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機械仕掛けの魔法世界で僕は一人  作者: やみの ひかり
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最終話 始まりは朝

 奥田ゆずきと、森野くるみ、姫野ことね。そして、カラスに化けた倉谷らいちは、3人を抱えきれずに力尽き、空から落ちていた。


「いやああああああ」

「うわああああああ」

「きゃああああああ」


 上空を見上げると、ゆずきが発生させた黒い球体は、ゆずきが目覚めたことで崩壊し、散り散りになり消えていく。


 ヒュウウウウウウウウ


 カラスと、三人は地上へ落ちて行く。


「アシガツカナイプール」


 森野まつの唱える声が聞こえると、


 ボスン


 光の網に包まれ落下が止まった。森野まつが、地上に向かい入れる。


「おばあちゃん!!」


「パチパチアメ」


 カラスに化けたらいちが唱えると、カラスの羽が飛び散り、人間の姿へ変わる。


「ふう。死ぬかと思ったぜ」

「本当よ。もっと頼りになると思ってた」

「くるみだってそうだろ。空飛ぶ魔法が、長い棒みたいなものが無いと飛べないなんて、思ってもみなかった」


 くるみとらいちが口論をしている後ろで、ゆずきは辺りを見回す。


「なんだこれ? どうしてこんなことに?」


 ゆずきが目を覚ましたことで、世界から闇が消え、晴れ渡っていた。しかし、世界の歪みは残ったまま。ぐちゃぐちゃになった世界がゆずきの目の前に広がっていた。


「説明は後。一度、隠れ村に帰ろう」


 まつが先頭を歩いていく。倒壊したマンションの103号室のドアを開けると、その先は空に浮かぶ電波塔の中だ。外を眺めるゆずき。


「あの…… これを僕が?」

「そう。内に秘めた巨大な魔力が闇の力で暴走した」


 『STAFF ONLY』と書かれた扉を開けると、海岸に落ちた一枚のドアに繋がる。


 ザパアアン ザパアアアン


 海岸にある洞窟へと入っていくと、隠れ村に続く洞窟へと繋がっていた。


「ここは?」


 ことねが隠れ村を見つめ問う。


「そうか。あんたは初めてだったな。有事の時はしょうがないだろう。ここは古代の魔法を使う隠れ村だ。誰にもしゃべるなよ。うさぎにして食べちゃうからね」

「ひえ!?」


 まつが、村のしきたりに沿ってことねをおどす。


「疲れただろう。ゆっくりしていきな。ただし、家の外でだけどね。家の扉は別の場所へと繋がってしまっている」


 隠れ村も世界と同様に、地面がめちゃくちゃで、地面に開いた穴からは空が見える。家の外では、村人が布でテントを作って生活している。


「あの…… これは直さないんですか? こことここが歪んでる」

「ゆずき!? まさか空間の歪みが見えるのか?」

「うん」


 おどろくまつを後に、ゆずきは両手を動かし始める。


「ここがこうで、ここがこう」


 まつの家の周辺の歪みが直っていく。まつの家の前に立ち腕を横に、


 スウウウウウ


 スライドさせる。


 ガチャ


 扉を開けるゆずき。


「繋がったよ」

「ゆずきは、光と闇の魔法を知ったことで、世界のことわりを理解してしまったんだ。これは神の領域……」

「中も直すからちょっと待ってて」


 家の中の空間も正しく直す。それから、ゆずきは二日かけて隠れ村の空間の歪みを取っていった。


「ありがとう」

「これで穏やかに暮らせる」


 村の人から感謝の言葉を告げられるゆずき。それを笑顔で返す。


(世界を歪ませてしまったのは僕なのに)


 一仕事終えたゆずきが、ベンチに座り休んでいると、


「お疲れ様。はいこれ」

「ありがとう」


 くるみが飲み物を持って来てくれた。


「感謝の言葉が痛いよ。やったのは僕なのに」

「ゆずきだけの責任じゃないわ」

「そうなのかな? 僕があの時拒んでいたら、こんな世界にはならなかった」

「そうせざるを得なかったのよ。これからどうするかを考えましょう。私と一緒に」

「うーん…… くるみさん。ありがとう」


 くるみに向かってゆずきは微笑む。


 ポッ


 顔が赤くなるくるみ。そっぽを向く。


「どうしたの?」

「ううん。何でもない。ゆずき変わった。すごく大人っぽくなった」

「そう? いっぱい寝たから背が伸びたのかもね。成長期だし、寝る子は育つ」

「それもあるけど。前はもっと弱々しかったのに」

「今でも変わんないよ。僕は弱虫だから。でも、心が前より落ち着いてる」


 くるみは振り向くと、


「くるみさん?」

「ゆずき……」


 ゆずきと見つめ合う。


「なにやっての!! ゆずきお疲れ様!!」


 そこへことねがやってくる。くるみとゆずきは急に恥ずかしくなり、お互いにそっぽを向く。


「くるみさん。私のゆずきを取らないでくれる!!」

「取って無いよ。少し話をしていただけ。ねっ」

「う、うん。これからどうしようか話してたんだ」


 二人の顔をうかがうことね。


「本当に?」


 ゆずきが立ち上がる。


「僕は旅に出ることにしたよ。世界を旅して歪みを直す。それが僕のつぐないだと思う

んだ」

「私も行く!!」


 ことねが手を上げる。


「何言ってるのよ。裏の世界で育った私が行くべきよ。あなたは、表の世界に帰りなさい」

「何言ってるの? 今こんな世界になって、表も裏も関係無くない!?」

「むう!!」


 にらみ合うくるみとことね。


「まぁまぁ。二人とも落ち着いて」


「落ち着いてるわよ!!」

「落ち着いてるわよ!!」


 二人をなだめていると、


「ゆずき!! ちょっと来な!!」


 まつに呼ばれる。二人を後にするゆずき。


「はい。なんでしょう?」

「あんたはもう大丈夫だね。その顔見ればわかる。男になったね。世界を直しに行くんだろう?」

「はい。何年かかるかわからないですけど、命ある限り世界の隅々まで直そうと思います」

「いつ行くんだい?」

「明日の早朝に、みんなが寝てる間に行こうと思います。さよならは言いません。くるみさんとことねさんがついて来てしまうと思うので」

「それが、ゆずきが決めたことなんだね」

「はい」




 翌朝、まだ日が昇らないうちに、ゆずきは隠れ村を旅立つ。一人瓦礫の町で、テントに眠る母の寝顔を眺めていた。寝ている母のかたわらに、手紙をそっと置く。


「さよならお母さん。絶対に帰って来る。それまでお元気でいて」


 物音に気づき、ゆずきの母は目を覚ます。


「ゆずき?」


 そこにゆずきはもういなかった。母のまわりの空間の歪みは直され、朝の静寂があたりを包む。


 チュン チュン




 母に手紙を渡し終えたゆずきは、トボトボと瓦礫の町を歩いていた。


「まずは、人がいっぱい住むところを直していこう」

「ちょっと待ちなさい!!」

「くるみさん!?」


 振り返ると、くるみが大きな荷物を背負って立っていた。


「私も一緒に行くわ。ゆずきだけじゃ心配よ」

「良いの? いつ帰って来れるかわからないよ」

「良いの!! だって、私あなたのこと好きかも……」

「え!?」


 モジモジ


 顔を赤くして照れるくるみ。


「うそ!! 冗談に決まってるじゃない」


 ゆずきに顔を見せないように、前を歩くくるみ。


「さぁ。世界を救いに行くわよ!!」

「うん!!」


 ゆずきとくるみの旅が始まる。






 村に伝わる古い予言。


『青き心を宿す強き者。新たな世界へ導き。そして救いの旅に出る』






「ちょっと二人とも待ちなさいよ!! 私も一緒に行くわ!!」


 ことねが、二人に駆け寄って行く。


 三人の世界を救う旅が、今始まる。




 終わり

あとがき


 「世界は僕を一人にする」を最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。


 この作品は、僕の二作目になります。こんなひよっこの僕の作品を、最後まで読んでくれた読者に感謝を申し上げます。本文下にある。☆☆☆☆☆で評価・感想お待ちしています。賛否両論あるかと思います。率直な意見お待ちしています。


 改めて、最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。


 良ければ、作者名「やみの ひかり」で検索してみてください。三作目も構想中です。それでは、次の作品も読んでもらえることを、心よりお待ちしております。


 ペコリ

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