5.任命先は女官
今回はメインキャラクターの一人、マリー視点です。
女性口調とか思考とか考えるのは面白いけど文章化しようとしたら、これで良いのかなとか大分不安になります。
久しぶりに兄さんから手紙が来た。
私が花嫁修業と称して友人のエルナと諸国漫遊に興じて以来ね。
元気にしてたかな?仕事の方は問題無いだろうけど私生活の方は大丈夫だったのかな?ご飯とかはちゃんと食べれていたのかな?
そんな事を考えながら手紙の封を・・・おっと、手紙の中身はちゃんとバイセ達にことわってから見ないと。
「バイセ様、お茶会中に申し訳ないのだけれど・・・」
「ええ、構いませんわ。何か重要なご用件かもしれませんし」
「ありがとうございます。では、少しの間失礼します」
・・・いつもながら家令の皆さんの手前、最低限のマナーとしての受け答えはちゃんとしなきゃいけないのは分かるけど正直全然慣れないな。バイセ本人は手慣れたものだけど。
そんな事を考えながらベンチの方に移動して私は兄さんからの手紙の内容を確認した。
どうやら私がいない間に騎士団長の仕事として手紙の書き方をしっかり叩き込まれたのか、挨拶文とか書かれていて違和感しかないわね。
要約すると・・・。
一、先日召喚された聖女様のお世話係としてマリー・カーライルを任命する。
二、現在聖女様の≪後遺症≫が今までに無い状態の為、お世話係が不足しているので自身が信用できる者も一緒に王都でその任に就いて欲しい。
三、花嫁修業の進展について、現在懇意にしている男性の有無、その他近況について。
ドウイウコトナノ?
・・・一旦落ち着きましょう。
聖女様のお世話係が少ないのよね?どんな問題でそうなったのか分からないけど。
それは理解したけれど・・・何で私なの?しかも私が信用できる者ってバイセ達よね?ますます解らないわ。
正直な話、私達に給仕の真似事とか無理だと思う。エルナは元々貴族出身では無い上に薬の研究一筋でお世話係が具体的にどんな仕事をしているのか想像出来ないと思うし、残りのみんなは貴族出身だからどんな仕事かは解るけど、か弱い(※1)女性(※2)で尚且つやってみた事も無いのに出来る訳がないもの。
でも聖女様がそれで困っているかもしれないのよね・・・。
うんっ!一人で悩まずに皆にも相談してみましょう。何かいい案が出るかもしれないしね。
そう考えて私はみんながいる席に戻って。
「バイセ様大変失礼いたしました。只今戻りましたわ。」
「おかえりなさいマリー様、お手紙の方は読み終わりましたか?」
バイセは笑顔で迎えてくれたわ。本来の爵位だと私の方が下位だから嫌味の一つも言われても仕方ないのだけれど、バイセやみんなは全然そんな事無いのよね。
「はい、その事で皆様にご相談したい事がございます。よろしいでしょうか?」
「ええ、構いませんわ。人払いは必要かしら?」
「はい、お願いします。」
「分かったわ。」
バイセはそう言うと直ぐに給仕と家令を下がらせて、彼らが完全にその場から居なくなるのを確認してからバイセは・・・。
「はぁ、堅っ苦しいったらないわ。ごめんね皆付き合わせちゃって」
バイセは言いながらテーブルに突っ伏した。ちょっと気を抜きすぎじゃないかしら。
「お疲れ様です。バイセさん」
エルナはそんなバイセを労いながら、給仕が置いていったティーポットから御代わりのお茶を私達のカップに注いでいってる。相変わらずの世話好きね。
「ありがとうエルナ。アンタは私達の癒しよ」
「わぁ、まだポットをもっているんですから危ないですよバイセさん」
バイセはエルナに抱き着きながらそんな事を言っている。バイセは年下に甘えたがるんだよね、逆に甘やかしたりもするけど。
「・・・バイセ、マリーから話があるのでしょう?エルナを開放してあげなさい、皆でマリーの話を聞きましょう」
ドリー姐さんがバイセを諫めて、みんなに私の話を聞くように言ってくれた。やっぱりみんなをまとめ上げたりとか緊急時の対処の仕方とかいざという時もの凄く頼もしいのよね。
知り合った時は女性にしては少し口元の産毛が濃い様な気がするし気持ち肩幅が広いなとか思ったりしたけど、旦那様(※3)は凄く凛々しい方を貰って二人ともすごく幸せそうで、彼女にはこれからも女性として色々学ばせてもらわなきゃね。
っと、それよりも本題についてよ。
「ありがとうドリー姐さん。それでみんなに相談したい事っていうのがね・・・」
私が手紙の内容をみんなに説明すると・・・。
「姉さま、どうやらこれは由々しき事態ですね」
「そうねぇ、ヴァーバラちゃん。このままだとぉ、ラーゼント皇国の他国からの信用とぉ、延いてはこの世界のぉ、存続に関わってしまうわぁ」
いち早くヴァーバラがこの手紙に書かれた内容の重大な問題に気付いて、姉のヴァリロッサがその問題について補足してくれた・・・のだけれど。え?そんなにマズい事になってるの?どういう事?
「・・・聖女召喚は私達の住んでいるラーゼント皇国が行っているけれど、それは召喚陣がこの国に在るってだけで、実際はこの国を含めたこの世界の全ての国が関わっている。言わば≪世界の命運を賭けた一大事業≫なのよ」
バイセが私に呆れた様な顔を向けながら説明してくる。
は?え?聖女召喚ってそんな感じだったの?そうして周りを見ると。
バイセは言わずもがなヴァーバラも呆れ顔で、ヴァリロッサとドリー姐さんは困った様な顔で私を見ていて、エルナはオロオロしている。多分私にフォローを入れようとしているが何と声を掛けて良いか分からないっぽい。
解ってないのは私だけだって事ですか・・・私ってこんなにバカだったけ?
「まぁいいわ。現状がこれでマリーにこの仕事が来ているのだとしたら、友人の私達にも間接的依頼されていると考えるべきね。マリーは当然として私は旦那様に相談して王都に行くけど皆はどうする?」
私自身にショックを受けている間にバイセが話を進めている・・・。え?バイセ行くの?私は拒否権無いの?
「あ、私の薬屋はもう門下生の子達が運営してくれてるから大丈夫です」
「ヴァーバラちゃんとぉ、わたしもぉ、旦那様にぃ、確認してからになるけどぉ」
「おそらく問題ないです。姉さまと私の旦那様でしたらベンジェフ様に度々お世話になっているので協力するように言われると思います」
「ワタシのダンナ様も問題ないわね。侯爵家の方は父が運営しているしダンナも王都にいるからワタシも久しぶりに会いたいしね」
エルナ、ヴァリロッサ、ヴァーバラ、ドリー姐さんと続いていく。
みんな来てくれるの?
あぁ、私は何ていい友人をもったのでしょう、嬉しくて涙がでそう。
はっ!でもちゃんとお仕事について言わなきゃ!
「みんなありがとう。でも私達はお世話係の仕事をした事が無いから出発前に勉強してからがいいと思うわ」
よしっ!ちゃんと忘れずに言えたわ。こういう事はしっかりとしなきゃね!
『えっ?』
みんなが驚いたようにこっちを向いて声をあげた。
?
「いや、私達貴族令嬢は王妃様のお世話(※4)とかの仕事が来る可能性も考えて、義務教育として女官の仕事について学んでいるはずでしょう?」
「ヘァッ?!」
妙な声が私の口から出てきた。え?じゃあ・・・私以外問題ないの?・・・エルナは?
「あ、私は元貴族様の三男の方だった師匠に弟子入りした時、身の回りのお世話をしていたので、師匠からも『これなら貴族の小間使いとしてスカウトされても問題ないな』っていわれました」
戦力外なの・・・わたしだけか!!
(※1)マリー基準です
(※2)本当は一人生物学上違います
(※3)実際は男装している次期公爵夫人です
(※4)王族のお世話係は王家が信用を置けると判断した人間に依頼されるため
・名前=マリー・カーライル
職業=剣闘士
年齢=29歳
血縁=姉、兄
髪型=赤毛。髪を後ろで三つ編みにして、肩甲骨辺りまで伸ばしている。
外見=兄のベンジェフを全体的に一回り小さくして乳房を付けたイメージ。身長180㎝前半
肌=褐色
特技=家庭料理、戦槌による戦闘(対人、対獣に対応)
悩み=最近姉がお見合い話を持ってくる事。(尚兄はその事を知らされていない模様)
・名前=バイセ・マッセブ
職業=伯爵夫人
年齢=28歳
血縁=弟、父、母
髪型=金髪。ストレートロング
外見=友人達の筋肉量の中間程度の筋肉。身長180㎝前半
肌=色白
特技=格闘術(柔術や合気道の様なもの)
悩み=旦那が最近王都にて書類仕事ばかりで、ちゃんと運動が出来ていない為に体を壊してはいないか心配している。
・名前=エルナ・サンドマン
職業=薬師
年齢=17歳
血縁=なし
髪型=金髪。ショートボブ
外見=筋肉の付き方は陸上選手のボ〇トの様なイメージ。身長160㎝前半
肌=色白
特技=野戦、ナイフ術
悩み=一部の薬草の値段が高騰し始めたこと。
・名前=ヴァリロッサ・オールデン
職業=辺境伯第一夫人
年齢=31歳
血縁=妹、父、母
髪型=茶髪、ロングウェーブ
外見=マリーよりも筋肉が付いている。身長180後半
肌=小麦色
特技=フルプレート装備と両腕盾装備での敵陣突貫
悩み=自慢のフルプレートにどうしても傷がつくのが悩み
・名前=ヴァーバラ・オールデン
職業=辺境伯第二夫人
年齢=25歳
血縁=姉、父、母
髪型=茶髪。ショートヘア
外見=メガネ。上半身に(右腕中心に)筋肉が発達している。作中一のフルフラットな胸部。身長160前半
肌=小麦色
特技=弓術
悩み=・・・胸・・・
・名前=セドリック・パッセ (ドリー)
職業=次期侯爵
年齢=30歳
血縁=弟、父
髪型=黒髪。サイドドリルヘアー
外見=筋肉以外は騎士団長と同じくらい、筋肉だけは騎士団長に気持ち筋肉をつけた程度。身長200㎝後半
肌=色白
特技=バスターソードによる戦闘(対人、対獣に対応)
悩み=結婚相手の次期侯爵夫人の男装がかっこよすぎて誰かに取られないか不安