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機械仕掛けの魔法世界で僕は一人  作者: やみの ひかり
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02話 はじまりのまじわり

 古代の魔法を使う隠れ村の牢屋に捕まっり、ウサギにされてしまった奥田ゆずき。村の長老森野まつに、仲間になるなら解放してもらえることになった。仲間になる条件は、魔法が使えること。森野くるみに魔法を教わり、解放してもらえることになった。


「良いかい。町に戻ったら、この村のことは絶対に誰にもしゃべるんじゃないよ。約束できるなら帰したあげよう。もし秘密を誰かに話したら、ウサギにして食べるからね」

「絶対にしゃべりません!!」

「よし!! あんたは魔力が強い。もしもの時のために、コントロールを覚える必要がある。家では柔らかいもので練習しな。もう日が暮れる。両親が心配する」

「僕には母しかいないんです。父は僕が小さい頃にいなくなってしまって」

「そうかい。じゃあ、なおさら心配しているだろう。くるみにお礼を言って帰りな」


「アシガツカナイプール」


 まつが呪文を唱えると、ゆずきの体から毛が無くなり、元の人間の姿に戻った。そして、森野くるみに森の入口まで送ってもらった。


「くるみさん。ありがとうございました」

「ううん。私のせいだから。それよりも早く帰らないと日が暮れるよ」


 ゆずきは、くるみにお礼を告げると家へ帰った。家に帰る頃には日が沈み、すっかり暗くなっていた。到着すると、パトカーが止まっていて、ひと騒動起きそうになっていた。母がゆずきを見つけると、駆け寄ってくる。


「どこ行ってたのよ!! 心配したんだから」

「ごめんなさい」


 母は泣いていた。二人で警察に頭を下げ事無きを得た。


 次の日、ゆずきは学校へ行くことにした。古代の魔法を使えたことで少しだけ自信がついた。


(もしかしら、機械の魔法も使えるかもしれない)


 と考えたからだった。昨晩、ゆずきはクッションで何度も魔法の練習をした。学校へ着き、上履きに履き替えようとしていると、


「おい!! なんで学校来てんだよ。昨日は授業が進んで快適だったな」


 同じクラスの相馬りゅうたに朝から絡まれる。ゆずきは顔を下に向け、挑発しないように教室へと向かった。教室に入るとゆずきの机は落書きされ、花瓶が置いてあった。


「くくくくく」


 後ろからりゅうたの笑い声が聞こえてくる。おそらく、りゅうたの仕業だろう。


(学校に来なければ良かった……)


「誰がやったのよ!! 私も手伝ったあげるから、落書き消すわよ」

「ことねさん。ありがとう」


 クラスメートの姫野ことねが、ゆずきの変わりに怒ってくれた。彼女は風紀委員をしており、正義感が強い。ゆずきは、何度か助けてもらったことがある。ことねがいなかったらゆずきはとっくに不登校になっていただろう。バケツに水を汲み雑巾を持って来て、一緒に落書きを消すのを手伝ってくれた。


「ごめん」

「もっとシャッキっとしなさいよ。だからイジメられるのよ。わかった?」

「う、うん」


 その日の一限目は空飛ぶ授業で、校庭で山本くにお先生が生徒達に、


「はいはい!! 集まって!! 今日は空を飛んでもらう」


 そう言うと生徒達に魔法機械のベストとヘルメット、プロテクターが配られる。


「まだ君達は子供なので、安全のために1.5メートルしか飛ばないようになっているし、スピードも出ないようにしてあるから安心して。安全のためにヘルメットとプロテクターは絶対つけろよ」

「はーい」

「はーい」

「はーい」


 生徒達は装着すると、ふわふわと浮かんで、思い思いに楽しんでいる。そんな中ゆずきはまったく浮かない。目の前でりゅうたが宙返りを繰り返し、ゆずきを挑発してくる。


(古代の魔法は使えたのに。やっぱり、機械の魔法は僕には使えない)


「きゃああああ!!」


 叫び声が聞こえたので見てみると、ことねが高々と空中に飛んで行く。空飛ぶベストはことねのコントロールを離れ、勝手に動き出した。


「これはまずいぞ」


 山本先生は急いで、大人用の空飛ぶベストを着ると、急いで飛び出して行った。


「助けてーー!! 私高いところダメなの!! きゃああああ!!」


 すごい速さで飛んで行くことねに、山本先生は追いつけない。


 ドン!!


 木々の間を追っている間に、曲がり切れずに木に激突し、


「く……」


 山本先生は気絶してしまった。


「まずいよね……」

「……大丈夫なの?」


 クラスメート達が騒ぎ始めるが、なにも出来ずにみんな見ていることしか出来ない。


 パリーーン!!


 校舎の窓ガラスを割ってことねが校舎に入って行った。ゆずきは、


「今度は僕がことねさんを助けなきゃ」


 ことねを追う。


 学校に入ると、廊下にドアなど机などが散乱していた。


「きゃーーー!!」

「うわっ!!」


 声のほうに向かって走るゆずき。


「あっちのほうだ」


 駆けつけてみると、そこにはもうことねはいない。びっくりした生徒が倒れていた。


「大丈夫ですか? あのー。どっちに行ったかわかりますか?」

「多分、屋上のほうに」

「ありがとうございます」


 屋上の階段を駆け上ると、ドアが壊れて開いている。


「いた!!」


 屋上に出ると、上空にことねを発見。ゆずきは両手を広げ、


「イナカノハナビ」


 両手が光出すと、飛んでいることねの動きが止まった。


「ゆっくり落ち着け。僕にだってやればできる」


 自分に語りかけながら慎重に引き寄せると、ベストを脱がせて、ベストに魔法を集中させる。


 バチン!!


 ベストから煙が上がる。動力部分を壊すことに成功した。


「はぁはぁはぁ。うまくコントロール出来た。夜の練習の成果だ。ことねさん大丈夫!?」


 ゆずきが話しかけるが、ことねは気絶していた。


「ほう。君は魔法が使えるのか」

「!?」


 声の方を向くと屋上のフェンスの上に黒いマントで全身をおおう男が立っていた。


「まだ覚えたてみたいだが、潜在魔法力が高いな」

「だ、誰ですか!? このことは。あれ? いない」


 マントの男の姿が無い。


「わかっている」


 知らない間に後ろに立っているマントの男。


「う……」


 ゆずきは男から発せられるまがまがしいオーラで、全身が硬直してしまう。


「刑務所送りにされちゃうからね。君は魔法の才能があるな。でも今の君の魔法の使い方じゃあダメだね。本当の魔法はもっと強いよ。誰からも支配されることは無い。究極のパワーが得られる」


「ミダレガミバッハ」


 バチバチバチバチ


 空から稲妻がマントの男に向かって降ってくる。


 バチイイイン!!


 男はマントをひるがえすと、稲妻を受け流した。焦げ臭い匂いが立ち込める。


「ゆずき!! そいつから離れて!!」


 見上げると、とんがり帽子をかぶり、顔をスカーフで隠す少女がほうきにまたがり降りて来る。ゆずきの前に立ち、マントの男の前に立ちふさがる。


「誰?」

「私よ。森野くるみ」


 振り返り、ゆずきにスカーフをずらして顔を見せる。


「危ないじゃないか。そんなにあわててどうしたんだい?」

「あなた闇の魔法使いでしょ?」

「ふふふふふ。闇の魔法使い? 陰と陽、すべてのことわりを知って本当の魔法使いだ。少し魔法をかじっただけの小娘にはわからないだろう」


 タタタタタ


 階段の方から誰かが登ってくる音がする。


「ゆずきくんというのか。また会おう」


「ムグリゾワカ」


 マントの男が唱えると、黒い霧が立ち込めて、男を包み込むと、霧と共に消えていなくなった。


「人が来るから私も行くね」


 ほうきにまたがると、くるみは飛び去っていった。先生達が駆けつけると、


 パタン


 極度の緊張が解けたゆずきは、その場で倒れ込んだ。


「君!! 大丈夫か!?」

「……」


 薄れゆく意識の中、


(闇の魔法とはなんだろう?)


 闇の魔法について考えていた。

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