第2話 ユキ
俺は幸。
いつもながらニートをやっている。
やるとこがないからいっぱい寝た。
夢をいっぱい見た。どうやら俺は夢を見やすい体質らしい。
それで毎日、夢の中を探索しまわった俺は勢いで夢魔ってやつと激闘を繰り広げついにぶっ倒してしまったわけなんだが。
どうも人はみな自分の中に夢魔ってやつを飼っているらしい。
いい夢を見たりおそろしい夢をみたり意味不明な夢を見たり根本は全部夢魔のしわざらしい。
まあ俺は夢魔をぶっ倒してからも夢を見れているわけだが、部屋がひとつあるだけでしょぼいんだよなー俺の夢。
しばし月日は流れ
今日は明晰夢研究所ってところにきた。
久々の外出だ。
研究所かー、夢を見ればパパッとお金をもらえるらしいが怪しい爺さんに身体弄られたり変な薬飲まされないか心配だな。
「キミが電話をくれた光田幸くんか」
「は、はいそうですが」
「うむ。こっちについて来たまえ」
俺はその女性に施設の中に案内される。
てっきり俺の中の勝手な、研究のイメージで白髪のイカれた爺さんが出てくるかと思っていたが、俺の目に現れたのはパツキン長髪のすらっとした研究者っぽくない垢抜けたお姉さんだ。割とタイプかも。
「うむ。まずはよくきてくれた。が、私も忙しいんでな。このところバイト代目当てにくるしょぼい夢しか見れない輩が多くてな」
俺のことかな?
「悪いがさっそくそこの用意した部屋に入り中にあるベッドで寝てくれたまえ。夢を見れないようなら私が途中で外的刺激を与え夢を見れるように促すからリラックスして眠ってくれ」
「私が欲しいのは明晰夢だからな。期待はしていないが頑張ってくれたまえ」
「リラックスしながら頑張るなんて器用なことできませんよ俺」
「ははは、これは悪い。さっきのは聞かなかったことにしてくれ。キミは少しおもしろいやつのようだな。期待しているよ」
「これは前払いだ。ちゃんと払ったからリラックスして眠ってくれよ」
俺は薄い封筒を細い指の手渡しで受け取る。
「……前払いとは気前がいいですね! 良い夢が見れそうです。つっても俺の夢はいつも同じやつですけどね」
「ん? それは」
そう言い残して俺は用意されていた部屋に入って行った。
「んー小綺麗すぎて俺の趣味じゃないけど……まあ寝れるっしょ」
「昨日から寝てないし」
俺はドスンと高級そうなベッドに身体ごと倒れ込む。
このふんわり枕は邪魔だな……。
枕をポイと床に放り投げる。
ふぁー……おやすみ
俺は欠伸を出し切ってそのまま眠りについた。
─ ─────────。
またここかー、いい加減することなくて飽きてきたなー
これなら現実の方がマシかもな
「これは……!? そんなバカな!!! あり得ない……」
「おはようございまーす。あのーお姉さんもうお金もいただいたし帰っていいですか。夢もちゃんと見れてたでしょ?」
「待ちたまえ!!! ……ハァハァ……!!!」
ダンダン、と靴音を跳ねさせ走り寄ってきたパツキンのお姉さんは勝手に帰ろうとした俺の腕を強く掴む。
「今日から私がキミの上司だ!!」