1章の1-4
「まず、あなた方の世界でのゲームセンターに置かれていた『バトルマスターワールドオンライン』は私達がこの世界へ適正者を呼び込むための端末の役割をしていました。具体的にはゲームが強い人はこちらでの適性も高いからです」
そこまで言ってトスインは一息置いた。
「ただ、適正者を無理矢理にこちらに召喚するのは後々トラブルになる可能性がありました。そこでゲーム開始前に『もしうっかり死んでしまったらこちらの世界への転生に応じる』という事前承諾を取ることにしたのです」
「ちょっと待て? そんな契約どこにも書かれてなかったろうが?」
リュウイチが言った文句に対してストインはあっさりと、
「ああそれですか。コイン入れてスタートボタン押した後に出てきたでしょ?」
「あんなどこの国の文字かも分からんもん読めるか!!」
「まぁそういう事で、晴れてアナタは不幸な事故により他界。そしてゲームのデータを元にこちらの世界で適応できる体へと生まれ変わった、というわけです」
「……ていうか一つ疑問なんだが」
ここまでの説明でハイそうですかと納得はできないものの、ふと思いついた疑問をリュウイチはそのままぶつけてみた。
「そもそも、何でこっちの世界、特に日本のゲーム事情に詳しいんだそっちは? 死亡したら転生って、今の日本でゲームセンターの対戦ゲームが重罪になってるのを知っておかないと設定できない項目なんじゃないか?」
対戦ゲームは人間の闘争心を無駄に煽る、などとどこかの政治家がのたまったせいで今の日本では対戦ゲームをプレイすることはある意味殺人よりも重い罪となっている。それでも文字通り地下に潜ってゲームを続けていたプレイヤーも存在していた。とりわけこの「BMWO」はどういう仕組みを使っていたのか廃れかけていたネットワーク対戦もできるとのことでこの噂を聞きつけて復帰したプレイヤーも多いとリュウイチは聞いていた。そしてそんなゲームが広がれば当然当局の締め付けも強くなる。リュウイチが聞いていた限りでも何名かの著名なプレイヤーが当局に拘束、拷問を受けた末に死亡、という噂が出ていた位である。
「さて、その辺りは一応企業秘密ということで」
そう言ってストインは意地悪く笑うのであった。