めた深い交流がございました。亡くなった王妃様もアルカス家のご出身で、姫君は王妃様によく似ておいでだったと聞いております」

 そういえば、アマリルさんとソイエさんも友達だって言ってたような。

 だから、どっちかっていうと茶色っぽい人が多い西の国で、お姫様が黒髪に緑の目なんだ。

「わかりました。ええと、北神殿長候補はどんな人ですか?」

「高位の女神官ですので装束でお分かりになるかと思いますが、ノールド王国王都神殿のエイフ・シリー殿は金の髪、センテル中央神殿ドロク・アイセ殿は黒髪です。どちらを北神殿長に就けるかを問われる可能性もありますが、なるべくお答えにならない方がよろしいかと存じます」

「それはどうしてですか?」

「エイフ・シリー殿はノールド王国侯爵の御息女、ドロク・アイセ殿はセンテル中央神殿東方総括を務める大神官の御息女でございまして……」

 さっき出てきた名前? そう言えば姓が同じ。初めて聞く名前がいっぱい出てきて頭がぐるぐるする。

 私の親だと言ってる人の姉妹と、親だって言ってる人の娘がいて、巫女姫の親族だと何か特権があると思ってる人がいて、えーとえーと。


 あ。


「あのう。もしかして、私が何か言うと、神殿長に決まった方の身内ってことにされてしまうんですか?」

「そのように考える者もあろうかと思います」

 う。それは困る。でも、黙ってたとしてももう一つはどうなんだろう。

「アウテナの人はどうなんでしょう」

「西神殿女神官長にうかがったところでは、神殿や貴族の一部に、巫女姫様を王女として祭り上げ、旧王家を再興させようとする方々があるそうです。ですが、現在生き残る中でもっとも王家に近い縁者である女神官長は断固として否定なさっています。また東神殿のファエル様も否定なさっておりますし、双方ともに巫女姫様がどのようなお生まれであったとしても、既に竜皇様のお傍にある以上係わりのないことだとおっしゃっております」

 ……頭が混乱してくるけど、とりあえず、三人の神殿長は、私を誰かにしようっていうつもりはなさそう、っていうことでいいのかな。

「このような状況ですので、無礼なことを申し上げる者があるかと思いますが、神殿長の取り次ぐもの以外は基本的に聞こえないことにして下さいませ」

「聞こえないって……」

「王など身分の高い方も、そのようになさるものですから。少なくとも、お答えになる必要はございません」

 そうなの? 無視するのも悪い気がするけど……。でも、確かに返事に困ることを言われそう。

「わかりました」

 私はもう竜皇のところにいるし、そもそも神殿に拾われる前のことは覚えていない。身元不明じゃ格好つかないから、どこかのお嬢様とかお姫様っていうことにしておけっていうのはわからなくもないけど、勝手に押しつけられても困る。それに、今更そういう事にしたって、そんなの本気で信じる人なんかいない気がするし。

 うーん、どうしたらいいんだろう。

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