会議
一先ず国営放送を初め民放には報道管制を敷いた。そして国家非常事態宣言の次のランクである国家緊急事態宣言を発令した。これにより、買い占めの制限をはじめとする国民の私権制限により混乱を押さえることが出来る。
そして領海外の調査である。今のところ陸地や島の報告は上がっていない。そこで調査隊を派遣し、この世界の生態系などの情報を集める。そしてその土地に人が住んでいない場合国際法に乗っ取って我が国の領土にすればいいし、人が住んでいるならば何か聞き出せばいいし、国家が存在するならばこの世界の足掛かりとして国交を結べばいい。
「出来れば調査隊を編成したいな」
「既に第三空母打撃群を西側に派遣、東側は第1軽空母群による偵察の指示を出しています」
「用意がいいな」
「近海は海上警備隊と沿岸戦闘艦でローテーションを組んでいます」
「非常事態宣言ではないので、もう少々すり合わせが必要ですが」
防衛大臣の発言に被せんばかりに断りを入れたのは国交大臣だ。
海上警備隊は有事は国防軍の指揮下に入るが、元は国交省の管轄でありこの様に静かな縄張り争いが頻発する。
「不審船と思われし船舶についてはマニュアル通りに対処させています。しかし、漁船等の民間船や公船に関しては臨検と称して、情報収集をさせるつもりです。言葉が伝わるかは分かりませんが」
不審船の定義は他国のそれに比べ緩い。
一切の通信に応じない、船体に重大な損傷が見受けられないのにもかかわらず停船命令に従わない等々…
大国である為、いつ何処で情報を盗み出しているか分からないためだ。
「一先ず議案の区切りがつきましたので、三十分の休憩に入ろうと思います」
彼らはもう二日ほど徹夜しており、家に帰っていない。仮眠室に横になったと思ったらすぐに会議が再開される。
そして議案はまだ片付くようには思えない。国交を締結した後のマニュアル作りなどが残っているからだ。
この世界に来てから好物になったカフェオレを口にしながら、俺は国家の命運という先の見えないトンネルを歩み続けることを、もう何度目か分からないが再認識した。
次回から事態が急変します