盗賊のアジトヘ
「マモルさんお疲れ様でした」
フードに隠れていたベラがひょこっと顔出し労う。
「なぁベラ、あいつら……大丈夫かな? 死んでいないといいんだけど……」
吹き飛んだ野蛮な人たちは一様に身体から血を流し気絶している。そんな様子を見てマモルはやり過ぎたと思う。
「うーん、どうでしょう……ちょっと見てきますね」
ベラはそう言いフードから飛んでいく。
「ククリ、ベラについて行って」
「ワフ!」
マモルは足元で待機しているククリに指示を出す。ベラとククリを見送ってからマモルは振り返る。
「あの、怪我とかないですか?」
「……」
マモルが話しかけても女性はポカンと口を開けている。
「おーい」
「はっ! 大丈夫です怪我はないです、助けて頂きありがとうございました!」
ようやく意識が戻った女性は早口で怪我がないことを伝えてからお礼を言う。
「怪我無くてよかったです。俺はマモル、で飛んでいるのが妖精のベラにブレードウルフのククリだ」
「わ、私は神官のイアです。変わったパーティーですね」
「あはは……」
マモルは苦笑する。これ以上聞かれたくない為にマモルはイアが追われていた理由を尋ねる。
「イアさんはなんであいつらに追われていたんですか?」
イアは暗い表情になる。そして、ぽつぽつと話し出す。
「私たち《疾風の剣》のパーティーは依頼完了の報告しにスーリンガの街に行く時、彼ら――盗賊の罠に引っ掛かり捕まったんです。他のメンバーにどうにか逃がしてもらい助けを呼びに行こうとして」
「見つかって追われていたと」
「はい……」
イアが言い終わるとタイミングよくベラとククリが戻ってくる。
「ベラ、ククリおかえり、どうだった?」
「まだ息がありました」
「ワフ!」
ベラの報告で殺していない事をしりマモルは安堵する。ククリは再びマモルの足元に行き、撫でて欲しそうな目で見てくのでマモルは撫でる。
「わかった。でも、あいつら盗賊なら縛った方がいいかな」
「ええええええ! 盗賊だったんだですか!? マモルさん、盗賊は危ないので時間を止めちゃってスーリンガの街の衛兵に突き出しましょ!」
「う、うん」
ベラの勢いに押されるマモル。そしてマモルは周りの影響も考えて一人一人にフリーズを掛けていく。
その間にベラはマモルと同じことを聞いていた。
「よし、全員掛け終わったな。
これからイアさんの仲間を助けに行こうと思うけどベラもククリもいい?」
「はい、私も助けに行きたいと思います!」
「ワフ!」
ベラとククリはマモルの意見に賛同する。
「ありがとうございます。道は覚えているので案内しますね」
イアが先に進み後ろからマモルとククリがついて行く。ベラはマモルの肩に座る。
しばらく街道歩き、途中で森に入り進むと洞窟が見えてくる。
「洞窟の中にあいつらのアジトがあります。仲間は奥の牢屋に捕まっています」
「わかりました」
マモルたちは慎重に洞窟に入る。どこかに出かけているのか洞窟内は見回りをしている盗賊しかいなく、スムーズに奥に進む。
「後はあの監視だけですね」
牢屋の前まで辿り着いたマモルたちは監視役の盗賊をどうするか考える。
「任せてください、フリーズ」
マモルはフリーズを使い監視役の時間を止める。
「よし、行きましょう」
マモルたちは立ち上がり奥に続く階段を下る。
「マモルさんのその魔法凄いですね。相手を動かなくするって反則級ですよ!」
「はぁ、どうも」
マモルは時空間魔法の事は誰かれ構わずに話さないと決めている。なのでイアに時空間魔法の事も話していないし、フリーズも動きを止める魔法としか伝えていない。
そんな話をしていると地下に辿り着くと、広い空間にでる。明かりが壁に灯されている松明のみ奥までは見えない。
「グルルルルル」
ククリの突然の威嚇にマモルはびっくりする
「ククリ?」
「マモルさん危ない!」
マモルがククリを落ち着かせるためにしゃがむとフードに隠れていたバラが飛び出しマモルも庇い地面に横たわる。
「ベラ!」
マモルはベラに駆け寄り掬い上げる。まだ息をしていることにマモルは安堵すると後ろにいるイアを睨めつける。
「なんで!」
「っち! 邪魔な妖精だことね!」
イアはベラを見下すように言う。
「ガウ!」
「おっと」
ククリが襲い掛かろうとするとイアは一歩下がると下から鉄製の檻が現れ、ククリが檻にぶつかる。
檻はマモルたちを閉じ込める。
「まんまと引っ掛かったわね!」
イアがパチンと指を鳴らすと明かりがつき、盗賊が下から溢れマモルたちを中心に囲む。
「イアさん……いや、イア! お前こいつらの仲間だったのか!」
マモルは怒気がこもった声で問うとイアは不敵に笑いながら答える。
「そうよ! 私の演技最高だったでしょう?」
「こいつお頭の演技にまんまと引っ掛かったぞ」
「お頭の演技最高だったぜ」
「そう? ありがとう皆!」
盗賊たちはイアをお頭と呼び称える。
「演技? 全部嘘だったのか?」
「そうよ。そのブレードウルフを捕まえるためにね」
マモルは周りを見渡すとククリを追っていた三人組がいることに気づく。
「許さないぞ!」
「あなたの許しなんて要らないわ。ここで死ぬあなたにはね!
それに、この牢屋は特注でね……この牢屋の中では魔法が使えないようになっているよ! あなたの自慢な魔法も意味がないのよ! さて、話はここまでよ」
イアは再びパチンと指を鳴らすとぷしゅーっと空気の音が聞こえる。
「野郎ども部屋を出るわよ!」
「「「おう!」」」
イアを含め盗賊たちが次々と部屋を出る。
「ま、待て!」
マモルが呼び止めるとイアが振り返り手を振り投げキスをする。そして、扉が閉まり部屋にはマモルとククリと気絶しているベラだけになる。
「クソっ! どうにか逃げないと!」
「ワフ!」
ククリが檻に突撃するがびくともしない。次にククリはブレードで切りつけるが傷がつかない。
「クゥン……」
マモルの役にたてずククリは落ち込む。そんなククリをマモルは撫でる。
「ありがとククリ」
「クゥン……」
「どうすれば……俺のせいで皆が……」
魔法も使えない、檻も壊せない、なすすべがないマモルは自分のせいで皆を死なせてしまう不安で心が押しつぶされそうになる。
「ま、マモル、さん……」
「ベラ!」
「ワフ!」
マモルの手のひらで気絶したベラが意識を取り戻す。
「大丈夫か?」
「は、はい、どうにか」
ベラはいててと言い頭をさすりながら体を起こす。
「マモルさん状況を教えてください」
マモルは簡単に状況を説明するとベラはあることをマモルに尋ねる。
「マモルさん魔法は使って確認しました?」
「いや、確認していないけど……」
「なら、今すぐ確認してください! 使うのはディメンションカッターで対象はあの檻です!」
「は、はい! えっと、ディメンションカッター!」
マモルはベルの言われた通りにするとククリのブレードでも傷つかなかった檻が切れ壊れる。
「え……なんで?」
「答えるのは後にします。とりあえず、ディメンションホームで避難しましょう!」
急いで避難した方がいいと思ったベラはマモルを急かせディメンションホームに一時的に避難するのだった。