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時空間魔法で異世界旅行記  作者: 紙紙紙
22/34

マモルは自重しない

「マモルさーん!」


 マモルたちに追い付いたエレミレが下から大声で呼ぶ。

 ダークネスウルフに跨ったマモルは一旦降りることに。


「マモルさん、外の様子は?」


 マモルは外壁からみた光景を伝えるとエレミレの表情が険しくなる。

 その時、衛兵が一人エレミレのもとに駆けつける。その衛兵はマモルの顔馴染みの衛兵だった。


「副ギルド長、外が大変なことに!」


「外のことはこちらの冒険者マモルさんから教えてもらいました」 


 エレミレは衛兵――エレン隊長をマモルに紹介する。


「お、君か!」


「えっと、自己紹介まだでした、マモルです」


「俺はエレン、この街の警備隊の隊長をしている。それと……お前の後ろいるのはダークネスウルフ、か?」


 エレンはマモルの後ろにいるダークネスウルフの事を尋ねる。


「はい。だだ、今は味方です」


 マモルはエレンにも経緯を簡単に伝える。


「今回は共闘ってことだな、了解した。それで、副ギルド長どうされますか?」


 ギルド長がいない中権限は全てエレミレにある。

 エレミレはこの場にいる全員に聞こえるように指示を出す。


「冒険者の方々は住人を教会のシェルターに避難誘導をお願いします。警備隊は外に待機している人々を速やかに街に入れる班と避難誘導班に分かれて動いてください。」


「了解しました! 門担当に至急連絡を! 他の者は誘導に回れ!」


「「「はっ!!」」」


 エレンは速やかに指示を出し避難誘導に向かう。


「副ギルド長! 俺たちは、そのアビスエンドウルフ? と戦って街を守りたい! 全員でやれば行けるぜ!」


「そうだそうだ!」


「戦わせろ!」


 一人の冒険者の意見で周りの冒険者も同調し始める。


「何を言っているんですか! あなたたちは!」


 エレミレの怒声で冒険者たちは黙る。


「アビスエンドウルフはAランク以上のパーティー数チームであたる討伐クエストです。この街にAランク以上はギルドマスターだけ。今いるメンバーでは絶対に勝てません。今するべきはこの街の人々、もちろん冒険者の方々も含めて全員の命を守ることです。だから、皆さんどうかお力を貸してください」


 エレミレはこの場にいる人々に深くお辞儀をし頼む。

 そんなエレミレの様子に場は静寂に包まれた。

 その時一人の男性が口を開く。


「がっはっは! 流石ヴァーナルの娘だ! おら野郎ども! さっさと避難誘導やるぞ!」


「「「おう!」」」


 男性と同じ意見の人たちは動き出す。


「ありがとうございます、パイウスさん」


「気にするな、ほら残った奴もさっさと行って来い!」


 男性――パイウスはニコッと笑顔になる。

 この場に残っているのはマモルたちと、エレミレ、パイウスだけになった。


「パイウスさんも早く避難してください」


 マモルが言う。


「わかってる。娘を連れて教会に行くさ」


 パイウスが立ち去ろうとしたときマモルが引き留める。


「パイウスさん、クロを連れていってください。クロがいれば安心すると思うんで」


「いいのか?」


「はい。クロ、パイウスさんとアイラの事頼んだよ?」


「わふ!」


 クロはてくてくと歩いて行きパイウスと共に家に向かった。


「マモルさんも早く避難して――」


 エレミレが呼ぼうとしたときマモルはダークネスウルフに跨り言う。


「俺は戦いに行きます」


「え……?」


 マモルの言葉にエレミレは困惑する。


「ど、どうして……」


「アビスエンドウルフとまともに戦えるのは俺だけです。だから、行きます」


 ダークネスウルフは駆け出す。


「ククリ、エレミレさん頼むぞ!」


「ワフ!」


 また屋根伝えに駆け外壁の上部に向かう。


「マモルさん……死なないで帰ってくださいね……」


 遠くなっていくマモルの後ろ姿にエレミレは祈る。


 上部に着いたマモルは更に呑み込み広がった光景をみて少し焦り出す。


『何か策はあるのか?』


 ダークネスウルフに尋ねられマモルは即答する。


「アビスエンドウルフを広範囲で時を止める。ここからじゃどこまで広がっているか分からないから全貌が見える場所とかあればいいんだが……」


『ふーむ……』


 マモル、ダークネスウルフにベラは考える。泥はどんどん迫ってくる。


「あ、上空からなんてどうですか?」


 ベラは指で空を指す。


『空からなら全貌がわかるな。だが、我は上空までは流石に行けないぞ?』


「それなら、マモルさんの魔法で何とかなります」


 ベラはマモルに新しい魔法を教える。


「新しい魔法ディメンションウォールは空間に壁を作り敵の攻撃を防ぐ魔法ですが、それを応用して足場にして空に駆けあがれば行けます」


「分かった、やってみる」


 マモルは街の上空に範囲指定して魔法を唱える。


「ディメンションウォール!」


 すると上空にダークネスウルフが乗れるくらいの半透明な板が現れる。


『では、行くぞ!』


「はい!」


 ダークネスウルフは上空を駆けどんどん高い方に行く。

 その時、泥は動き出しマモルたちに向かって伸びる。


『気づかれたぞ! まだなのか?』


「もう少し上に行ってください」


『しっかり掴まっておれ!』


 ダークネスウルフはさらに加速する。泥も合わせて動きが早くなる。

 地平線が見えるとこまで上がったところでマモルが言う。


「見えた! ダークネスウルフさん止まってください!」


 ダークネスウルフは足を止め、マモルは背から降りる。

 迫りくる触手のように動く泥を視界に入れ、下に広がる街と呑み込まれたことにより木々がほとんど失った森を全てを範囲指定をしてからマモルは唱える。


「フリーズ!!!」


 泥も、避難している人々も、残った草木も、逃げ惑う魔物たちも全て動きを止めこの一帯にだけ静寂の世界が訪れた。


「流石ですマモルさん!」


『無茶苦茶だわ……』


 その光景にダークネスウルフは呆れる。


「後は本体を探すだけかぁ……ベラ分かる?」


「待ってください……」


 ベラはワールドマップで確認する。


「いました。前にダークネスウルフさんとあった巨木があったとこにいます」


「分かった」


 マモルは再びディメンションウォールを唱え本体の所まで足場を作り、ダークネスウルフに跨り向かう。


 しばらく進むと巨木はなく、あった所には赤く光る二つの瞳にどうにか狼の形は保っているアビスエンドウルフが座って止まっている。


「マモルさん、さっき教えた魔法を使ってください」


 ベラは道中で教えた魔法の事を言う。


「わかった。……ディメンションクラッシュ」


 マモルはアビスエンドウルフの額に触れ魔法を唱える。

 ディメンションクラッシュ範囲指定したものを崩壊させる魔法だ。アビスエンドウルフの体に罅が入り、ボロボロと崩壊していく。そして血のように真紅の魔石が現れる。


「これを壊せば終わるんだな?」


「はい」


「わかった。ディメンションクラッシュ」


 魔石に罅が入り砕け散り砂のようになる。


「後はフリーズを解けば終わりです」


「やっと終りか……」


 マモルは魔法を解くと泥は本体が倒されたことで本体と同じく砂になり止まっていた風に吹かれて散っていく。

 アビスエンドウルフのせいで鬱蒼としていた森は今では森とは言えない状況になっていた。


『ずいぶんと寂しくなってしまったが、アビスエンドウルフの脅威はさった。感謝するぞマモル』


「あ、うん……どういたしまして」


 マモルは頭を掻きながら照れる。


「ダークネスウルフさんもありがとうございました」


『……ダビルだ』


「え……?」


『だから、我の名はダビルだ。そなたにだけ名を教える。特別だからな!』


 ダークネスウルフ改めダビルは恥ずかしそうにする。


「はい。ダビルさんありがとうございました。それと、これは俺からのお礼です」


『ん?』


 マモルは地面に手を置き先程フリーズを使った時を範囲指定し在りし日の森を想像しながら魔法を唱える。


「リターン!」


 するとアビスエンドウルフに呑みこまれた大量の木々が再び生えなおる。全てが元通りなったことマモルは安堵するが振り返ってダビルを見ると呆れていた。


『……マモル、流石にやり過ぎだ……たが、感謝する』


「マモルさん、私もやり過ぎだと思います」


 フードにいたベラからも言葉が飛んでくる。


「ま、まぁ全部もどたってことで、あはは……」


 ダビルとベラはお互いに顔を見た後くすっと笑う。


「そうですね」


『そうだな。マモル街まで送ってやる』


「ありがとうございます」


 マモルはダビルの背に乗り街に戻るのだった。

 街で待ち受ける質問攻めが待っていることをマモルはまだこの時は知らなかったのだ。



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