プロローグ
はじめまして、おつかれ社畜です。
初めての投稿になりますので、稚拙な文章であることをお許しください。
2020年3月4日、世界に突然鐘の音が鳴り響いた。どこからともなく流れ始めたそれは、神秘的な、それでいてどこか恐ろしくも感じるような音色だった。
〜アメリカ国防総省ペンタゴン内にて〜
「ハミルトン大佐、NASAより緊急通信です!」
レビン管制官が慌てた様子で伝えてきた。
先日配属されたばかりのこの新人は、落ち着くべきところで慌てふためき、慌てるところで冷静になるという、なんとも変わっていると評判の人物である。
そんな彼女の言葉だからこそ、
「ハハッ!なら、そんなに緊急ではないな!笑
そんなことよりさっきからなっている、
この鐘の音は一体なんだ?」
なんて冗談で返してみたものの、彼女の目はいつもと違って非常に真面目なものであった。とは言ってもいつもが不真面目と言うわけでもないのだが。
「鐘の音に関しては私が聞きたいくらいですよ!
うるさいし気が散って仕方ありません!緊急かどうかは、ご自身で判断されてみていかがですか!」
彼女は生意気にもそんな口調で反論し、レシーバーをこちらに渡してきた。
「こちらアメリカ国防総省ペンタゴン、ハミルトン大佐です。緊急との事ですがどうされましたか?」
レビン管制官よりレシーバーを渡され、どんな緊急事態かと考えを巡らせながら応答した。
「こちらNASA衛星通信システム部所属の高城です」
相手の声色は非常に切迫したものであった。
また、高城と言う名前から日本人であることがわかるが、日本人は冗談で緊急と言う言葉を使う人種でないことはわかっている。
ましてや他の機関に冗談で連絡するはずもない。
その高城は言葉を続ける。
「実はつい先程から、NASAが所有している人工衛星の大半からの信号がロストしています。」
「何かシステム上の不具合でしょうか?
もしくは故障等が考えられませんか?」
大半からの信号がロストしていると言う時点でその可能性はないだろうと思いつつ、希望的観測の言葉を口にしていた。
「一斉に壊れると言う事は、通常考えられることではありません。事態は一刻を争います!」
当然それはあえなく否定された。
「それはつまり他の国からの攻撃と言うことでしょうか。」
ありえないとは思いつつも他の可能性も考えられず、確認してみる。
しかし高城の返答は、ありえないことのさらに上を行く予想外の答えであった。
「おそらく攻撃ではあります。しかし他の国からではありません、他の何かからの攻撃です。」
今なんて言った?
おそらく?他の何か?テロか何かか?
いったい何の話をしているんだ?
「失礼ですが要領を得られないのですが、一体どういうことなのでしょうか?」
たまらず聞き返した。
「信号をロストしたときの反応は、破壊されたときの反応に酷似しています。ただ不可解な点があり、地球側からの攻撃ではなく、宇宙側からの攻撃と言う点です。」
ますます意味がわからない。
そもそも攻撃された方向がわかるものなのだろうか?疑問をぶつけてみた。
「衛星というものは非常にデリケートな機器であり、緻密にコントロールされています。なので異常があったり破損した場合には、その詳細がわかるようになっています。
今回の件は、宇宙側から地球側に向かって損傷が広がっています。通常であればこのような破損はあり得ません。」
オペレータールームで会話を聞いていた一同も、皆一様に困惑の表情を浮かべていた。
それもそうだろう。この話が事実なら宇宙からの攻撃と言うことになる。
「と言う事は、宇宙戦争の勃発ですね。」
などと軽口を叩きながらも、いつの間にか大粒の汗が頬を伝っていた。
そしてさらに悪い事に気がつく。
「その話が事実なら、敵は地球の衛星を攻撃できる距離まで近づいているということですか?」
冗談ではない!それでは地球をいつでも攻撃できるということに他ならないではないか!
想像を超える異常事態にパニックに陥りそうになる。
「現在、合衆国内のあらゆる天体観測施設に依頼し、何か異常なものがないかを探しています。」
高城は続けた。
「当然、ペンタゴン以外にもCIAや各省庁にすでに連絡をとっています。後ほど、大統領より緊急会見が行われると思います。」
「まだ詳しい事は何もわからない状況ですので、現状把握していることの緊急連絡でした。緊急であればこそ、情報共有は必須であり、人類いや、地球最大の有事に備えなくてはいけません。」
「また何か分かり次第連絡をします。
なのでそちらのほうも何か分かりましたら情報共有をよろしくお願いします。」
聞きたい事なら山程あるが、現状では情報はほとんどないと言っていいだろう。
「分りました。迅速な連絡に感謝します。
こちらでも早速対応を開始します。
とは言っても何から始めていいかわかりませんが、何か情報を入手しましたらすぐにでも連絡します。」
高城は「お願いします。」とだけ言い残して通信を切った。
どうしたものか。何も考えられない。
映画などでは突然地球を襲ってくるのが定番で、瞬時にパニックになるのかお決まりだ。
しかし、いざ前もって情報があったとしても、一体何ができるというのだろう?
敵の情報も戦力もなにもわからない状態で、
対応しようにも出来ることがない。
首元にナイフを突きつけられているような感覚。
相変わらず鐘の音は鳴り響き、遥か頭上の宇宙には謎の敵。
自分の置かれている状況がカオス過ぎて、笑いすら出てくる。
しかし、いつまでも悩んでもいられない。
「全員聞いての通りだ!全くもって謎だらけではあるが、我々は行動しなくてはならない!各自、情報の収集と非常事態に備えろ!ホワイトハウスと軍部にも連絡をとれ!今から忙しくなるが、気張っていくぞ!」
その場の全員、そして自分に喝を入れ非常事態に備える。この先なにがあるかはわからないがやれる事をやるだけだ、と自分に言い聞かせながら、レシーバーをとる。
そして胸元で十字を刻み、縋るような思いで祈る。
「神よ、我々を救いたまえ」