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時空間魔法で異世界旅行記  作者: 紙紙紙
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クリスタルホーンラビット騒動

「これどうしたのよ!?」


 アイラはマモルに駆け寄り体を揺らしながら問い詰める。


「いい、や、だ、から道中、で――」


 揺られすぎでマモルはまともに喋らないでいる。マモルが揺れているせいでフードの中にいるベラも一緒に揺らされ目を回していた。アイラを落ち着かせるべくククリはブレードを太ももにちょんとつける。


「いたっ。なにするのよククリちゃん」


「ワフワフ!」


 ククリはマモルを見てみろっと顔の動きだけでアイラに伝える。

 アイラはククリの動きに沿って視線を動かすとそこには顔色を青くさせているマモルがいた。


「あわわ、マモルさんだ、大丈夫ですか?」


 揺れが収まると胃から何かが込み上げてくるのを感じマモルは口を押さえる。


「は、吐きそう……」


「あわわ、どうしよ、どうしよ!」


 ちょっと……いや、かなりのカオスな空間になった部屋の扉が急に開き黒髪ロングヘアーの銀縁のメガネが似合う綺麗な女性が入ってくる。


「先程から大声を上げてどうしたのですかアイラんさん!」


「エ、エレミレさん!」


 アイラは助けが来たと思ったその時マモルも限界が訪れた。


「もう、無理……おろおろおろ」


「ぎゃああああ」


 再びアイラは絶叫する。エレミレが扉を開けていたためギルド中に響き渡る。

 ベラはいまだに目を回し、ククリは明日の方角を見ていた。





「職員がご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」


「こちらこそ醜態を見せてしまい申し訳ないです……」


 アイラの洋服が汚れてしまい、現在アイラは着替えに行っている。その間にマモルは向かい側に座っている女性と謝り合っている。


「申し遅れましたが私はスーリンガ支部副ギルド長のエレミレと申します」


「俺はマモル、で妖精のベラにブレードウルフのククリです」


 ベラはフードから少し顔を出して会釈。ククリは「ワフ」と鳴き挨拶をする。


「妖精に魔物……マモルさんの従魔でしょうか?」


「あ、はい。俺の職業は魔物使いなので」


「なるほど……」


 マモルの職業を聞いたエレミレは納得する。

 お互いに軽く自己紹介してから先ほどの経緯をマモルは話す。


「で、これがクリスタルホーンラビットの角です」


 とっさにディメンションボックスしまったクリスタルホーンラビットの角を取り出しエレミレに見せる。


「これがクリスタルホーンラビットの角ですか……」


 まじまじとエレミレは角を手に取り食い入るように眺めている。副ギルド長でもあるエレミレが見たことないのかとマモルは見ているとそれに気づいたエレミレはごほんとワザとらしく咳ばらいをする。


「どうかされました?」


 笑顔で聞くエレミレ。


「あ、えっと、食い入るようにクリスタルホーンラビットの角を見ているもんだからみたことないのかなぁと思いまして」


「オークション会場で遠目で見ただけです」


「オークション会場?」


 またここで知らないことが出てきたためマモルは聞き返す。


「珍しいものを貴族や商人などが競り落とし合う場所です」


「そんなのがあるんですね」


「えぇ、月に一回は王都で開催されているはずなんですがご存じないですか?」


 こっちの世界の事情なんてほとんど知らないマモルはどう答えればいいのか困っているとベラがフードから飛び出し代わりに答える。


「マモルさんはかなりのド田舎の村で暮らしていたんで知らないんですよね、マモルさん」


「そうなんですか?」


「え、えぇ、かなりのド田舎で、あははは……」


 とりあえずベラの話に合わせるマモルは変な汗をかきながら空笑いする。

 その時、また扉が開き着替え終わって帰ってきたアイラが部屋に入る。


「戻りました。もう、マモルさんのせいでお気に入りの洋服が……」


「ごめんなさい」


 椅子に座るなりマモルのせいにするアイラと自分のせいでもあるとマモルは思い素直に謝る。

 そんな様子を見ていたエレミレは立ち上がりアイラに怒鳴る。


「何を言っているんですか貴女は! マモルさんを揺らしてあの状態にさせたのは貴女でしょう? 貴女がマモルさんを責める筋合いはありません。はぁ……マモルさん申し訳ありません」


 エレミレはマモルに向かい直し謝罪をする。


「ほら、貴女も謝罪しなさい!」


「は、はい! すみませんでした」


 エレミレに言われ慌てて立ち上がり謝罪するアイラ。


「いやいや、俺の方こそ悪いのでそんなに謝らないでください、だから、えっと、お互い様ってことで、ね?」


 なんて言えばいいのか分からなかったマモルは思うままに口に出す。


「ありがとうございますマモルさん。アイラはもう下がりなさい。明日までに反省文を提出すること分かりましたか?」


「わ、分かりました……」


 ちょっと気の毒だなとマモルは思いながらアイラはとぼとぼと部屋を出ていく。


「それでマモルさんはクリスタルホーンラビットの角を売って頂けるということで?」


「あ、はい」


 急に話し掛けられ反応が遅くなったマモル。


「いくらぐらいになりますか?」


「そうですね、クリスタルホーンラビットはすばしっこく、危険察知能力が高く十年に一度に出回ればいい方の素材です。私がオークション会場で見た落札価格は白金貨数十枚になりました。けど、マモルさんがお持ちになったこの角は状態もよく、傷一つない完璧な状態。そうすると……」


「そうすると?」


「……」


「ゴクリ……」


 無駄に溜めるエレミレ。


「予想ですが、白金貨数百枚になるかなと思います」


「はぁ……」


「なんですかその反応は?」


 白金貨数百枚と言われてもこっちの世界の貨幣の仕組みを知らない為、薄い反応になるマモル。なんとなく高そうだなぐらいにしか思っていないのだ。

 そんな様子のマモルにベラがフォローを入れる。


「マモルさんの田舎は物々交換が主流だったので今勉強中なんですよ、ねぇマモルさん?」


「う、うん」


「……」


 じっっとエレミレはマモルを見る。


「そうですか。それで話を戻すと白金貨数百枚なんて当ギルドでは払えません、なのでオークション会場で出品された方がよろしいかと」


「そうですか……」


 一応神様から貰ったお金があるがそれでもよくって一週間分。他にお金に返れるものがないマモルは非常に困っていた。


「どうかされました?」


「実は今お金があまりなくて、クリスタルホーンラビットの角を換金しよって思っていたのでどうしようかなって」


「そうでしたか……」


「はい……」


マモルとエレミレの沈黙が続く。ベラはどうなるか見守り、ククリは飽きたのか目を瞑り寝ている。


「あ、そうだわ。少し席を外します。係りの者にお茶を運ばせますので少しお待ちください。直ぐ戻ります」


 エレミレはそう言い颯爽と部屋を出ていく。


「なんだろうな?」


「何でしょうね?」


 少し経つとお茶を持ってきた係りの人からお茶を貰い、マモルたちはエレミレが戻ってくるのを寛ぎながら待つことにした。



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