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終末の飛来  作者:
第一章:胎動編
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発端

 

  夢を見た。

 そこは荒廃した世界の中で悪魔の様な奴らが人を襲っている。

 何故か俺は襲われず、むしろ俺からは逃げているようにも見えた。

 隣を見ると綺麗な翼を持った天使がそこにいた。

 天使は俺の手を取り空へと舞い上がる。

 背中を見ると、俺の背中にも翼が生えていた。

 空からはいろんなものが見えた。

 自由に飛べるというのは気持ちがいい。

 そんな晴れやかな気持ちを持ちながら俺は戦争へと出かけた。




 〜3月2日、日本にて〜


 俺、後藤竜健はバイトの面接に来ていた。


 大学受験も終わり、四月からは晴れて大学生である。ただ、学費やその他諸々の費用は自分で捻出しなければならなかった。


 第一志望に落ちたという理由で学費は自分持ちになってしまったのだ...。


 仕方がないので、奨学金やバイトで工面するしかなく、地元のショッピングモールに入っているMマークでおなじみのファーストフード店に応募した。


 というのも、シフトの自由がかなり効くからだ。これなら大学の講義に遊びと色々とこなしながらバイトが出来るという夢のような学生生活を送れそうだ!


 面接は特に問題なく流れるように終了し、その後の流れの説明を受けた。

 合格の場合は後日連絡があるとの事。


 つまり、不合格なら連絡なんてしません!

 というスタンスだ。社会とは厳しい...。


 二、三日のうちに連絡があれば合格、無ければ不合格。

 とてもわかりやすいシステムだ。


 特にすることも無かった俺は、ダラダラとした生活に浸っていた。


 待つこと2日、3月4日に連絡は来た。


 契約書類の記入があるので、時間がある時に店に来て欲しいと店長さんが伝えてきた。


 予定もなく堕落しきった生活を送っていた俺は、すぐに行く事にした。


 家を出て、ロードバイクにまたがり店に向かうと、途中でどこからともなく鐘の音が聞こえ始めた。


(この近くに教会なんて無かったよな?)


 そんな事を思いながら進むが、鐘の音は消えるどころか、次第に音も大きくなっているように思えた。


 不思議に思いながらも、店に到着し少し上ずった声で挨拶をすると面接をしてくれた店長が迎えてくれた。


 面接の際にも思ったが、この店長からは良い人オーラが目に見えるほどに出ていて、人の心にスッと入ってくるようだった。こういう人を警戒心を抱かせない人と言うのだろうか。


(なかなか良いところにバイトが決まって良かった!)


 働きもしていないのにそんな風に思いながら契約書類を書いていると、突然近くから爆発音のような音が聞こえた。


 その音は凄まじく、空気の振動がビリビリと肌に伝わってきた。ただ事では無い。それは確信できた。店長さんが店を飛び出して行ったので後を追って現場に向かうと、ショッピングモールの出入り口、自動ドアのところに白い球体が浮いていた。


 出入り口は粉々に砕け、付近にいたであろう人が、血まみれで倒れている。


「なんだこれ.....」


 思わず口から言葉が出ていた。

 人間、本当に焦ると語彙力が無くなるというのは本当だった。なにせ、今の俺が同じ状態なのだから。


(なんだよこれ!あの白いのが原因か⁉︎なんで浮いてんの⁉︎それに倒れてる人の出血がヤバイ!)


 思考が定まらず、パニックに陥りそうになった瞬間、声が聞こえた。


(落ち着いて!ホワイトから目を離さないで!)


 心を落ち着かせる綺麗な声だった。

 おかげで少しは冷静さを取り戻した俺は、恐らくホワイト?であろう白い球体に目をやった。


 白い球体は相変わらず動く事なく浮いている。なんだか眼球みたいで気味が悪い。


 球の中心にに線があり、さらに線の中心にカメラのような、何となく目のような円がある。子供の頃遊んだゲームの、◯ンスターボールみたいな形をしていた。


 倒れている人を助けに行かないといけないとは思うのだが、球体が不気味な雰囲気を出しているため動くに動けない。


 やがて意を決して助けに動いた。


 もしかしたら何も無いかもしれない。

 何も起きないで欲しいと、馬鹿げた願いをしながら倒れている人の元へ駆け寄った。


 結果からいうと、やはりそれは馬鹿な願いだった。


 もう少しで、辿り着くところで球体の目がこちらの向きに動いた。


(ヤバイ!頼む勘弁してくれ!お前もう、どっか行けよ!)


 心の中でそう願った瞬間、不思議な事が起きた。


 球体が崩壊したのだ。


 それは、一瞬で長い時を過ごして風化したかのような、言葉では言い表せない崩れ方。


 その場の人も状況が掴めず、戸惑う事しか出来ない。当然俺も同じだ。


 ひとまず倒れた人を何とかしないと思った瞬間、突然意識が遠のいた。


 不思議な事にそのボヤけた視界の中で俺は天使を見た。

 その天使は美しく、嬉しくも悲しいというような何ともいえない表情をしていた。


 天使...俺は死ぬのかな....


 消えゆく意識の中で死への恐怖を感じつつ、

 俺は気を失った。






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