7.出発
今週の投稿は話がかなり短いです。(´・ω・`)
「わかりました。直ぐに戻るわ。宰相は防衛線の準備を」
『はっ!』
渋い顔をした老人が返事をすると、ホログラムの映像が消えた。
「どうやら敵は本格的に攻め始めたようですね。恐らく、先日イグニスが戦った獣が出現したのでしょう……」
アウラは口元に手を当て考え込みながらポツリと言った。
本格的? 一体どういう事なんだ。
「なぁ、リーナ。今までは獣の敵は出てこなかったのか?」
「すまん。その質問は余には答えられぬ。何せ前回が初陣だったものでな。今までは亡き父が指揮を執っておったのだ」
む。そういえば『魔剣』継承者は代々受け継がれると言っていた。という事は、リーナはつい最近身内を亡くしていたのか。
余計なことを言ってしまっただろうか。そう考えていると、リーナが苦笑していた。
「ユージよ。気を遣わんでもよい。今は戦争中だ。こほんっ。話を戻すぞ。余よりも長く魔物と戦っているシャルに聞くがよかろう。で、シャルどうなんだ?」
「そうね。獣の姿は一切みたことないわ。ただ、補足を加えると出現間隔が短くなっていることと、その数が徐々に増えて行っていることは確かだわ」
「間隔が短く? 何? あの魔物って一定周期ごとに責めてきているのか?」
「ええ。初めて出現したのはおよそ2年前なんです。3か月周期で現れていたんですが、ここ最近1ヶ月ごとに……。徐々に兵も減り、我が国も苦戦を強いられて」
シャルウィが神妙な顔つきになる。
そこまで苦戦するなら、他国と連携を取ればいいと思うのだが、きっと一筋縄では行かないのだろう。国益やら色んな政治事情が絡みそうな問題だしな。
あれ? でもそれならなんでシャルウィはリーナの所にいるんだ?
「なぁ、親父の……エルダインの子孫なら、同じ血の繋がりとして助けに行かないのか?」
「ふむ。痛いところを付いてくるな。そうしたいのは山々なんだがのー……」
リーナが困ったような顔をし、溜息を吐いた。
「実は現女王のシズさんはとてもプライドが高い方でして……」
シャルウィが「あはは……」と乾いた笑いをする。
「要するにメンドクサイ女王ってことだろ?」
「イグニス!? 貴方いつも言葉が直球過ぎますわよ!?」
アウラが慌ててイグニスの口元を手で塞ぐが、イグニスはお構いなしだ。
「ふぁってふぉんふぉのふおとらろー(だって本当のことだろー)」
「ふん。別に仲が悪いわけではない。あやつは現『継承者』の中でもっとも強い力をもっておるのだ。それだけに……、強い自負を持ってるが故に他国に助けを求めることはしない。そういうやつなのだ」
なるほど。だが、だからと言って手助けをしないのはどうかと思う。そう言った価値観は俺には分からない。死んでしまっては元も子のないのだから。
腰掛けていた噴水から立ち上がる。
「ユージ?」
「リーナ達の話を聞いて、互いの国益とか色々政治的なものが絡むんだろうって理解はしたけどさ、やっぱり俺には無視できないよ。
だって、人類共通の敵だろ? だったら尚更だ」
俺の言葉を聞いて、イグニスは両手の拳を胸元で打ち付け合った。
「ああ、主の言う通りだ。あたしは主と行くぜ? ちっこい主はどうするんだ?」
リーナは一呼吸目を瞑った後、まっすぐ見つめてきた。
「お主の言う通りだ。ユージ。この戦い、余たち継承者が共に力を合わせねば生き残れぬ。それに、シズは余たちの幼馴染でもあるからな」
「ええそうね、リーナ。これは私たちの戦いですもの。それにウェルズ国を襲っている魔物を倒せば、我が国にもダラス国にも進行させずに済むわ」
リーナと共にシャルウィも立ち上がる。アウラは何も言わずに微笑んでいた。
なんだかんだ言いながらもこの子たちは優しい。
「イグニス!」
「ああ! 行こうぜ! 我が主――!」
向かうはウェルズ国。まだ見ぬ3人目の継承者、どうか無事でいてくれと願いながら出発した――。