19.ミーティング
申し訳ありませんが一人称視点はもうちょっとだけ待って下さい
聖女様が出立する直前の話です。
−ラーゼント王国騎士団本部−
ラーゼント王国に三つの防衛組織が存在した。
都市部の警備や防衛を行う兵士団、有事の際に各領地にも派遣もしくは出撃する騎士団、国王及び王家と王城そのものを護る近衛騎士団である。
聖女一同がオールデン領へ向かう一時間前。
騎士団本部から直に出撃可能な補給部隊を含めた三個連隊に招集が掛かった。
「全員傾聴!!」
演習用施設内に招集された騎士は既に整列しており、騎士団長が入って来たと同時に聴く姿勢になった。
それを見た騎士団長は少しだけ満足そうに頷くと佇まいを正し、この場にいる全員に聞こえる様に声を張り上げた。
「此処にいる全騎士は既に聞いていると思うがオールデン領に魔獣が出現した!」
騎士達の表情にこそ変化は無かったがその場の空気は一瞬で張り詰めたものに変わった。
次に騎士団長の隣にいた副団長がオールデン領での大まかな動きを説明した。
「此処にいる三個連隊はこれから直に出撃し、オールデン領に向かう!オールデン領では先ず脱出してくる領民がいた場合の王都へのルートを確保し、次にあの領地にある要塞都市の被害状況の確認を行う!」
副団長はひと呼吸置いてから更に説明を始めた。
「我々の動きはここから状況によって変化する!先ず要塞都市がまだ機能し、魔獣からの攻撃に耐えられている状態ならば現地の領兵と共にその場で防衛戦に入る!その後一日遅れで到着予定の一個師団と合流後殲滅戦に移行する!」
彼は最初に現状考えうる最も理想的なケースを説明し、次に最も確率の高い状況を話した。
「次に要塞都市が半壊もしくは殆どが機能していなかった場合は生存者を出来るだけ連れて穀倉地帯の外縁部まで後退!要塞都市と穀倉地帯を結んでいる橋を落とし川を挟んで防衛線を展開!後続の一個師団には別の領地から迂回し、魔獣を殲滅する!」
次に目的地までの道程の説明を話し始めた。
「移動については速さを重視し全員騎乗での移動となる!穀倉地帯故に平野で道の整備も行き届いているから移動は問題ないだろう!中継地点にある村で夜を明かして明日の昼には目的地のオールデン領だ!」
そして副団長の説明が終わり騎士団長が補足した。
「中継地点までは一個連隊ずつを警ら隊と称して出撃してもらう、正式な派兵にしては三個連隊では少なすぎるため国民にあらぬ不安を与える恐れがあるからだ。それに表立って動けば一部の国民がお見送りと称して路肩に集まってきて移動し辛いしな」
後半は全員苦笑いな辺り、これまでも何度かあった事を物語っている。
「それから今回の出撃には聖女様も同行される。」
騎士団長がさらりと投下した爆弾発言でこの場にいる騎士の大半が一瞬思考停止した。
「皆が疑問に思う事は私にも分かる。だがこれは聖女様自身が望まれたのだ」
この説明に一人騎士の口から言葉が転がり出た。
「・・・それは、オールデン領に・・・魔素溜りが在ったと言う事ですか・・・?」
そんな騎士の言葉に騎士団長が首を横に振った。
「それはまだ分からない、何せ魔獣の発生等今まで前例の無かった事が多い。この一件を解決すれば全てが解決すると言う楽観視はしない方が良いだろうな。」
騎士団長の言葉を聴いてその騎士は少し残念そうに納得した。
「聖女様のお乗りになる馬車は、最初の出撃連隊と次の出撃連隊の間に出立なされる。正直に言えばどれかの連隊と一緒に出てほしいが、警ら隊として出撃するのに重装甲の大型馬車との移動は不自然すぎるからな」
騎士団長は溜め息混じりにそうボヤいた。
今回も読んで頂き有難うございました。
話は進まねぇはワクワクする様な展開はねぇわで本当にスミマセン!
次か次の次ぐらいでアクション入れますからもうちょっとだけお付き合い下さい。
次回『20.オールデン領(予定)』お楽しみに!では!
※作業用にエヴァとシンゴジで使われてたあの曲をループ再生してました。




