13.対話への模索
引き続きマリー視点での進行になります。
女官長や友人達に叱られ、挙句の果てに兄さんからも悲しそうな目で見られてから三日が経過しました。
本来なら個人どころか聖女様案件だから国家レベルでの責任問題になる可能性もあったけど、その聖女様から特に責任に関する追求どころか、私の顔に付いた傷を癒すものだから国王陛下もどうするべきか悩んでいたって兄さんから訊いた。
更に聖女様付きの女官の人員が確保が不可能という女官長からの嘆願書もあって、処分は保留。
魔素溜りや魔獣の問題が解決するまでは国王預かりの案件として、これからの私の行動如何によって問題解決後の処分は考えるという事に一旦は落ち着いたのでした。
「マリー、顔が悪いわよ」
「えッ!!」
私達が女官になって、聖女様の私室内での仕事は二人一組のローテーションで行われている。
そして現在私とバイセが休憩中でエルナ、ヴァリロッサが聖女様の私室に隣接している部屋で待機。今聖女様のお世話をヴァーバラとドリー姐さんが頑張っている。
そしてその休憩中にバイセから聞き捨てならない事を言われた。
「間違えたわ、顔つきが悪いわよ」
「あぁ、顔つきね。・・・それってどんな違いがあるの?」
「私が言いたいのはその眉間によっている皺についてよ、なにか言いたい事があるのなら先に言っちゃいなさい」
「ん・・・うーん。なんていうか、何とかできないものかなって」
「はぁ、・・・マリーそれじゃ何が言いたいのか分からないわ。ちゃんと何について何とかしたいと思っているのか言いなさい」
「あ、そっか。・・・聖女様の事なんだけどね。聖女様って今まで一言も喋った事が無いわよね」
「そうね、マリーが問題行動をした時も何も喋らなかったって聞いているわね」
「うっ!そうだけど・・・。」
「何となく言いたいことは分かったわ。確かに今後王城を出て魔素溜りの浄化を行ってもらう際に、ある程度対話する方法がないと『浄化部隊』の運用にも支障をきたしますわね」
「!・・・それもあるけど!」
「今一瞬眉を顰めましたわね?」
「それは良いからっ!」
流石バイセね。聖女様が話せない事でどんな影響を出すか私が思いつかない事を考えつくなんてっ!
「ゴホンッ!・・・私は聖女様とお話がしたいのよ」
「何故かしら?」
「聖女様って私達と同じで女性でしょう?」
「胸は有ったわね」
「ウン、ソウネ。・・・だからもしかしたら考える事というか感じる事って私達と同じって考えられない?」
「・・・ふむ」
「私達って言葉を使ってお互いを知ったり、知らなかっと事を知ったりしているわよね?そしてその言葉を使って私達は色々話したりして友達になった、友達になってからも同じように言葉を使ってる」
「その通りね、人はそうやって絆を深めていって友人や恋人とかの関係性を築く。私達は言葉を聞く耳と言葉を発する口があるからそれが出来るわね」
「うん、聖女様の今のお口は多分喋るのに大分不便な形だと思うの、だから誰かとも友達になったり難しいんじゃないかなと思う。」
「相手が何を考えているか理解できない時、もしくは自分の事を伝えても相手が理解してくれないというのは不安で怖いものね」
「聖女様は不安で怖いんじゃないかなって私は思うの、相手に何かを伝えられない現状って」
「でも、そうだとは限らないんじゃない?私達は聖女様じゃないんだから分からないわよ」
バイセが意地悪そうに唇を歪ませている。
相手の答えが解っていながら相手の口からその答えを聴きたいときにこんな顔をする。
やっぱり性格悪いなぁ、と感じるがこれが私の友人のバイセだ。
「だから言葉が必要なんだよ。私達は誰一人聖女様の事を知らないんだから」
「だったらその言葉はどうするのかしら?」
「・・・手話とかはどうかな」
私は顎に手を当てて考えてから答えた。
「そうね・・・、ただ今までの聖女様はご自身を表現する事は無かったと聞きますから、それよりも筆談の方が良いかもしれませんわね」
「そうか、確かにそうだよね」
「ただ私達が使っている言葉は通じているようですが、文字まで通じるかは分かりません。女官長にも相談して聖女様に私達が使っている文字を見てもらってその後、聖女様に文字を学んで頂くか考えましょう」
「わかった!ありがとうバイセ、やっぱりバイセは私達の頭脳だよ!」
「ふふっ、お褒め頂きありがとうございます。さぁ、そろそろ私達が待機部屋に行く時間ね、途中で女官長に会ったらさっきの話をしてみましょう」
「そうだね!頑張っていこう!」
そう言って私とバイセは休憩室を後にした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
今回マリーとバイセの会話ばかりでしたね。
果してこの二人の文字による聖女様との対話は成功するでしょうか?
次回!・・・どうしよっかなぁ。
御楽しみ下さい!
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