57.脳筋に恋多からん事を
「それではヒトミ様、騎士団長。後ほどお会いしましょう」
野営をした次の日の早朝、三人の騎士が一三達一行から一時的に離れたのだった。
彼等に対してベンジェフは一人一人の眼を見て頷いてから答えた。
「あぁ、遅れるなよ?お前達!」
短い言葉だったが、その奥には彼らへの信頼が感じられるほどに力強いものだった。
そして、そんなベンジェフの横にいる一三も彼等に言葉を送る。
「どうか、皆様もお気を付けください」
一三の言葉はベンジェフのそれとは違い、言葉の端々に彼らへの気遣いが感じられるものだった。
彼等が受けた指令は当初の報告通りなら無事であろう近隣国の一つであるトーバック王国から馬などの足を調達をする為であった。
その任の為に立つ騎士達は二つの言葉をそれぞれからもらい一様に誇らしそうにして出発したのだった。
だがベンジェフは覚えている。
一三がこの世界に召喚・・・もとい、送りこまれて間もない時に化け物呼ばわりしていた奴等だという事を、故にベンジェフはあいつ等は一、二発ぶん殴っても問題無いのではと考えたのであった。
「ベンジェフ様?どうかしましたか・・・?」
些か公私混同ともいえる事を考えていたベンジェフに対して一三が声を掛けて来た。
その眼は先程の三名に送った様な心配そうなものではなく、不思議なものを見るような視線であった。
「っ!いえ・・何でもありません。それよりも我々も出発しましょう、彼等が移動手段を手に入れたとしても我々が合流地点に居なければ意味がありませんので」
咄嗟に返事を返したベンジェフであったが、ほんの僅かではあるが声が上ずっていた。
ベンジェフは女性に対する免疫が無い。
筋骨隆々でスキンヘッドな彼は、貴族社会や王宮内で出会う女性にとっては地味に怖がられている様で、仕事以外ではまともに話し掛けられる事も皆無であった。
その結果、たった今まともに話し掛けてくれている女性である一三に対してどう接してよいか分からずに、野営の片づけを始めたのだった。
本人としてはいつも通りを心掛けているつもりなのだが、部下の視点から彼の普段を知る者達は、彼の一挙手一投足に落ち着きが無い事を感じて困惑し、既婚者の多い女性陣からは些か興味深そうな視線が向けられていた・・・一部の脳筋とマッドサイエンティストを除いて。
「よしっ!兄さんこっちは準備出来たわっ!」
そして脳筋故に空気を読まないし読めないのであった。
彼女に刺さる友人からの「マジか!?」という視線も何処吹く風である。
「ドリー様。私、マリー様がどうして今まで浮いた話が一つも無かったのか、思うところがあるのですけれど・・・」
「奇遇ですわね。私もですわ、バイセ様・・・」
その時の二人が脳筋を見る目は、それはそれは大層残念な者を見る目であった。
今回もここまで読んで頂きありがとうございます!
あんまり長くないのに投稿が遅れてすみませんでした。
本来は前日に投稿する予定だったのですが、寝落ちしてしまいまして・・・更に次の日に読み返してみたらほんの少しですが、コレジャナイ感がありましたので、本日の20時にも間に合いませんでした。
本当にすみません。
今回のサブタイトルですが、作者としてはマリーにいつか白馬の王子様が表れるといいな、との願いを込めて付けました(王子の幸不幸は問わない)。
え?マッドサイエンティストもといエルナっちですか?・・・まぁ、彼女は独り身でも元気でしょう(責任放棄)。
本編があまり進まず申し訳ありませんが、もう暫くの間お付き合いください。
では!




