表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜皇といっしょ。  作者: 凍雅
第二部
20/41

誕生日?

 いつも通りのソイエさんのお屋敷で。

「そういえば、姫のお誕生日はいつお祝いしましょう?」

 そう言われて、ちょっと困った。

「お誕生日わからないから……」

 だって、神殿に拾われる前のことは覚えてないし。

「ええ。ですから、お誕生日ではなく『お祝いする日』をいつにするか伺っておりますの。神殿で、仮に誕生日にしていた日はありませんか?」

 うーん。

「一応、拾ってもらった日を基準に年を数えてたけど」

「いつですか?」

「夏至くらいです。拾われたのがお祭りの何日か前で、目が覚めて何も覚えてないってわかったのがお祭りの前の日だから」

 そう答えると、ソイエさんはすごく残念そうな顔をした。なんでだろう?

「もう過ぎていますのね。次は大分先ですし」

「それがどうかしたの?」

「内輪でだけでも、お祝いの体験が出来ればと思ったのですけれど」

 なるほど。お勉強のことかな。

「でも、ソイエさんのお誕生日じゃダメなの? あ、ソイエさんなら盛大に……」

「私の誕生日は来ないことになっておりますので」

 にっこり笑ってるのに目が怖い。

 私、なにか悪いこと言ったのかな……?

「姫が怯えている」

「あら、いけない」

 ウォレフさんがぼそっと言った一言に、おほほほほと笑ってるけど、さっきのはちょっと怖かった。

 でも、誕生日が来ないって、なんで?

「ソイエさんは、お誕生日のお祝いしないの?」

「両親が亡くなってからは、大きな事はしておりませんね。それでも数年前までは内輪で祝ってはおりましたが、最近は、祝う必要もありませんから」

「なんで?」

「いろいろと」

 いつもいろんな事を教えてくれるときと同じ様に、笑ってるのに。

 なんだか寒い気がするのは、気のせいかな?

「ある程度の年齢になると、あまり祝わなくなるものなのです。特に女性で未婚の者は」

 と、説明してくれるウォレフさんの隣で。

「嫁き遅れてるのは、誰のせいよ」

 低く呟いて、殴られるととっても痛いらしい扇子を構えているソイエさんがいて。

 相変わらずなかよしだなぁって、思ったりした。




『誕生日、か』

「うん」

 お城に帰って、お茶を入れて、お土産にもらったケーキを食べながら、竜皇にいつもの通りソイエさんのお屋敷でのやり取りと話した。

 お誕生日の話をしたら

『……やはり、あの家に預けるのは、教育上良く無い気がするな』

 とか呟いたりしている。

 何でだろう。

「ソイエさんみたいになりたいなーって、思うのに」

『それだけはやめておけ』

 なんで、竜皇もウォレフさんも、そう言うんだろう。

 あんなに、美人で強くてかっこいいのに。

『そういえば、祝っていないな』

「え? いいよ。だって、神殿で巫女になるお祝いしてもらったし」

『それは、神殿を去る者への送別だろう』

 ……そうだけど。

「竜皇のお城でいっぱいぜいたくしてるし」

『それとこれとは別だ』

 えーとえーと。

 別にお祝いして欲しくて、こんな話したわけじゃないのに。

『とはいえ、お前は相変わらず遠慮するのだな』

 そんなふうにうろたえてるのも、竜皇にはお見通しだったみたいで。

「だって、ソイエさんもある程度の年になったらお祝いしないって言ってたし」

『それは、あれに妙な拘りがあるからに過ぎない』

 こだわり、って何だろう?

『それに、誕生日は己が生まれたことを祝うだけではなく、今まで生きてこれたこと、生かされてきたことを感謝するものだ』

「生かされて……?」

 竜皇は穏やかに目を細めて言った。

『人は一人では生きて行けないのだろう? それまで支えてくれたものたちに感謝する日でもある』

「ふうん」

 そっか、大切な日なんだ。

「でも、お祝いとかいらないよ。だって、竜皇に名前もらったし。巫女にしてもらったし、十分」

 そう。もう今までの分も、この先の分も一度にもらっちゃったくらい。

『だからお前は欲がなさ過ぎるというのだ』

 うー、でも欲深いよりはいいと思うの。

『来年は、そうだな。何か祝いを考えておこう』

 そう言って、竜皇は少し顔を上げた。

 と。

 私の目の前には白と緑のかたまり。

 じゃなくて、突然現れたぼんやりしたものが、直ぐにはっきりと見えるようになった。

 白い花と、緑の葉っぱ。

 白くて大きな花の、花束。

「うわぁ」

 カップを置いて手を伸ばすと、花束は私の両腕の中に納まった。

『今はそれでよいか?』

「うん、うれしい!」

 花束を抱きしめる。

 北にあった神殿の周りには、大きな花はあんまり咲かない。

 だから、ソイエさんのお屋敷に行って、いろんな色の大きな花がいっぱい咲いてるのにすごく驚いた。

 でも、一番白い花が好き。

 特にこの花は気に入ってたんだけど、何で言ってないのに知ってるんだろう。

『そのうちに、花が咲く場所に連れて行ってやろう』

「うん。竜皇、ありがとう!」

 お誕生日じゃないけど。

 今こうして、竜皇のそばで、こんなにやさしくしてもらえることに。

 ここにこうしていられるきっかけを作ってくれた人に。

 みんなにありがとう。

ソイエは色々難しいお年頃なので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ