1.転移
俺は来栖裕也、普通の高校3年生…とは言えない。
異世界で魔王してましたなんて奴が普通の高校生な訳ないしなぁ。まあ元なんだけどね。俺が魔王だったのは3年前の話だ。
アトラスレイジという名の世界で俺は魔王をしていた。
そこでは魔族と人間が遥か昔から戦争状態だった。しかし俺は思ったのだ。何故争いをする必要があるのかと。
魔族側も人間側も戦争するメリット等何も無い。せいぜいが領地が増えることぐらいだ。しかしその領地もお互いに余っている。
そこで戦争をやめて共存することを提案した。最初こそ渋った魔族や人間もいたものの1年経つ頃にはほとんどが驚くほどに仲良くなっていった。
そしてその時に俺は魔王をやめてこの世界にある日本で高校生として暮らすことにしたのだった。
そんなある日の昼休みである。それは俺達が4限目に自習をしている時に起こった。足元に展開される魔法陣。転移魔法陣だろう。送り先はアトラスレイジ___異世界だ。解除しようとしたが解析までしか間に合わなかった。
視界が暗転し刹那、明るい室内に転移する。
「「…!?」」
皆が余りの驚きに声を出せない中、最初に口を開いたのはこの国の王女、アクアだった。
「皆様、突然の呼び出しをして申し訳ありません。これより理由を説明させていただきます。申し遅れました私、この国で王女であります アクア と申します。よろしくお願いします。では…」
その内容はこうだ。
人間と魔族は平和状態であるのだが一部の人間と魔族が禁忌の生体改造を施し強大すぎる存在になってしまった。そしてその生体改造を施した者のみで新たな国を作ってしまったのである。
そこで俺達に、その国のトップを討って欲しいという内容だった。
もちろん嫌であれば断っても構わないとのことだ。その場合は記憶を無くした上で日本に返してくれるらしい。俺としてはこの世界を元の状態に戻すまで帰る気はないが。
更に協力するメリットが2つあるようだ。
1つめは成功すれば財宝を渡してくれること。
2つめは協力してくれるのであれば異世界人にのみ与えることが出来る神の加護を受けさせてくれるとのこと。
尚この加護は日本に戻れば使えないらしい。なんでも異世界から来た人しか受けることが出来ず、この世界でしか発揮出来ないものだそうだ。
もちろん協力した場合でも途中で帰ることは可能なのだそう。成功した場合は記憶を残して貰えるのだとか。
王女は続ける。
「この内容をきいて協力して下さる方は前へ出て名乗って頂けますか。」
さて、何人出るのか。