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 丁寧に整えられ、棺に納められたセツを、ロコンは不思議なものを見るような目で見つめた。そっと伸ばされた幼い手が、頬にちょっと触れてすぐに引っ込められた。


無機質で硬い、それでいてどこか柔らかさを含んだ冷たい体。それが自分の母親だなんてとても信じられなくて、ロコンは自分を黙って見下ろすレッカを見上げた。瞳によぎる怯えを見て取って、レッカは意識的に笑顔を浮かべ、しゃがみ込んだ。


「おかあさん……」


 呟いた声を拾って、レッカの手がロコンの頭を撫でる。ただただ戸惑うロコンは、傷だらけの手で服の胸元を握り込んだ。


「しんだの?」


 時々、道端に転がっていたネズミの死骸に似た感触と温度。いつか母親に教えられた“死”というものにとてもよく似ていると、ロコンは思った。レッカが苦い顔で頷くと、少年は「そっか」とうつむいた。


 本当のところ、ロコンは母親の死を知っていた。体が丸ごと残ったままのネズミだって、冷たく硬くなって死んだのだ。虫だって、半分に切ってしまえば動かなくなる。人間がそうでない保証なんてどこにもないと思いながら、それでもセツだけは特別なのではないかと思っていた。でも、今目の前で横たわるセツは、もう動かない。死をよく知らないロコンでも、母がもう帰らないことは理解できた。


 ふわりと甘い香の香りがロコンの周りの空気を揺らした。幼い体をぎゅっと抱きしめたのは、ルイスだ。


すぐにロコンの肩口に温かく湿ったなにかが押し付けられ、鼻水を啜るみっともない音が耳に届いた。レッカは困った顔のまま、呆然とするロコンと涙を流すルイスを見た。


ルイスが涙もろいことは前々から知っていたが、ここまで素直に感情を露にするのは珍しい。いつも涙で目を潤ませて、鼻の頭を赤くしてはいるけれど、こんな風に泣くところなんて見たことがなかった。


「泣かないで」


 ロコンの幼い手が、ルイスの脇の辺りをポンポンと叩く。拙い慰めに、ルイスはますます涙が止まらなくなった。温度か感触を確かめるように、ロコンは一度強くルイスを抱きしめた。それから、やんわり体を離して、セツの棺に近付く。そっと触れた頬はやっぱり少し硬く、真冬の凍えた指先より冷たかった。


今日が日曜日だったとは(投稿するの忘れてた)←


お読みいただきありがとうございます。

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