9.マリーの修業
女官として戦力外通告を受けたマリー、ドラフト落ちした彼女は現在第一軍の戦友に合流するため、女官の訓練をエノール・フランシス女官長から受けています。
今回マリーとエノールの視点で書いています。
-マリーSide-
「ボサっと突っ立つなっ!!マリー・カーライルっ!」
ビクッ!(マリーのリアクション音)
「ビゃいっ!申し訳ございませんっ!エノール・フランシス女官長閣下っ!!」
ビシィ!!(マリーの敬礼音)
「閣下をつけるなっ!!この馬鹿者がっ!!」
シュッ!!(ナイフ投擲音※一投二本)
サッ!(顔面ヒット回避音)
ドカカッ!!(ナイフ着弾音)
「大変申し訳ございませんっ!エノール・フランシス女官長っ!!」
私マリー・カーライルは現在エノール女官長から繰り出される殺意の込められた猛攻を回避しつつ立派な女官になるべく絶賛猛特訓中であります。
「何度言えばわかるっ!!カーテシーの時はスカートの両端摘まんでを片足を少し内側の後方に下げて反対の足は膝を少し曲げろと言っているだろっ!!お前は曲げすぎて更に背筋が真っ直ぐ上に行ってるせいで頭も上にあるんだっ!斜めに真っ直ぐ傾けろっ!!スクワットじゃないんだぞっ!!」
「はいっ!エノール女官長っ!!」
エノール女官長は厳しい。でもそれって私をちゃんとした女官にするため心を鬼にしているって事で、それは私をしっかり視ていてくれないと出来ない、つまり私に期待しているという事だから頑張らなくちゃね!
「高い所の照明を掃除するなら脚立を使えっ!飛び上がって天井の縁を片手でつかんで掃除をするなっ!!」
「はいっ!エノール女官長っ!!」
-エノールSide-
『まさかここ迄とは・・・』
今の私の思いを表す言葉としてはこれ以外の言葉は無いでしょうね。
さて、私は一体何故この野生動物に女官としてのマナーを教えているのだったかしら?
私も年だという事でしょうね、物忘れが激しいわ。(遠い目)
・・・現実逃避は止めましょう。
教育を始めてから既に三日が経過している。
何とか大股かつ蟹股での歩行を矯正させ、スープは音を立てずにスプーンを使って飲む事を教えた。
・・・そう、三日掛かって此れなのだ。
私はこの野生動物を人類に生まれ変わらせなければならないと考えた。
正直、野生動物を女官にするのはもう諦めました。
女官の仕事なら野生動物の御友人達がいるので問題ないでしょう。
・・・聖女様に必要な者は恐らく女官ではないのかもしれない。
マリーを見て私はそんな事を考えました。
歴代の聖女様方に仕えてきた女官には、個々の能力が高くその人数も数十人規模にもなっていた。
しかし、それだけの事をしても決して聖女様方が御心を開くことは無かった。
当たり前でしょうね、女官は使えるべき御方の御心を護る。
つまり私達女官が勝手に判断して『御心を傷つける』と考えたモノを事前に遠ざける。
職務としては問題無かったのでしょう、聖女様自身のお考えを反映していないという点を除けばですが。
私達の世界の勝手な都合により呼び出され、≪後遺症≫という状態まで患わされた。
そんな聖女様に対しての贖罪としてはこの考え方は遠いのではなのか?
そうして私は聖女様に必要なのは選択肢であり、私達で情報を限定させていくのではなく聖女様自身に考え判断していくための機会が必要なのではないかと考えた。
その際に情報の取捨選択をせず、聖女様にズカズカと接触していけるであろう人物、つまりマリー・カーライルが必要だと私は考える。
故に私は女官ではなく彼女には・・・人間としてのマナーを指導する事にしたのである。
「マリー・カーライルっ!!ドアのノックは必要以上の力で叩くなっ!!!」
・・・私の考えは本当に間違ってはいないのだろうか?
本日も読んで頂きありがとうございます。
次回ようやくマリーも聖女様に合流!聖女様一行がついに無双を開始する・・・といいなぁ。
それでは失礼いたします。