43 全ての結末
デュークとレーヴ、それからエカチェリーナの件を受けて、総司令部は魔獣保護団体の在り方を改めて検討することになった。
今まで何となく上手くいっていた獣人の保護だが、それだけでは危険だと元獣人たちが頑張っているらしい。
魔獣の保護だけでなく、その想い人の保護や周囲へのフォローも検討されている。
それから、恋愛関係に強いアドバイザーを迎えることも決定したようだ。
付け焼き刃なマリーが的外れなアドバイスをしたことが、ちょっとしたすれ違いを生むことになったので、それを受けてのことらしい。
マリーとしては精一杯応援していたつもりだったので、不甲斐なさにしばらく落ち込んだ。「恋愛指南本なんて、信じない」と彼女は持っていたハウツー本を全て焼却処分にしたらしい。
さて、悪い魔女のような所業を行ったエカチェリーナ・ラウムだが、彼女は親共々国外追放となった。様々な制約のついた呪いをその身に受けて。
今後、彼女がロスティの地を踏むことはない。また、この国に何かすることも出来ないだろう。企てただけでもその命を奪う、死の呪いが彼女を蝕んでいるのだ。
元獣人の父と諜報のトップであった母にも、同じような呪いがかけられている。
いかに万能な元獣人の魔力をもってしても、この呪いは解けない。
レーヴとデュークがロスティに戻る最中、彼らは追放された。
それを聞いたレーヴは「もう一発殴りたかった」と悔しそうに拳を握りしめていたが、その姿をうっとりと眺めるデュークに戦意消失したようだ。
デュークは、王都に戻ってすぐにオロバスの名を賜った。
デューク・オロバス。それが、彼の名前である。
同時に、彼にはロスティの最北部を治める辺境伯の地位が与えられた。
極寒の地であるこの地域に、村なんてほとんど存在しない。一見すると厄介払いのようにも思えるが、彼にはきちんとした任務があった。
作物の実らない北方の地を、麦でいっぱいにすること。
それが、彼に与えられた任務だ。
木属性のデュークは、どんな場所でも植物を育てることが出来る。
その力を見込まれてのことだった。
辺境伯の誕生に盛り上がる中、一人の王子が消えるように出奔した。
アリスタルフ・ロスティ。王位継承権第三位の第二王子だった人物だ。
もしかしたら彼は、エカチェリーナを追ったのではないかと推測されている。
エカチェリーナがレーヴを監禁した場所も、本来なら彼女が使える場所ではない。
アリスタルフが手を貸した。
そう考えれば、腑に落ちる。
とはいえ、これはあくまで可能性の一つだ。
王族の代表として表舞台に立つのが嫌になったとか、そういう理由かもしれない。
アリスタルフもエカチェリーナも、ここにはいない。
もう、聞くことも出来ないのだ。
アリスタルフが出奔したことで、近衛騎士隊第四小隊は解散した。
それを機に、ジョージ・アルストロは異動願いを提出する。
希望は『魔獣保護団体』。
レーヴを射止めた魔獣という存在が、気になってはいたのだ。
異動先に悩んでいた時、たまたま会ったマリーに「アドバイザーの研修を受けてみない?」と誘われた。
好きな子をいじめることしか出来なかった自分を変えたくて、ジョージは彼女の誘いに乗った。
「ジョージー!レーヴから手紙が来たわよー。一緒に読みましょう?」
廊下から声を掛けられ、ジョージは記入していたノートから顔を上げた。
「はい、今行きます!」
窓の向こうに、紫色の霧を纏った魔の森が見える。
今学んでいることを生かせる時が、いつか来るのだろうか。
お姫様を守る騎士にはなれなかったが、お姫様を助ける善き魔法使いになれたら良い。
急かすようにノックするマリーへ「今行きますから」と声を掛け、ジョージはそっとノートを閉じた。
「今度の手紙は何が書いてあるんだか」
彼らが婚約してだいぶ経つ。辺境伯には奥方が必要だろう。
「そろそろ結婚しろよ、ばぁか」
手にしていた羽ペンを引き出しに仕舞い、ジョージは煩いノックに苦笑いを浮かべて部屋を出た。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
初めて書いた、オリジナルの小説……如何でしたでしょうか?
至らない点が多かったかもしれません。
でも、今の私の精一杯を込めて書きました。
少しでも楽しい時間になったのであれば、幸いです。
今後のために、評価や感想を頂けると嬉しいです。




