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終末の飛来  作者:
第一章:胎動編
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心の在り方

「その言葉を信用しろと?無理だよ!」


  思わずそう叫んだ。

  だってそうだろ?昨日まではいつもと何一つ変わらない日常を過ごしていたのに、いきなりそんな事を言われて「はいそうですか」何て言えるわけがない!


「証拠をお見せします。」


「そんな物見たくない。見せないでくれ。」


  フィーネが不穏な事を言い出した。

  心の底からそんな物は見たくない。見たらきっと否定できなくなるだろうと直感でわかった。


  しかしフィーネはそんな俺の言葉を無視し、右手の人差し指を上に向けた。

  すると指先が何やら光を帯び始めた。


「それが証拠か?そんな物がか?」


  突っかかる様な言い方をする俺。


「そうです、いきますよ。(○○○○)!」


  後半はなんて言ったのか聞き取れなかった。

 何かノイズな様な音だけが耳に入ってきた。しかしその〔音〕を聞いた俺の体にはすぐに異変が起きた。


  胸の辺りが光り始めたのだ。そして見たことのない紋様が、僅かに浮かび上がる。

 紋様は腕から次第に額へと伸びていく。

 自分では見えないが、不思議なことに額が光り始めたことが感覚で分かった。


  暖かくも冷たい感覚。以前何処かで同じような感覚になった事があるような気がするが、思い出せない。


「その紋様と、額の光が証拠です。」


  そう告げるフィーネの方を見て驚いた。

  フィーネの体から光が溢れ出し、翼はこれ以上ない程に広げられている。何人にも侵されざる本当の意味での神々しさをその身に纏い、その場に佇んでいる。


「そっか、人間じゃなかったのか....」


 そんな光景を目の当たりにし、疑う気持ちが完全に折れてしまった。


  迎撃システム。

 それは人間ではない事と同義だと思う。


「いえ、先程までの貴方は肉体的には人間でしたよ。ただし、存在の根幹が人間とは異なっていましたが。」


「先程まで?」


 おい、ちょっと待ってくれ。

 じゃ、何か?いつ間にか俺は改造でもされたのか?あの光か?

 疑問が瞬時に頭をよぎる。



「今は紋様があるので人間というよりは、私達天使に近い存在となっています。先程は迎撃システムとお伝えしましたが、あれはわかりやすく説明したに過ぎません。」


「おい!ふざけんなよ!この紋様が原因って言うんなら、こんな訳の分からない紋様なんかいらねぇよ!さっさと取ってくれよ!」


「言ったでしょう!元々、根幹は違っていたと!いい加減に認めなさい!それに訳の分からないとは何ですか!それは由緒正しい紋様なんですよ!」


  フィーネを見て驚いた。大粒の涙を流していたからだ。さっきまであんなに淡々としていた事が嘘のように、感情を表に出している。

  思わず強い口調で言ってしまった俺も悪いが、なんだよ逆ギレじゃないか!

  それに由緒正しいなんて言われても、俺が知るはずもない。


「どう由緒正しいってんだ!あのな!さっきから俺が知ってる程で話するのやめてくれないか⁈言ったろ⁈何も!知らないんだよ!」


「だったら教えてあげますよ!

 その紋様は大天使ルシファー様の紋様です!偉大な天使の紋様なんですよ!」


  売り言葉に買い言葉という感じでフィーネが答えてきた。

  ルシファー?今そう言ったか?ルシファーといえばあの有名な堕天使だ。

 

「ルシファー様?偉大な天使?」


  フィーネはハッとした表情で固まった。

  どうやらフィーネはルシファーを尊敬しているらしい。そしてその事は知られたくないといった様子だった。


  俺の中でドス黒い何かが芽生えた。

 これは言ってはいけない。誰かが大切に想う気持ちを踏みにじる権利なんて神にさえ無いのだから。言えば俺は人間としての誇りを捨てることになる。

 

  たとえこの体が人間じゃなかったとしても、心は人間のままでありたい。しかし、感情のコントロールが効かない。これまで経験した理不尽さを何かにぶつけたい。


  言ってはいけないのだと、わかってはいる。わかってはいるが、感情にもう歯止めが効かない。


「ルシファーってあの堕天使のか?神に気に入られながら反乱を起こした上に堕天させられたあのルシファーの紋様か?呪われた力の間違いじゃ無いのか⁉︎」


  言ってしまった.....。

  言い終わった後のなんとも言えない爽快感に似た高揚的な気分と、その何倍もの自己嫌悪の気分。


  あぁ、やってしましまった...。感情をコントロール出来ずに思いのままに行動してしまった。相手の気持ちを踏みにじり、それに快感に似た感情すら感じてしまっている。これじゃ本当の意味で人間じゃ無いな。獣に成り下がってしまったようだった。


  あまりのバツの悪さに俺はしばらくの間俯いていたが、フィーネが何も言い返してこない事が気になり、チラリと顔を上げて様子を伺った。


  そこには誰もいなかった。病室には俺が一人ベットの上にいるだけだった。



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