森での異変
ベラが待ってっと言ったにもかかわらずマモルディメンションホームの外に出る。
マモルが扉を閉めると直ぐに扉が消えたことに一瞬心配になるが、ククリとクロがいるから大丈夫だろうと思い辺りを探し始める。
すると、目の前からダークネスウルフが足を引きずりながら歩いてくるを見つける。
マモルが駆け出そうとする時ダークネスウルフは木にもたれながら倒れる。
「っ!」
マモルは急いでダークネスウルフの元へ。近づいたマモルは絶句する。ダークネスウルフの身体中至る所に噛み傷や爪でひっかかれて血が垂れ流れていた。
「酷い傷……いったい何が……」」
マモルが傷を確かめるために触れた瞬間ダークネスウルフの瞼が動く。
「よかった気が――」
「グルアアアア!」
突然ダークネスウルフは起き上がりマモルに覆い被さり襲い掛かる。
「待って待って! 俺、だよ!」
襲い掛かる牙をマモルは両手で必死に抵抗し声を掛けるがダークネスウルフに聞こえていない。体格的に負けてるマモルの腕はぴくぴくし始め牙が近づいてくる。
「フ、フリーズ!」
マモルはダークネスウルフを指定範囲し時間を止めどうにか脱出する。
「危なかった……」
危機が去ったことに腰を抜かし地面に座り安堵するマモルは動きが止まったダークネスウルフを見る。
「どうしたんだよ……」
立ち去る際に自分の名前を呼んでくれたダークネスウルフに何があったのか本気で心配するマモル。
「一人で悩んでもわかんなし、ベラに相談しよう」
マモルは立ち上がり右手をかざしディメンションホームを唱える。その時影が鋭く伸び生き物ように動きマモルを襲う。
「っつ!!」
マモルは避けれずに腕を掠め血が垂れる。
影がは動きを止めず再度マモルと、動きが止まったダークネスウルフを襲う。
「フリーズ!!!」
ダークネスウルフに影が伸びるのをみてマモルは広範囲を指定して唱える。
マモルとダークネスウルフを襲う影は完全に動きを止めた。
指定した範囲外から影が再び伸びるが範囲に入った途端動きを止める。
何が起こっているか理解できず範囲外に目が赤くなっているシャドーウルフの群れが姿を現す。
「シャドーウルフの群れ? なんでダークネスウルフを襲うんだ?」
マモルは疑問に思いつつシャドーウルフの群れを見ていると一体が範囲内に入って動きが止まる。
「範囲に入れば止まるのか……なら! フリーズ!!」
マモルは更に範囲を広げシャドーウルフの群れを纏めて時間を止める。ノーモーションからの魔法にシャドーウルフの群れは一匹たりとも逃げ出さずに動きが止まる。
「急いでベラを呼びに行かなきゃ、ディメンションホーム」
右手をかざし魔法を唱えると木製の扉が現れマモルは扉を開ける。
「マモルさんーー!」
すると勢いよく扉の向こうからベラがマモルの胸に飛び込んでくる。
「待ってって言ったのにマモルさんは行ってしまいすし、私ひとりじゃあ外にも行けませんし、ワールドマップ見ながら見守っていたらシャドーウルフの群れが現れてマモルさんに敵意あって物凄く心配したんですからね!」
半泣きの状態でベラは捲し立てる。
「ご、ごめん……」
マモルは謝ることしかできなかった。
「ベラ、この状況で言うのもあれだけど力を貸して欲しい」
「ほへ?」
マモルは簡単に今の状況を説明する。ベラは相槌を打ちながら聞く。
ククリとクロは扉から頭を出し見守っている。
「マモルさん、原因が分からないので直接ダークネスウルフに聞きましょう」
「どうやれば?」
「リターンの魔法使えばいいんです!」
ベラは胸を張って言う。そしてさらに続ける。
「元の状態に戻ればダークネスウルフもシャドーウルフたちも正気に戻ると思います」
「わかった、やってみる。リターン!」
マモルは既に指定された広範囲のフリーズからダークネスウルフとシャドーウルフのみリターンで上書きして魔法を掛ける。
ダークネスウルフは傷がなかった元の状態に、シャドーウルフたちは目の赤みが引き元の色に戻る。
「これで大丈夫かな?」
「大丈夫です。ダークネスウルフに触れて魔法を解いてみてください」
マモルは頷きダークネスウルフに触れ魔法を解く。
すると、ダークネスウルフは目をぱちくりしてから周りを見渡しマモルの存在を確かめる。
『……同胞を助けくれた人間が何故ここに? それよりもこの状況はいったい……』
ダークネスウルフは軽く混乱をしていた。マモルはあったことを全て話すとダークネスウルフは深い溜息を吐く。
『すまぬ人間よ、我らの縄張り争い巻き込んでしまって……それにお主を襲ってしまった……』
ダークネスウルフは頭を下げ謝る。
「俺はなんともないんで気にしないでください。それで、いったい何があったんですか? どう見てもただの縄張り争いじゃないですよね」
マモルが尋ねるとダークネスウルフはしばし考えたあと話すことを決め語る。
『……前に争った群れの長のダークネスウルフが一匹で乗り込んできたのでな迎え撃ったのはいいが……そのダークネスウルフの体が泥のように変貌し始め、泥に触れた者から洗脳されて我に牙を向けてきたのだ』
ダークネスウルフはシャドーウルフたちを見渡し続ける。
『同胞を傷つけずに逃げていたら、気づいたらお主の前にいたのだ』
「そんなことが……ベラなんかわかる?」
聞いてても分からなかったマモルはベラに聞く。
「うーん、多分ですが、そのダークネスウルフはきっと進化したんだと思います」
「進化?」
ベラはマモルにわかりやすく説明する。
「魔物は条件を満たすと進化――今より上位の魔物になるんです」
「そうなんだ」
『ぐぬぬ、我としたことが油断したわ……』
悔しそうな表情をするダークネスウルフ。
「とりあえず、シャドーウルフたちも解いた方がいいかな?」
マモルはベラに尋ねると頷き返す。
マモルはシャドーウルフたちを一体一体触っていき魔法を解く。
解かれたシャドーウルフたちは周りを見渡した後ダークネスウルフの元に集まっていく。
『おお、我が同胞たちよ!』
「ワオン!」
ダークネスウルフとシャドーウルフたちはお互いの無事を確認取れて喜んでいる。
そんな光景をマモルとベラは微笑む。扉から出てきたククリとクロもマモルたちのもとに行き、そんな光景を一緒にみる。
「なぁベラ」
「なんですか?」
「ダークネスウルフたちを助けたい」
マモルは真剣に告げる。
そんなマモルにベラは微笑んで答える。
「決めるのはマモルさんです」
「ワフ!」
「わふ!」
ククリとクロも同じ意見のように鳴く。
「ありがと」
マモルはダークネスウルフに近づく。
「ダークネスウルフさん」
『なんだ?』
「今から乗り込むんだろ?」
『……そうだが』
マモル真剣な目でダークネスウルフに言う。
「部外者なのは重々分かってけど、俺も一緒に戦うよ」
「……」
マモルとダークネスウルフは睨み合う。
『……死ぬかもしれぬぞ』
マモルはにこっとして答える。
「大丈夫、俺強いから!」
マモルの返事にダークネスウルフは一瞬ポカンとする。
『……プっ、がっはっは! 面白いぞお主! 強いか……がっはっは! 共に戦おうぞマモル!』
「おう!」
こうして進化したダークネスウルフを倒すためマモルとダークネスウルフは手を組むことにした。