夕暮れの川で
夕暮れの川縁で、ロコンはぼんやりと空を眺めていた。カッと目に痛い朱色と、黒と。ほんのり混じった薄墨にわずかばかりの青を入れて。水を垂らしたように滲む雲は、まるでロコンの心を映したようだ。
「ななつのひかり、あざやかに……ひかりかがやく、つきのよる……たっときそらに、ほしはふる……」
「ながれるほしは ななつぼし。くれのあさひをあびながら よぞらにかかるはしとなる」
口ずさむのは、幼い頃に聞いた父の故郷のわらべ歌。曖昧なメロディーを思い出し、つっかえつっかえ歌っていると、不意に横に腰かけた人物が攫うように続きを歌った。
「月虹の歌だね」
「げっこー?」
カエル?と首をかしげたロコンに、その人はふっと唇を綻ばせた。
「月の光でできる虹のことだよ。俺の……母の故郷の歌だ」
彼は、抱えた膝に頬をこすりつけるようにロコンを見た。その目をまじまじと見て、ロコンはあることに気付く。
「お兄ちゃん、いつから……」
「一緒においで、ロコン」
差し出された手を、少年は取ることができなかった。
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