桃太郎
若い女は、戸の向こう側の人間に話しかけた。
「あのー。いますよね?
もし戸を開けるのが嫌なら、
このまま話を聞いてください。
私はずっと祖母とは、
孫に会いたいものだと思っていました。
だから私が始めてここに来た日、
追い返されたことにとても驚きました。
なんの予告もなく突然やってきた事で
貴方を不快にさせたのだと思ったので、
以後 私が来る日を隣人から
貴方に伝えてもらうように頼んでいます。
伝言 聞いていますよね。
貴方はいつも私が来る時間に、
戸の向こう側にいるんじゃないですか?
私には貴方の行動が理解できません。
会いたくないのなら、
なぜ留守にしないのですか。
会いたいのなら、
なぜ戸を開けてくれないのですか。
なぜ返事をしてくれないのですか。
私には、わかりません。
考えれば考える程わからないのです。
私に怯えているようさえ感じます。
私は、怖い人間ですか。」
若い女が続けようとすると、
戸の向こう側から老女の声がした。
「私は貴方のことを鬼だと思っています。」
「なぜですか?」
「私の勝手です。私の勝手でどうして貴方が鬼になるのかという話をすると、日が暮れてしまうのでお帰りなさい。」
「かまいません。話を聞かせてください。
話が聞けるまで私は、ここを離れません。」