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21.魔獣戦

 本日もお越し頂き有難うございます。


 今回は初の戦闘回となります。

 紫馬峪がやりたい放題で書いた物で、一部グロテスクと思われる描写が有りますので、苦手な方は御遠慮下さった方が良いと思います。


 平気な方は是非お楽しみ下さい。

 後、最初は他人称視点で途中からベンジェフ視点になりますん。

「子供が門の外にいるぞっ!」


 窓の外から叫び声が上がった。

 訛りの混じった独特の音調の声にウチの騎士団の者ではないな、とベンジェフは考えながら身体はすでに窓枠から身を乗り出していた。

 三人の連隊長も同時に反応し身を乗り出す、ただ声の方角の窓は二つしかない為に二人ずつとなってしまった、割と窮屈だ。


 窓の外、門の向こうでは二人のボロボロで傷だらけの子供が門の方へ懸命に移動していた。

 一人は片足を引き摺り、もう一人がその子を支えながらである。

 子供達は逃げている途中で亡くしたのか、一足分の靴を分けたのかお互い左右片一方ずつしか履いていない。

 それ故に遅々として進まぬ移動。

 子供達のとぎれとぎれの息遣い、それに気付いた狼型の魔獣共が追い掛けて来る。

 如何に最初に距離があれど、満身創痍の子の歩みに追い付く事は容易いだろう。

 ベンジェフの脳は此れは非常にマズイ状況なのではと警鐘を始めた。

 ここの領主と領兵は領民と供に頑張った、頑張った事によってこの要塞を護った実績を得たのだ。

 その実績から生まれた絆は平時の時よりも更に強固なモノになった事だろう。

 ではその絆が最高潮である中、領民の子供が傷だらけで要塞に助けを求めに来たら?



 気付いた瞬間、速やかに確認する為愛用のハルバードを携えて彼は窓から城壁の歩廊へと飛び降りたのだ。



−ベンジェフ視点−


 ・・・ダン!


 ーっクソが!

 俺は着地と同時に心の中で思いっきり悪態をついた。

 この状況は非常にマズイっ!

 俺の予想が正しければ恐らくあの子供達を助ける為にここの領兵なら門を開ける!

 走りながら会議室(あそこ)から確認出来なかった門の方を視ると・・・門が開きやがった!案の定だよっ!

 

 さっきは情報を聴きそびれたが事前の情報だと魔獣の数は千は下らないハズだ。

 そんな数を正面から相手にしない為の要塞の利用や橋を落として相手の侵攻を遅延させつつ消耗させて、一個師団をぶつける手筈だったんだよ!


 成っちまったもんはしょうがねぇ、先ず現状把握だ!

 聖女様は・・・クソ、建物が邪魔で見えねぇ!

 歩廊は弓兵や投石兵が門の方へ集まっていやがる、仕方ねぇ要塞側に一度降りて・・・


「お兄ちゃんっ⁉」


 その叫び声に俺は反射的にさの方向に意識が向いた。

 足を引き摺っていた子供が倒れたらしい、支えてた子供がさっき叫んだようだ。

 遠目からじゃ判りにくいが兄と妹の様だ。

 

 おいおい、お前アニキなんだろ?何妹に助けらてんだよ・・・。

 情けねぇな?妹におんぶに抱っこかよ?

 本っ当にっ情けねえなっ!


 気が付いたら俺は要塞側とは反対の外側に飛び降りていた。

 気持ちがイライラしていた。

 その為か俺は思いっきり食いしばっていた。

 あの子供達を、アニキの方を見てみると、そこで倒れているのが自分の様に見えて腹が立った。


 そんな事を考えながら走ったが、既に魔獣共は子供達の目と鼻の先、もう間に合わねぇ。


 ークソっ、クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソッ!


 クソったれがぁ!!




 ブゥン!!


 突然まるで虫の羽音の様な、聞いた事のあるそれらよりもずっと高い音で、大きな音が俺の視界の端から子供達へ凄まじい速さで文字通り飛んで行った。

 

 一瞬だがあれは間違いなく聖女様だった。

ドレスの後ろは破られていた。

 破れたところから背中が割れて(・・・)左右に飛び出し、その下からは透明だが光に当たると反射し、音を立てながら振動していた正に虫の翅がそこにはあった。


 まるで滑り込むように子供達と魔獣の間に入った聖女様は子供達を庇うように魔獣に背を向けた。

 魔獣はその勢いのままに飛びかかり聖女さまの翅に胴体に少し触れた、次の瞬間には魔獣の胴体は完全に切断されていた。

 突然の魔獣の死に、後続の魔獣共は翅の無い方から回り込んで攻めようとした。

 そこで俺が聖女様に追い付く・・・前に俺の視界の端から素早い動きで魔獣に突っ込んで行った者がいた。

 

 聖女様の女官の一人エルナであった。

 発達したその脚により生み出された速度は人間のそれを大きく上回り、その素早さは獣の域すらも超えていた。

 彼女は二本の大型ナイフ逆手で持ち、聖女様に今にも食いかかろうと大口を開けていた魔獣の口元に叩き込んだ!

 目にも止まらぬ速度での移動と、その勢いを自身の回転に乗せて叩き込まれた斬撃は、魔獣の頭を上顎と下顎に見事に分離させた。


 そしてその勢いを殺すことなく周囲に群がる魔獣に斬撃を浴びせていく。

 しかし、いくら攻撃の手数があろうとも所詮は一人、隙は必ず生まれてしまう、そうして出来た隙を魔獣は逃しまいと彼女に襲いかかった!


 ドスッ!


 しかしそれは一本の矢で魔獣の頭部を貫かれる事によって阻止された。

 俺が振り返ると先程飛び降りた歩廊に弓を、それも大型で到底人が扱える様な代物では無い弓を持ったオールデン辺境伯第二夫人のヴァーバラが立っていた。

 彼女は矢継ぎ早に次々と矢を放っていった。

 それらの矢も弓と同様に大型で、その精度も全てが、魔獣の頭部に突き刺さっていた。

 その最中、


(あね)さま、行って!」


 ヴァーバラが声高らかに叫ぶと彼女の後方から影がこちらの方へ飛んできた。

 最初は投石機による投石攻撃か?と思ったのだが、それは鈍い銀色の鎧の塊だった。


 その塊が魔獣を巻き込みながら着弾すると、

「ふぅー、この移動ってぇ、思ってたよりぃ、きついわねぇ」

 そんな間延びした声が、立ち上がった銀色の全身鎧(フルプレート)から聴こえてきた。

 その声の主はオールデン辺境伯第一夫人ヴァリロッサである。

 彼女の全身鎧はあれそのものが所謂要塞と言っても過言では無い程の堅牢さを持っており、立ち上がったと同時に全方位から魔獣共が攻撃を加えているのだが微動だにしていない。

 魔獣共の内のヴァリロッサの前方にいた魔獣が、スタミナ切れか動きが緩慢になり鎧に噛み付いていた口を離した。

 その瞬間、魔獣の顔面を何かが挟み込んだ。

 それは彼女の両腕に装備されている大型の金属盾であった。

 その盾は側面にすり鉢の様な無数の溝が彫られておりそれに挟まれるとはつまり・・・


 メキッ!ベキベキッ!グシャグシャ、ゴリ、ゴリリッ!


 まるで草食動物が臼歯で草を食むかのように魔獣の顔面は擦り潰されたのだった。

 どうやら年端もいかない領民を襲われた事に腹を立てているのか、マリーから聴いてた戦い方とは大分違っていた。

 もう潰し終えたのか、既に次の獲物を挟んでいた。


「ベンジェフ騎士団長!あの三人が撹乱している間に聖女様と子供達を連れて行きましょう!」


 そんな声に反応するといつの間にかバイセ夫人が聖女様に近付いていた。

 その声に従い俺もハルバードで近付いて来る魔獣共を処理しているのだが、その横でバイセ夫人は徒手にも関わらず、襲い来る魔獣を次々と屠っていった。

 彼女は魔獣の動きをそのまま軌道を変えて少し力を加えつつ地面に顔面から叩き付けたり、別の魔獣に叩き付けていくなど淡々と魔獣を処理しながら聖女様と子供達を誘導している。

 恐らくお互い素手状態なら騎士団の誰も勝てないだろうなと感じた。


 そんな中、門の方角から二つの影が魔獣目掛けて突っ込んで行った。

 一つはセドリック改めドリー夫人であった。

 彼女は幅のあるバスターソードの使い手で、その斬撃は魔獣の胴体をいとも容易く切断していった。

 その威力も然ることながら、彼自身の動きもトリッキーだった。

 バスターソードはその重量故に両足をがっちり地面につけて振り回すのだが、彼は時にその刀身以外は微動だにせず、かと思えばワザと力を抜き、振り抜いた刀身のままに身体を移動させて足が地面に付くとその流れを利用してバスターソードを振ったいた。

 この動きを魔獣は捉えきれずに次々とその死体を積み上げていった。


 そしてもう一つの影であるマリーだが・・・その戦いは異様であった。

 マリーは愛用の戦鎚(ウォーハンマー)を振りかざしていた。

 柄の長さは自身の胸の高さ程で、打撃部分は両口型の物である。

 それを魔獣に叩き付けるのだが、魔獣は振り上げた時点で何か来ると察知身構えていた。

 案の定来たそれは予想よりもだいぶ速かったが何とか回避出来、耳を掠る程度で何の問題も無い・・・かに見えたその結果は簡単に覆された。


 先ず、魔獣が戦鎚を横に回避した際耳に掠ったのだが、耳から引っ張られる様に巻き込まれ魔獣は地面に顔面を強打し、血飛沫(ちしぶき)を上げて絶命した。

 そして地面に戦鎚が叩き付けられた直後、地面はまるで断末魔の様な音を立てて割れたのだ。

 その割れはマリーを中心にして円形に広がり、その範囲は馬が五頭並んだ程に迄広がった。

 マリーの戦鎚が創った影響はその程度に収まらず、大地の割れと反発する様に地面から岩石が弾け飛んで来たのだ・・・そう“岩石”である。

 小石等の礫では無く、大きい物で魔獣の身体全体を覆う程有り、小さい物でも人間の頭部程の物がまるで弓で飛ばされて来た矢の様な尋常では無い速さで地面から無数に飛び出し魔獣の身体に叩き込まれたのだ。

 ある魔獣は身体毎岩石に吹き飛ばされ着弾時の衝撃と吹き飛ばされる速さで圧死し、ある魔獣は顔面や腹部を小ぶりな無数の岩石によって風穴を開けられ死んでいた。


 まるで地獄の様な光景に魔獣共は暫く動きを止めてしまったのだった。




 マリーよ、強くなったなぁ。

 お兄ちゃんマリーの事が誇らしいよ、でもな、お兄ちゃん女官の人達とは模擬戦とかしたくないなぁ。

 特にマリーとはしたくないなぁ、まだ死にたくないし。


 それと一つ言わせて貰うとね、戦鎚を叩き付ける時にね、白目むくのはヤメよう。


 ・・・スゥー(息を吸い込む音)。

 女の子のしていい顔じゃないから!


 今回も最後まで音読して頂き有難うございます。

 最初に書いた通りやりたい放題で書きました。

 御見苦しい点、判りにくい描写等たたあったと思います。

 もし宜しければ「こうすると良いんじゃない?」や「ここ使い方間違ってるよ」等のご指摘があればメッセージや感想に書いて頂けると有り難いです。


 「ブックマーク」や「お気に入り」もお待ちしております。


 追記:下の星印のポイント等も作者の紫馬峪のモチベーションにも繋がりますので宜しければお願いします。

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