目的
「やれやれ、やっと落ち着いて話が出来ますね、竜健さん。」
謎の少女はそう言った。
「君は一体誰で、何の用?両親は君を家族として見てるみたいだけど、話をする前にまずはそこから説明してくれる?」
記憶に残る声と姿が目の前にあったが信じられなかった。
「私は.......明日香にしておきましょうか。明日香と申します。」
いや、誤魔化す気ないだろ。
「それで、明日香さんは一体誰?さっきの質問の答えは?」
「明日香で良いですよ。(私が一体誰なのか)という質問には、今説明しても仕方がないので後から答えるとしましょう。その他の質問にまずは答えていきますね」
良かった、答える気はあるらしい。
「まず、何の用かですが、今後の地球の未来に関してお話があります」
「あー....宗教的なやつ?それなら間に合ってますけど....」
「真面目な話です」
「真面目って言われてもなぁ」
「まずはニュースをご覧になってください」
明日香はそういうと、ポケットからスマホを取り出して、TV映像を流し始めた。それは先程親父が言っていた、緊急会見の生中継の様子だった。
『現在、我が国が所有している衛星が、次々失われています!それも攻撃という形でです!そしてそれは信じられない事に他国からの侵略ではなく、宇宙からの攻撃によって失われているのです!』
とても信じられない内容だった。
会見はなおも続く。
『現在、攻撃手段や敵の詳細などは一切が不明です!ただ、純然たる事実として、衛星は攻撃を受けています。敵は地球表層も攻撃の射程圏に入れていると我々は考えています!』
映像の右上に小さく映っていた、日本のスタジオのコメンテーターが失笑しているのが見えた。
『もはや、宇宙戦争は映画や小説の中の話ではありません!現実のものとなっています!繰り返します!これは事実です!今こそ世界が一つになり、手を取り合う必要があります!』
ここで映像は小さくなり、日本のスタジオが逆に大きくなった。
『いやぁ、凄い内容でしたねぇ。大統領は一体どうされたのでしょうか?宇宙戦争といわれても...ねぇ?』
コメンテーターは信じていないようだった。
気がおかしくなった、というようなリアクションをしている。無理もないだろう。
「あなたはこの映像をどう思いますか?」
明日香が急に聞いてきた。
「いや、どうって言われても....。
嘘を言っているようには聞こえない。
ただ内容が突飛すぎて事実とも思えない。」
いきなり感想を聞かれてもスケールが大きすぎて、何の感想も言えない。
「そうですか。では、昼間に見たホワイトはどう考えますか?」
「ホワイト?」
「あなたが見た、白い球体の事です。」
そういえばあの時の声もそんな名前を言っていた。
「明日香はあれを知っているのか?」
「知っているから聞いているんです。あなたに聞かれる前に答えておきましょう。あれは、〔ホワイト〕と呼ばれる敵のスパイの様な物です。中央に多目的デバイスが内蔵されていて、映像を撮ったり、工作活動が出来るようになっています。」
なにがどうなっているのか、さっぱりわからなかった。そもそもなんで明日香は、そんなに詳しく知っているんだろうか?
そして一つの疑問を覚えた。
「あれはどうしてなかった事になっているんだ?」
そういえば、あの出来事に関して誰も何も言わない。それどころかそんな出来事なんて何も起こらなかったかの様な雰囲気だ。
「その答えは簡単です。私が記憶を操作したからです」
明日香はなんて事は無いかのような口振りでそんな事を言った。
「記憶の操作⁉︎いや、あの時それなりに人がいたのに、全員の記憶を操作したのか?いや、そもそもそんな事が出来るのか?」
「出来ますし、実際そうなっているじゃないですか」
「ならなんでお前は覚えているんだ⁈」
「落ち着いてください。私が記憶を操作したのだから、自分が覚えていて当然でしょう?ちなみに、[なぜ両親が私を家族として認めているのか]の質問ですが、あなたの両親の記憶も少し弄らせてもらってます。私を家族として認識しているのはそのためです。」
あぁ、コイツが宇宙人ってオチか....。
人の記憶を弄る?噂のキャトルミューティレーションの一環か?
「そっか、俺は今から拐われるのか。」
思わず呟いた。
「何か勘違いしていませんか?」
「えっ?お前、俺を拐いにきたんだろ?」
「違います。初めに言いませんでしたか?〔世界の未来について話がある〕と」
こんにちは、おつかれ社畜です。
普段は名前の通り、馬車馬も真っ青なレベルで働いてます。
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