1章の1-5
「まぁそちらの開発陣の中にコネを持っている人がいる、とだけ申し上げましょうか」
「開発陣にコネだ?」
トスインが言うことが本当ならば、この異世界のことを知っている人間がアレを開発したことになる。リュウイチはこうして実際に転生してきたからまだ何とか理解はできるが、多くの人にとっては自分たちが暮らす世界とは違う世界が本当にあったとは思いもしないだろう。
「そんなことより、今はこっちの世界でどう生きていくか、って事の方が大事なんじゃないですかねぇ?」
(誰のせいだと……)
知った顔で言うトスインに苛つきながら彼の言うことにも一理あると考えた。
しかし、考えたは良いが右も左も分からない世界でどう生きていくか、すぐに答えが出る問題ではない。すぐにそのことに思い至りリュウイチは頭を抱えるのだたった。
「うんうん、まぁそういう反応になりますよねぇ。ではここで僭越ながら私からのアドバイスをば」
「アドバイスぅ?」
「ええ。リュウイチさん、あなたは前の世界ではかなり知られた格闘ゲームプレイヤーでした。この世界ではその経験を活かすことが可能なのです」
「経験を、活かす?」
「そうです。具体的にはこの近くにある国で戦闘者登録をしましょう。そして普段は冒険者などをやりつつ定期的に開かれる格闘大会に参加してその賞金を稼いで暮らすのです」
イイ話でしょ?とばかりにトスインは笑顔を浮かべていた。