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終末の飛来  作者:
第一章:胎動編
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謎の少女

 

 眼が覚めると、見慣れない天井が視界に入ってきた。体を起こすと知らない部屋にいた。

 室内の感じや、薬品の匂いで医務室である事は何となくわかった。保健室と同じ匂いだ。


「そういえば気を失ったんだっけ....」


 ショッピングモールでの事を思い出しながら、どこか他人事のように呟いた。


 あの後、俺は医務室に運ばれたのか。


 そんなことを思っていると、カラカラッと部屋の扉が開いた。


「あっ、お兄ちゃん気がついた?」


 やれやれというような顔で室内に入って来た女の子。年は高校生くらいに見える。

 髪は肩くらいの長さで、目立ちが通った整った顔立ちをしている。


 普通ならこんな子に声をかけられたら嬉しいのだろうが、今回に限って言えば不気味な一言だった。


(お兄ちゃん?)


 俺に妹はいない。

 生まれてずっと一人っ子だ。


「えっと....どちら様でしょうか?」


 いろんな意味でドキドキしながら尋ねる。


「もー、なに言ってんの!

 お父さーん、お母さーん、お兄ちゃん目が覚めたよー!」


 女子高生は笑顔で部屋の外に声をかけていた。


 ちょっと待ってくれ!

 お前は一体誰なんだ!

 一体誰を呼んだんだ!


 状況が掴めず混乱していると、父さんと母さんが部屋に入ってきた。


「バイト先でいきなり倒れたって聞いたけど、何かあったの?」


 母さんが開口一番に聞いてきた。


「よくわからないけど、あんな事があったからじゃないかな?」


 事実、理由なんてわからない。

 思い当たる節があるとしたら、あの白い球体くらいだ。

 ただ、今はそんな事より聞かなければならない事がある。


「そんな事よりこの子誰だよ?」


 そう、さっきから当たり前のようにこの場にいる女子高生。両親もそれが当たり前というような様子だった。


「はぁ?何言ってるの?」


 困惑した表情の両親。


「倒れた時に頭でも打ったのかしら...」


 母さんが不安そうに父さんを見る。


「しばらく入院して検査を受けた方がいいかもしれないな。これからの大学生活に支障が出なければいいんだが....」


 父さんも不安な様子でそんな事を言ってきた。


「入院⁈ここ病院なのかよ!」


 流石に病院とは思わなかった。

 そして唐突に思い出す。


「そういえば、他の倒れてた人は?

 すごい出血だったけど、大丈夫だった?」


 そうだ、俺より深刻そうな人がいたじゃないか!せっかく勇気を出して助けに行ったんだ、その後が気になる。何か知ってるかもしれないと思い、両親に尋ねた。


「.....?何の話?あんたバイト先で書類を見てる最中に急に倒れたらいわよ!店長さんからそう聞いたけど.....。」


 母さんが戸惑うようにそう答える。


「何を言ってるの?あんなに大騒ぎになってたじゃないか!」


「騒ぎといえばそうかもしれないけど、あんたが一人だけ倒れただけだしねぇ...」


 おかしい。

 何故話が噛み合わないのかを考えた。


 しかし当然答えが出るわけもなく、いよいよ親父が精密検査がどうのこうのと言い始めたところで、


「ところで今日、緊急ニュースあるんじゃなかったけ?」


 女子高生が、笑顔で両親に尋ねた。


「あぁ!そうだ、アメリカから世界に向けた緊急記者会見があるんだった!」


 親父が顔をパッと上げながらそう言った。


「......アメリカ? ここ日本だよ? えっ、何?テロか何か?」


 思わず尋ねる。


「今から会見なのに、知るわけないだろ。

 ただ、世界に向けて発信するって事は余程の事だろう」


 親父は真面目そうな表情で答えた。

 そして唐突に、


「よしっ!一旦うちに帰るか。

 ニュースもあるし、竜の着替えとかも用意しなくちゃいけないだろうし。」


 親父が帰宅を宣言した。

 それに対して、


「なら私はもう少しここにいるよ。

 さっきから様子が変だからなんだか心配だし。」


 女子高生がそんな事を言い出した。


 いや、お前は帰れ。ホントに誰だよ。

 妹を自称する時点で怖い。危ない奴だ。


「ならお願いね。なるべく早く帰ってきなさいよ」


「ちょっ...!」


 気がつくと両親は部屋から出ようとしていた。想定外の事態に言葉を失う俺。


 両親を送った後にこちらを向いた自称妹の女子高生は

 笑顔はそのままに、しかしどこか超然たる雰囲気放っていた。


「やれやれ、やっと落ち着いて話が出来ますね、竜健さん。」


 その瞬間に思い出した。

 パニックになりかけた時に聞いた声を。

 気を失う直前に見た姿を。


 その声は今、目の前から聞こえる。

 その姿が今、目の前にある。


 自称妹が、妹で無くなった瞬間だった。








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