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出会いは銃弾と共に  作者: 御奉行様
1/3

いつもの日常、いつもの虐殺 華鳳院狂夜

初めまして、文芸部に所属しているお奉行様と申します。

多忙の為あまり早いペースでの投稿は出来ませんが、頑張って行きたいと思っています

それはいつもの日常、いつもの自室の午後十一時の話。

今日も銃弾が窓の外から飛んできた。

 常人では避けられないそれを私はすんでの所で躱す。

「何者だ君は。突然撃ってくるなんて卑怯じゃないか」

 私は銃弾が飛んできた方に声をかけてみた。

 しかし返事は無い。

 私は右ポケットから愛用のリボルバー、コルト・パイソンを茂みに撃つ。

 すると「ぐはぁ」とうめき声と共に茂みに血が飛び散った。

さっき奇襲を仕掛けてきた者だろう。

 彼は私を暗殺しようとしていたのだ。

 もうこれで六十八人目だ。

 事の発端は東京で勢力を伸ばしつつあったロシアンマフィアを壊滅させたのが原因だろう。

 きっかけはマフィアを襲撃したら凄いスリルを得られるという安直な考えからだった。

 私、華鳳院狂夜かほういんきょうや殺戮(ボリア)愛好(フィリア)というろくでなしの趣向を持っている。

 簡単に言えば、殺すか殺されるかの瀬戸際の中に居る時に最高の快感を得られるという趣向で、傭兵辺りに向いていそうな趣向だ。

 いつもスリルに飢えていて満たされる事はあまりなく、だいたいどこかに襲撃を仕掛ける事で欲求を抑えている。

 こんな趣向を持っている私は華鳳院家という日本でも有数の名家に生まれてしまったせいで、欲求は溜まる一方だ。

 しかも私の母は私の事を華鳳院の家長にしようとしているらしい。

 なぜなら華鳳院家には家の代表を決めるシステムがあり、本筋を繋げなければいけない。

 これは家の代表を決め、一族をまとめるという名家ならどこにでもあるものだが、他の家と違うのは長男だけでは無く、次男や長女がなる事が普通にある点である。

 これは華鳳院という一族のルーツが関係しているのだ。

 華鳳院という家自体は大名家から連なる分家筋だったが、初代家長華()鳳院(ほういん)正子(まさこ)は大政奉還後に新政府の重役として活躍していた()鳳院(ほういん)(なぎ)(まさ)に婚姻と恒久的な政界での成功と引き換えに、彼にある盟約をもちかけた。

それは子孫の誰もが狂人として生まれるという事。

 凪正は出世欲の強い男だったので、自分が実権を握れるならと、正子の話に喜んで承諾。

 正子は西洋の呪術に長けていたらしく、禁忌を破って自分と凪正に呪いを掛けたのだ。

 時代の流れに抗えずに衰退していく華鳳院を生きながらえさせ、発展させるには禁忌に手を染めるしかなかった。

 そしてその時の呪いという物が本当にあるかは分からないが、それから私含めて華鳳院の一族は必ず常人には理解できない性癖や趣向を持つようになった。

 そのせいで、華鳳院の血は広がりにくくなってしまう。

 それ故に、我が一族は分家がいない。

 そもそも子どもが出来る趣向を持っていない人間が華鳳院には多すぎるのだ。

 現家長の母、華鳳院華代は財産(ティモ)性愛(フィリア)という性癖を持っている。

 これは財産や社会的地位に性的興奮するという物で、母自身衆議院の議長を務め、その地位を維持する事で欲求を満たし続けた。

 それでも家の中では父とも仲良しで、良き母だと私は思う。

 母は四兄弟の次女で、兄弟の一番下だ。

 それでも家長になったのは他の兄弟が異常すぎて子どもを成せないからである。

 一番上の兄、晴雄叔父様は罪科(ベックアティ)愛好(フィリア)というもので、罪を罰せられる事で興奮する趣向のせいで、現在も自主的に監獄にいる。

 二番目の弟、幸則叔父様は靴で踏まれ愛好(アルトカルシフィリア)というもので、靴に踏まれる事で興奮する趣向で、踏まれるだけで絶頂に至ってしまう為、妻は居るが、子どもには恵まれていないらしい。

 三番目の姉、翠叔母様は塩気(ソルティ)愛好(フィリア)というもので、塩に性欲が刺激されるというもので、欲求を満たす為に離島を購入し、毎日海水に浸っているらしい。

 ……こうして見ると私の母はまだまともな方なのだと改めて思う。

 私の兄弟だって母乳のみに興奮する母乳(ラクタ)愛好(フィリア)の上の兄や、病気を愛し二年前に天に召されていった病気(ノソ)性愛(フィリア)の下の兄と比べると私は比較的ましな方なのかもしれない。

しかし私だって刹那の殺気でたまらなく興奮する、どうしようもない変態なのだ。

学生時代には勢力を急激に伸ばしていた中国系マフィアと、東京を根城にしている葉隠組に、麻薬の巨大カルテルも潰し、現在でも裏社会で懸賞金を掛けられている私が華鳳院の家長になんて勤まるのだろうか?

母曰く、「まともに思考する事が出来るのは狂夜だけなのです。貴方が跡継ぎにならなければ確実に華鳳院家は滅びます」との事だ。

華鳳院家は立派な名前とか裏腹に実態は人格破綻者の集まりである。

そもそも家長になる条件が『人間に恋愛感情を持ち、子どもを授かる事が出来るという事』である。

外の顔は皆輝かしい経歴があるお陰で何とか体制は崩れていないが、それもいずれ保てなくなると私は思う。

恐らく私の代で、だ。

だいたい私の妻になる人なんて果たしているのだろうか?

恐らく子どもが生まれる前に妻を殺してしまうだろう。

もう、こんな家滅んでしまえばいいのだ。

そんな事を思い、頭を抱えていると、自分に殺気が向けられている事に気付いた。

距離はだいたい百メートルほどだろうか?

相手は中距離から狙撃するつもりのようだ。

私は咄嗟に机の中に隠れる。

それと同時にライフルの弾は私の先ほど居た場所のちょうど頭のあった一を通過し、壁を貫通した。

発砲音が無いという事はサイレンサーを付けていたのだろう。

また暗殺者か、と私は呆れてしまった。

マフィアの残党にしては随分としつこい。

アジトをボスもろともRPG7で吹き飛ばした事が逆鱗に触れたのはまだ理解出来るが、それにしても暗殺者が多すぎる。

構成員は確か五百人ほどだったと記憶している。

その中でも最低七十人いるなんて多すぎるのだ。

他の組織から雇った線もあるが、武器庫を手榴弾で吹き飛ばし、金庫も回収したから傭兵なんてそんな雇えないはず。

……考えてもしょうがない、降りかかる火の粉は払うのみ。

今は僅かな興奮を味わおう。

私はクローゼットからFR-F2というスナイパーライフルを持ち出して、さっき弾が飛んできた方向に構えてレンズ越しに獲物を見つけようとしたが……

相手はすでにそこに居なかった。

そしてなぜかライフルが置いたまま、放置されている。

殺気は確かに感じるのに、姿が見えない。

今までに無いタイプだ。

相手はどんな奇策で私を殺そうとするのだろうか?

どこからどんな方法で? 武器は? 殺すとしたら距離はどれくらいか? 狙うとしたら心臓? 首? 脳? 腹部? 

相手が私を殺すのを想像するだけで興奮してくる。

死線の中こそ私の生きる世界であり、絶頂へ至る道だ。

殺されるか殺すか。

生き残るか屍をさらすか。

どちらがそうなるかは分からない。

一分も経たない内に私は死んでいるかもしれないのだ。

この瞬間、私はもっとも輝いていると言えよう。

コルトパイソンを構え、窓の下に隠れる。

耳を澄まして相手の足音が聞こえるか探ってみるが、銃声も人が歩く音も聞こえない。

代わりに聞こえてきたのは……何かが引っ掛かる音とワイヤーを伝う何か。

きっと相手はワイヤーを伝って強襲を仕掛けてようと考えているのだろう。

私は窓の下から見える限りの範囲でワイヤーの引っ掛かっている所を探す。

考えていた通り、返しの付いた杭が窓の外側に引っかかっていて、ワイヤーが重みで揺れていた。

 ワイヤーで強襲するなんて今までに無い斬新な手だが、こちらに向かう時は格好の的になる。

 その為に撃ってからすぐ隠れて姿をくらまし、こちらが警戒して隠れた所を強襲する予定だったのだろう。

 大胆で無駄がないと思うが、種が分かればそれまでだ。

 コルトパイソンをワイヤーの先に向け、獲物を待つ。

 しかし私はふと思う。

 こんな簡単な手を私が予想できないと向こうは本気で思っているのか、と。

 今命を狙っているであろうロシアンマフィアの残党たちだって、私がただ破壊活動を行っていた訳では無いという事は知っているはずだ。

 私が毎日のように襲撃されながらも生きているのは、暗殺者特有の殺意を感じ取る事が出来るからだ。

 そのお陰で弾を見切れなくても避ける事が出来るし、屍が次々と生まれる死線の中でも生き残っている。

 そんな私を殺すのにワイヤーで強襲するなんて浅はか過ぎではないか?

 そして何より、殺意は確かに近づいているのだが、何かが違うと直感が訴える!

 殺意の矛先も体の部位では無い、私の全身だ!

 私はリスクを承知で、部屋のドアに向かって走る。

 なぜか弾は飛んでこない。

 ワイヤーで来るものは果たして人間なのだろうか?

 窓にゴツンと何かが当たった音がしたので振り向く。

 そしてこちらに辿りついたのは……人形?

 殺意の方向は人形の方だ。しかし、その四百メートルぐらい後ろにある。

 そいつは我が家の塀の向こうに身を潜めているのだ。

 という事は、人形はダミー。でも本当にそれだけか?

 ドアを開け、部屋を出ようとした瞬間、銃弾が私の心臓を狙って飛んで来る事を察知し、

 その場で屈み、なんとかそのまま転がって部屋の外に出る。

 次の瞬間、銃弾は私では無く人形の腹部を貫通し、人形は爆発した!

 きっと人形の中には火薬がぎっしり詰められていたのだろう。

 私の部屋は一瞬にして爆風に包まれ、私も巻き込まれてしまった。

 なんとか死ななかったものの、右腕が動かず、体のあらゆる所から血が噴き出し、視界もはっきりしない。

「対象生死不明。死亡が確認でき次第帰還する」

 煙の中で流暢なロシア語が聞こえる。声からして若い女性のようだ。

 体制を立て直し、動ける左手で胸ポケットにある投げナイフを構えて相手の出方を窺う。

 こちらが生きている事に気付いたのか、相手はすかさず弾を撃ってきた。

 壁際に隠れてそれを躱すと、煙の中から私をここまで追いやった相手が姿を現す。

 それは金というより銀に近い銀髪のショートヘアと薄い白の混じった、碧眼が印象的な美女だった。

 年齢は二十歳ぐらいだろうか、女は無表情で警戒するこちらの方に目を向ける。

「君が本日三人目の襲撃者様かい? 歓迎するよ!」

 私は女にロシア語でそう問いかけてみる。

「対象生存確認。速やかに殺害し、帰還します」

 どうやら耳に付けているインカムで仲間と話しをしている所らしい。

 相手側の認識だと、どうやら今の私はすでに皿の上の鯛という事らしい。

 私の生存を確認すると、すぐさまハンドガンを右手に構え、躊躇なく至近距離で撃つ。

 それを右に左にとなんとか躱しながら後退し、距離を取ろうとするが、何発か掠ってしまい少しだけ肉が抉れた。

「なんなのだお前は! 何故至近距離の銃弾を避けられる!」

「私は他の人より少し反射神経がいいだけさ。それよりもあと数センチでもずれたら即死だなんてなんというスリルだ! ここまで私を追い詰めるなんて君が初めてだよ!」

いままで追い詰めた末に近距離での銃撃戦はあった。

 しかし、私の方が追い詰められるなんて初めてだ。

 私はそう言って女の心臓目掛けてナイフを投げる。

 それに対して女はなんと、至近距離で投げられたナイフをハンドガンの側面で弾く……否、流した!

 心臓に刺さるはずのナイフは右手のハンドガンを当てる事で、軌道がずれたのだ。

 信じられない! 女は暴発のリスクを顧みずに、まるで分かりきっていたとばかりに弾いたのだ。

「君も中々人間離れしてるじゃないか! 躱すんじゃなくて受け流すなんてまともじゃないよ」

「お前にだけはまともじゃないと言われたくはない」

 そう言って、容赦無く三発発砲した。

 それもすんでの所で躱すと、私も二本目の投擲用ナイフを投げる。

 今度は右足を狙ってみたが、難なく躱された。

「ああ、君は最高だよ! 今まで会った中でも最も強いと認めよう。いい、実にいい! もっと殺しに来てくれ!」

 私が笑いながら話しかけると女も笑い返し、腰に手を掛ける。

 無機質で固い性格かと思っていたが、案外そうでもないらしい

「……言われなくてもそうするさ。だから死ね、変態」

 女は腰に付いてた手榴弾のピンを抜き、至近距離でこちらに投げた。

 こんな距離で投げられたら女もろとも吹き飛んでしまう!

 こんな襲撃をする時点で女は生きて帰るつもりも無いのだろう。

 死にそうなシチュエーションは最高に興奮するが、死んでしまってはスリルを探求できなくなってしまう。

 私は瞬時に窓をぶっ壊して爆発を回避する事にした。

 ここは華鳳院家の屋敷には口の字になっていて、中庭がある。

 そこに飛び込めば死なずに済む……!

 私は全力でガラス張り窓に体当たりをした。

 身長百八十センチ、体重八十キロの筋肉質の男が重心を乗せて全力でぶつかり、ガラス窓は粉々に砕け散る。

 きっと母から後でぐちぐちとお説教してくる事だろう。

 ……生きていればの話だが。

 中庭の花壇に飛び込んだ瞬間私の元居た場所は爆風に包まれ、私も吹き飛ばされてしまう。

 なんとか柔らかい花壇に落ちた事で死なずには済んだが、体中のあらゆるところの骨が折れていて身動きが取れない。

この状態で襲撃されたら間違いなく殺されるだろう。

 あの女は爆風で吹っ飛んで死んだのだろうか。無機質ながらも端正な美人だった。

 どんな美人でも、爆風で吹っ飛べば焦げた骸でしかない。

 死線を楽しむ私にとってはあんな女の方が嫁にもらうにはいいのかも知れないと思えた。

 現状、私は奇襲された訳だし、狭い空間で手榴弾を投げられては逃げるしかないが、出来る事なら捕縛して色々聞きたいくらいには惜しい。

 ほんの数分だったが、私は初めて私を殺せそうな女性に出会えた。

 これは運命だったのかもしれない。しかし死んだら元も子も無いのだ……

 私の一族ならもしかすると死体(ネクロ)愛好(フィリア)が居たのかも知れないが、そんなやつでさえ、焼死体は受け付けないだろう。

 花壇で動けなくなってからちょっと時間が経つとメイド達を連れた母がやってきた。

「また襲撃されたのですか?」

 母は呆れた表情で動けなくなった私を見下ろす。

 襲撃で家に損傷が出たのは一度や二度だけじゃない。

「はい。私の部屋が吹き飛びました」

「そうですか……貴方も華鳳院の一族である以上、理解の範疇を超えた凶行には目を瞑りましょう。しかし、貴方が死んだら華鳳院は終わりです。それを努々忘れない様に」

 母は怒りもせず、ただ淡々と私に告げ、書斎に行ってしまった。

 『華鳳院の家長の自覚を持てと』と。

 こんな事になってもまだ私は家長にならなければいけないらしい。

 我が一族は代々政治家を排出し、政界に大きな影響力を持つが、それも血が途絶えれば終わりだし、財産(ティモ)性愛(フィリア)の母にとって権力の保持が危うくなるのが許せないのだろう。

 次期家長にならなければいけないと言われても、私が好きになりそうだった人は今爆風で死んでしまったのだ。

 ああ、心のから惜しいと感じる。

 私にあれほど強烈な殺意を向けたのはあの女が初めてはじめてだった。

 あれはきっと私と同じ、死線の中でしか生きられない人間。

私がしばらく悲しみに暮れていると、焼け跡の捜査を頼んだ執事の一人が報告を寄越してきた。

「狂夜様、報告です。狂夜様のお部屋の焼け跡を捜査した所、襲撃犯とみられる遺体は発見されませんでした」

「何? あの女は爆風の中で生きていたというのか?」

「焦げカスが狂夜様のお部屋の方から続いている事が分かりました。もしかしたら生きているかも知れません。報告によると『不死身の《イモータリー》シルヴィア』かと思われます」

「本当か……! それでその『不死身のシルヴィア』とはどんな女なんだ?」

私は心の底から歓喜した。

あの女が生きているかもしれない。

それは私にとってもはや天啓だった。

溢れる想いが今にも爆発しそうなほどに大きくなっていく!

また殺し合う事が出来るのだ! 

「はい、『不死身のシルヴィア』は生まれはロシアと推測されていますが、詳しい出自は判明しておらず、判明しているのはシルヴィア=スローキンという名前と、二十代ぐらいと言うことぐらいしか分かっていない謎が多い傭兵です。ミャンマーの民族対立に参加して以降頭角を現し、どんな戦場でも生き残るという所からその道の者は『不死身のシルヴィア』と呼ばれています。ここ数年は暗殺を主としているとのだそうです」

「不死身と呼ばれる女か。楽しめそうじゃないか」

女は今まであまり殺した事は無い。

いままで殺してしまったとすれば麻薬カルテルの集会所の大麻を全て焼却する為にRPGで吹き飛ばした時ぐらいだろうか。

そこは麻薬中毒者が集まっていた為、殺す気は無かったが結果的に巻き込まれてしまったのだ。

後は私に色仕掛けで誘惑してから隙を付いて殺そうとした暗殺者達ぐらいだろうか?

彼女らはだいたい軽装な上、反撃には慣れてないらしく簡単に殺せてしまった。

どちらかというと殺した後の後始末の方が苦労したと記憶している。

私が火器で吹っ飛ばさずに、刃物などで解体出来る状態で人を殺した場合、執事の一人のハイヤーの運転手の羽虎が個人的に関わりのある闇医者や、母と同じ党に所属している議員の傘下の病院に提供し、私財にしたりメイドや執事達の給料として提供しているのだ。

こんな私でも罪の無い一般人を殺める事だけはしないと誓っている。

これを踏み越えてしまったら私は只の快楽殺人者と変わらない。

私が殺すのは裏社会の住人や犯罪者の中でも私をスリルをくれる人間だけであり、殺すこと自体が好きな訳では無いのだ。

それでも、あの女はスリルとも違う、興奮とときめきを覚えた。

あの女ともっと死線の中で語り合いたい。

ああ、これが恋なのだ。

「狂夜様、襲撃犯は執事達が追っております。処遇はいかがされますか?」

我が華鳳院の中でも私に付き従う者達は皆武闘派の者ばかりで、退役軍人や襲撃した組織の中から骨のある奴らをスカウトしている。

主な活動として、よく母の周りをSPやロイヤルガードのごとく警護してたり、私が大きな組織を襲撃する際にはよく武器の調達や後方支援など、華鳳院に関わる戦闘行為全般を担っているのだ。

「殺せ、襲撃者は一人として生かすな。襲撃班を使い、華鳳院の人間を殺そうとした報いを与えるのだ!」

「はっ! 仰せのままに」

連絡に来た執事に殺害を命令すると、インカムに執事の中の襲撃班に命令を通達した。

執事襲撃班とは、武闘派執事の中でも暗殺や追撃、爆破工作など殺すことに特化した危険な連中だ。

こちらは華鳳院と独占契約をしている傭兵達で、伝家の宝刀扱いとなっている。

日本国内では派手な動きが出来ない為、よく国外に派遣しているが、今回のようにその力を行使したことは今回含めて三回しかない。

一回目は母の政敵が暴力団と組み、巨大な賭博場を開いて莫大な利益を上げていた所を襲撃班を使って壊滅させた。

二回目は最近襲撃して来ている暗殺者の大本だったロシアンマフィアを潰す時に私と共に襲撃し、構成員の九割を虐殺した。

そして今回の三回目。

もし、あの女がただの襲撃者だったら、襲撃班に蜂の巣にされて終わりだろう。

それがもし生きていたらその時は私自ら赴こう。

連絡役の執事が去り、私は急速に整えられた代わりの部屋のベッドに寝ころがって一人思う。

“私が殺しに行くまではどうか生きていてくれ”と。


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