6.女官は聖女の心を思う
性懲りもなく6話目の投稿です。
今回からベンジェフ騎士団長視点での進行になります。一応主人公(ヒーロー的な意味で)?ですので。
俺の妹であるマリーに手紙を送ってから今日で六日目になる。
今朝、王宮内にある聖女様の私室に隣接する護衛騎士用の部屋に妹の友人であるバイセ夫人、ヴァリロッサ夫人、ヴァーバラ夫人、エルナ嬢にセドリック・・・いやドリー夫・・・人?達が来てくれた。
どうやらマリーから信用の置ける人員として来てくれたらしい、私としても見知っているし何よりも個人的も信用できる面子で本当に助かった。
これで聖女様の身の回りのお世話は問題無いだろう。
力仕事に関しては引き続き護衛騎士内で持ち回りでお手伝いすれば良いだろう。
ところで・・・
「バイセ夫人、お尋ねしたいのだがマリーの姿が見えないんだが何かありましたか・・・?」
バイセ夫人にマリーの事を尋ねてみたすると・・・
「ベンジェフ団長、その事で大変申し上げにくいのですが・・・」
気まずそうにバイセ夫人はマリーについて説明してくれた。
彼女によるとマリーは本来貴族の義務教育として受けている筈の女官としての勉強をしていなかった事、その事をエノール女官長が知ってしまい、現在数日中にそれなりにする為マリーを拉致していったという事だった。
俺は思わず頭を抱えてしまった。
自分の妹が男勝りとはいえ本来貴族令嬢が学ぶべき事を学んでいなかった事にショックを受け、その事を知らずに兄貴面をしていた自分に呆れかえり、女官長に余計な仕事を増やしてしまった事に大変申し訳ない気持ちになってしまった。
・・・ずっと落ち込んでいる訳にはいかない、今から五人を聖女様に紹介し、そして聖女様の現状を五人に見てもらった後、このまま女官として残ってくれるか意思確認をしなければならないのだ。
「マリーの事に関しては、こちらの落ち度以外の何ものでもないのだから気にしないでくれ。それよりも今から聖女様に会っていただく、その上で君たちには今後聖女様の女官に就くか判断して欲しい。ただ、もし辞退する場合は王国からの発表があるまで他言無用でお願いしたい。」
「分かりました。ですが私達はその任を受ける為にここに来たのですよ?」
「そっ、そうですっ!ぁ・・・とそれに多分ですけど、今聖女様は凄く苦しんでいると思うんです」
今の俺達にとってはとても頼もしく感じる言葉をバイセ夫人が言ってくれた。
その事を肯定した後、エルナ嬢が気になる事を言った。
「聖女様が・・・苦しんでいる・・・ですか?」
「はっ、はい!ぇと私達は、聖女様がどんな風に元の場所で暮らしてきたかとか、こっちに連れて来られる前はどんなお姿をしていたのかとか分からない訳ですし・・・その、自分の事を全く解って貰えない解ろうとしてくれないのっ・・・て、すごく怖くて・・・苦しいと・・・思いますぅ」
・・・驚いた。今回の聖女様の召喚に関わった殆どの人間は、建前で聖女様の事を考えるフリをしていた。
だが目の前のこの子はどうだ?聖女様の事を自身が解っていないとに言い、解っていない事をそのままに解ろうとしないことで、更に聖者様を苦しめているのだと言った。
「だから私達はぁ、聖女様の事をもっっと知ってぇ、少しでもぉ、聖女様の御心のぉ、支えになればと思っていますぅ」
「姉さまの言う通りですわ。女官の仕事とは只身の回りの事をお世話するだけではありません。使える方の御心を守るのもその責務と考えていますわ」
オールデン伯爵の姉妹夫人の二人もその考えは同じらしく、そして・・・
「騎士団の皆様が聖女様のお身体を守る様に、私達も女官として聖女様の御心を守る。まずはその為の態勢を創らないといけないわね」
一際野太い声でセドリッ・・・ドリー夫人も答えてくれる。
聖女様が召喚されて以降これほど迄に頼もしい援軍は無いなと思いながら、彼女らの心意気に私は感謝した。
そして、俺と五人の女官は聖女様へのご挨拶として私室を訪ねた。
その邂逅にまたひと悶着があるとも知らずに・・・。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
しかし、前話に引き続き女性キャラが登場していますが、今回男性キャラ視点での進行だったので心象を構成しやすかったですね。
どうしても異性の心象を表現しようとすると、女性口調での表現等色々考えなければってなるんですよね。
プロもアマも含めて筆者の皆様はどんな風に考えて異性のキャラでの一人称とか表現してるんでしょうかね?
それでは、今回の後書きはここまでになります。
改めまして、ここまで読んで頂きありがとうございます。